http://www.asyura2.com/13/senkyo150/msg/841.html
Tweet |
青森選挙区の生活の党候補の選対本部長に就任し、気勢を上げる小沢一郎代表(中央)=青森市で2013年6月16日、伊藤奈々恵撮影
特集ワイド:正念場でしょ!・2013参院選/1 生活の党・小沢一郎代表 「背水の陣」青森で陣頭指揮
http://mainichi.jp/feature/news/20130708dde012010013000c.html
毎日新聞 2013年07月08日 東京夕刊
◇生活の党・小沢一郎代表(71)
◇「王国」岩手は旧支持勢力が3分裂 「日本改造計画」続編を執筆中 「虚像」に振り回される悲劇
「しばらくぶりに雪景色を見た。僕の最初の選挙の最終日は吹雪の中だった」。生活の党の小沢一郎代表(71)は今年2月、豪雪の青森から参院選に向けた全国行脚を開始した。その時の記者会見で、急死した父佐重喜(さえき)の岩手県の地盤を引き継いで政治の世界に踏み出した43年前の記憶を感慨深げにたどった。民主党から離党、国民の生活が第一を結党、日本未来の党への合流、そして衆院選での惨敗……目まぐるしい変転の末に残った生活の党は衆参国会議員15人の小所帯だ。冬景色に厳しい前途がよぎったのか。
現職8人のうち6人が改選される今回の参院選。選挙区に5人、比例代表に6人の公認候補を立てたが、小沢自身が選対本部長として陣頭指揮をとる唯一の選挙区が青森(改選数1)。政党トップが個別候補の選対本部長を兼務するのは、永田町の常識に照らして異例の対応だ。先月16日に就任した際、小沢は「1人区は圧倒的に自民党が強いかもしれないが、岩手と青森だけは何としても将来につなげたい」と語っている。
なぜ青森重視なのか。答えを知りたくて現地に入った。6月も末だというのに青森市の朝夕は肌寒く、東京とは異なる「風」が吹く。生活の党の男性候補者は「青森県特有の事情がある。県選出の衆参国会議員6人のうち自民党以外は私1人。落選して自民党の議席独占を許せば、他党の支持者の声が全く国会に届かなくなり、地方切り捨て政策が加速する」と明かした。
自民党と一対一の対決構図に持ち込むには非自民の統一候補を決めねばならない。青森は農業県。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)反対を訴える候補として生活の党、共産党、そして新人の前県農協中央会会長(以下、前会長)の3人がいた。小沢は精力的に動く。4月ごろから個々の事務所や農業団体に出向いて説得と調整を繰り返し、一時は前会長を比例代表に回すことで決着するかと思われた。しかし、一本化はならなかった。
「小沢さんからは『(非自民候補乱立で)共倒れは避けたい』と話があった。けれども私の後援会が納得しなかった。政党候補になると党利党略が先行してしまう。小沢さんが『右向け』と言えば右を向かなければ仕事をしていけない感じになる」。前会長は特産のリンゴジュースを記者に勧めながら、そう話した。小沢の説得が不調に終わった後には、無所属のまま民主党の推薦を得、さらに生活の党を離党した前衆院議員の応援を受けるなど、小沢との対決姿勢を強めていく。「民主党はTPP賛成だ。おかしいと思わないか。マスコミがもっと厳しく追及しないとだめだ」。小沢は不快感をあらわにしたが、後の祭りだった。
「小沢王国」と呼ばれた小沢の地元岩手でも候補者の調整は難航した。もともと小沢の下で結束していた勢力が三つに分裂したからだ。現職の前復興相は民主党を離党して無所属▽民主党は独自候補を擁立▽生活の党は元県議を公認−−そこに21年ぶりの議席獲得に燃える自民党が新人を立てる。「野党がバラバラの1強多弱」(生活の党幹部)という、青森とほぼ同じ構図になっている。
「小沢氏が青森を重点区と位置付けたのは、すぐ隣でおひざ元の岩手とセットで考えたのでしょう。東北は小沢氏にとって最後の牙城です。負けたら影響力の低下は避けられない。今回はリスクを取って大勝負に出ていると思います」。そう解説するのは「最後の小沢一郎」を最近出版したジャーナリストの鈴木哲夫だ。「どの野党も一つにならなければ自民を利するだけと分かっていても『小沢さんだけは勘弁してくれ』と言う人が多い。なぜかと聞くと、『壊し屋』だの『手法が強引』だの『政治とカネの問題がある』などと言う。虚像に振り回されているだけなのです。非自民大同団結の流れをつくる力量があるのは小沢氏だけなのに『あの人がいるからできない』と言われてしまうジレンマ。一種の悲劇ですね」
「小沢離れ」は足元から進んでいる。昨年12月の衆院選で自身の選挙区・岩手4区で7万8057票と前回より5万6000票減らした。新人候補に張り付いて「選挙に強い小沢」を支えてきた秘書集団もこの1年間で十数人から9人にまで減った。長年、事務所として使ってきた高級マンションも売りに出した。
「短期間に何度も党名が変わり、長年の支持者からもお叱りを受けている」(小沢側近)。代表の知名度は高くとも「生活の党」の名前が有権者に浸透しているとは言い難い。そのためか、小沢は「マスコミ嫌い」のイメージを翻してテレビや新聞、雑誌などメディアに積極的に出るようになった。ニコニコ動画では元ライブドア社長の堀江貴文や原発の危険性を訴える京大助教の小出裕章ら異色の人物と対談し、その模様をネット配信している。
公示前日、衆院議員会館に拠点を移した小沢事務所に本人を訪ね、青森の情勢を聞いた。「非常に厳しい。非自民候補が乱立してしまっている。ウチに現職がいるのにぶつけてくるというのは、やはり天下国家への意識が足りないからではないか。選挙は政権奪取のためにやるものでしょう」。他党への不満を隠そうとはしなかった。
青森で選対本部長を務めていることについては「それで少しでも候補者がやりやすいというのなら、と引き受けたんです。政治家としてのメンツとか何とかの話ではありません」。小沢への警戒感が統一候補擁立への妨げになっているとの声には「僕は動いていない。仲間の選挙運動をしているだけ」と反論した。
今、小沢は一冊の本を執筆している。20年前、「日本改造計画」を著してこの国のビジョンを示し、1993年の非自民連立政権樹立につなげた。その続編だ。出版はいつになるのか。「政権奪取が目前になった時です。次の総選挙はちゃんとした受け皿さえできればきっと勝てる。国民は自民党以外のもう一つの受け皿を欲しがっている。それは間違いありません」
73万部を売ったベストセラーの続編を「幻の本」にしないためにも、参院選を勢力回復への足がかりにしたい小沢。永田町関係者の多くが東北の二つの選挙区に注目しているのは確かだ。【浦松丈二】
◇
この参院選、単に椅子の数を決めるだけでなく、岐路に立つ政治家たちの命運まで左右しそうだ。何を思い、どう動くのか。その「正念場」に迫る。(敬称略)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。