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[公開書簡]
2013年7月10日
法務大臣
岸田 文雄 様
アフガニスタンにおける女性への暴力を根絶するために、日本政府は十分な支援を
私たちアムネスティ・インターナショナル日本は、アフガニスタンにおける女性に対する暴力根絶法が十分に守られることを確実にするために、日本政府が同国に対して働きかけるよう要請いたします。
女性の教育や公的な活動を禁じていたタリバン政権時代を鑑みれば、女性に対する暴力根絶法は、アフガニスタン政府にとって重要であり画期的であると、私たちは考えています。同法が完全に実施されれば、女性の福祉は大きく前進し、女性や少女を暴力から保護することに寄与するでしょう。
同法は、女性に対する暴力について、家庭内暴力、未成年の結婚や強制的な結婚、家族間の紛争調停に幼い娘を相手方に引き渡す・婚姻させる、といった20の行為を犯罪化しています。同法は、また、女性の遺産、財産、教育、就業、健康へのアクセスといった権利を女性から奪うことを犯罪と定義しています。その他の条項では、権利を行使する主体を女性と位置づけ、暴力による損害賠償の受益者が女性であることを謳っています。
女性への暴力根絶法は、2009年に大統領令で成立しました。アフガニスタンでは、議会承認がないまま大統領令で法案が通ることは珍しいことではありません。法案が議会を通ることになれば、議会は法を修正あるいは破棄する権限を持っています。2013年5月18日、女性の大統領候補であるファウジア・クフィが委員長を務める、女性、人権および市民社会に関する委員会は、議会承認のための検討の場を召集しました。それ以来、同法に関する議論は延期された状態になっていますが、近い将来に議論が行われれば、議会の多数派である保守勢力によって、同法は骨抜きにされるか、あるいは完全に破棄されてしまうと、同国の多くの女性活動家や市民団体は危惧しています。
現在、数名の議員が法の修正を提案しており、その内容が女性や少女に対する暴力からの法的保護を弱める内容であると聞いております。アムネスティはこの点について、深く憂慮しています。
女性への暴力根絶法の施行に一定の前進はあったものの、いまだにアフガニスタンにおける女性への暴力は深刻な問題であり続けています。アフガニスタン独立人権委員会(AIHRC)は、2012年3月21日から10月21日までのあいだに、4000件以上の女性への暴力に関する報告を受けています。それらの報告の中には、 バードギース州出身の若い女性ハミラさんの公開処刑も含まれています。ハミラさんは、従兄弟と駆け落ちしたことを理由に父親に銃殺されました。
女性の人権活動家も、著しい危険にさらされています。女性問題に取り組む市民団体の事務局長であったハニファ・サフィさんは、2012年7月に銃弾に倒れ、そのあとを引き継いだナディア・シディキさんも同年12月に殺害されました。
それゆえ、アフガニスタン政府および海外の支援国にとって、女性に対する暴力根絶法を骨抜きにすることなく完全に実施し、市民、政府、司法、検察などあらゆるレベルでその意識向上を推進することが非常に重要となっています。同時に、警察、検察、裁判官が法をどのように適用するかについて、十分な訓練が必要です。
また、2012年のアフガニスタンに関する東京会合で合意された相互アカウンタビリティの「東京フレームワーク」に基づき、女性への暴力根絶法とそのアクション・プランの実施状況を確認するために、アフガニスタンの主要ドナー国は同国を支援しなければなりません。
日本はアフガニスタンに対する主要ドナー国であり、また、昨年のアフガニスタンに関する東京会合のホスト国でもあります。同国における女性への暴力が深刻かつ喫緊の課題であることに鑑み、日本政府が現在の女性への暴力根絶法を支援するメッセージを明確にアフガニスタン政府に伝え、効果的な実施にむけて十分な支援を行うよう、要請いたします。
公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 若林秀樹
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