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「小沢一郎を強制起訴し、証拠捏造検事を無罪方免にした検察審査会の疑惑は闇に葬られた」と題する記事が、現在発売中の「サピオ8月号」に掲載されています。事は最高裁(事務総局)と最高検という日本司法の最高機関への重大な疑惑です。しかし、日本の大手紙は、例によって”だんまり”を決め込んでいます。
小沢氏の起訴は、東京地検特捜部が2010年2月に不起訴を決定したときから、そのシナリオが動き出しました。検察審査会を活用して、「小沢氏をなんとしても起訴に持ち込む」というシナリオです。10年4月と9月の2回の検察審査会(検審)が開かれ、「起訴相当」を議決したと発表されました。しかし、2回目の9月の検審は実は開かれず、最高裁(事務総局)が架空の検審で「起訴相当を議決した」ことにしました。
架空の証拠は、検審が開かれていれば必ずあるはずの交通費の精算手続きが「ない」ことで裏付けられています。検審を管轄する最高裁(事務総局)は、「証拠はある」と精算請求の書類を出してきましたが、それはすべて真っ黒に塗りつぶされ、なにが書かれているか全く分からないようにした代物。「ある」というための形だけのアリバイです。実は、朝日や読売新聞など主要6紙は9月8日の紙面で、「10月下旬に検察審査会が開かれる」と、検察のリーク情報を一斉に報じました。
ところが、当時政権を握っていた民主党は党内事情から急きょ、代表選を行うことになり、菅直人、小沢一郎の二人が立候補を表明、経過は小沢氏が「勝つ」見通しとなって大慌て。なんとか状況をひっくり返すために、代表選の前に「小沢起訴の議決がほしい」となったわけです。民主党の誰が働きかけたかは、今も明確にはされていませんが、(仙谷由人氏らの名が取りざたされている)民主党からの働きかけに応じて、代表選の投票30分前に、「起訴が決まった」という情報を流しました。これが事実関係にもとづいて浮かび上がってきたシナリオです。
このほかにも、検察審査会の審査員の平均年齢が、複数回訂正されることもありました。「おかしいではないか」と指摘されるたびに、おかしくないようにつじつま合わせの”訂正”が繰り返されました。検審が議決する前には必ず検察官の説明が審査会委員に対してなされなければならない規定がありますが、検審が開かれたとされる日に、担当した斎藤隆博・東京地検特捜副部長(当時)が検審に出向いた記録がありません。
こうしたいくつもの事実を、何度も足を運んだ末につきとめた、「最高裁の罠」の著者、志岐武彦氏は、「私たちが情報公開で閲覧した検察の出張簿には記録がない。大メディアは自ら調査・検証せず(関係者)からリークされた真偽不明の情報を垂れ流されているだけではないか」と語っています。関係者とは、検察であることはもちろんです。事実朝日は議決が発表された10月4日の翌日の紙面で、「審査にかかわった関係者は4日、こう語った。『慎重の上にも慎重に審査した証拠だけを吟味した、自信を持った議決だ」と報じました。
同じ5日の夕刊では、「ジーンズの男性にミニスカートの女性といった若い審査員たちの姿まで描写し、発表した若い平均年齢34.55歳が「間違いではなかった」と印象づける記事まで書いています。明らかに検察からリークされた記事をただ垂れ流しているだけなのです。本来、検察審査会は、検察の暴走をチェックするために設けられたものです。ところが頭のいい検察は、これを「市民目線」という理由をつけて、「疑わしいの思ったら、強制起訴」という道を開いたのです。
志岐氏の「最高裁の罠」は、最高裁をはじめ検察を含む司法の「闇」を暴いたという意味で出色の書ですが、そこに指摘された事実の余りにも重大な意味にたじろいだのでしょう、マスメディアは無視の立場を通しています。そして、その検察の暴走をチェックするはずのマスメディアが、検察の意のままに成り下がっている。これが、日本の「正義のとりで」の司法であり、「信用」の上に成り立つはずのメディアの実態です。
もうひとつ、懸念されることがあります。「小沢氏を巡る検察・司法の暴走」については、肝心の小沢氏側と検察・最高裁との間で、なんらかの取り引きが行われたような気配が漂いはじめたことです。検察・最高裁のでっち上げまでやって陥れる権力の暴走に対し、さしもの小沢氏側も「これ以上追及しない」ということで、”手打ち”をしたような気配が感じられるようになってきました。参院選の結果によっては、こうした「検察・司法による支配」という事態がさらに深刻になりかねません。
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