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「小沢一郎は吉田茂の最後の継承者」(EJ第3587号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/368770088.html
2013年07月11日 Electronic Journal
マイケル・サンデルというハーバード大学の教授がいます。こ
の大学で最も人気のある授業がサンデル教授の「JUSTICE
/正義論」です。テレビでも「サンデル教授の白熱教室」として
放送されているので、ご存知の方も多いと思います。
平野貞夫氏の最新刊書では、達増拓也岩手県知事が平野氏の主
宰する「メルマガ日本一新」に寄稿した論考の一部が紹介されて
いるので、小沢氏の「自立と共生」に関連して、少しご紹介する
ことにします。
達増知事は、サンデル教授の「正義論」が注目を浴びているの
は、リーマンショックで欠陥が明らかになった米国流自由主義の
修正を訴えているのではないかと指摘しています。米国流の自由
主義は、次の2つを柱としています。
―――――――――――――――――――――――――――――
1. 功利主義/ユーティリタリアニズム
2.自由至上主義/ リバタリアニズム
―――――――――――――――――――――――――――――
功利主義というのは、社会全体の幸福を重視する思想で、「最
大多数の最大幸福」を実現させることです。これに対して自由至
上主義とは、自由主義のなかでも個人の自由の貫徹を重視し、自
己の意志以外は何物にも縛られないという考え方です。ここから
自己決定と自己責任がいわれるのです。リベラリズムと区別する
意味で、自由主義ではなく、自由「至上」主義、「完全」自由主
義といわれるのです。
この功利主義と自由至上主義が合体すると、市場原理主義、す
なわち、リーマンショックを引き起こした米国生まれのグローバ
ル・スタンダードになるのです。日本においては「小泉/竹中路
線」がそれに当ります。これが現在の安倍自民党において復活し
つつあるのです。
ザンデル教授は、功利主義と自由至上主義だけでは駄目であり
「共同体主義」(コミュニタリアニズム)が必要であると説いて
います。この「共同体主義」について、達増知事は次のように述
べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
共同体主義は、共同体において個人が「役割を果たす」ことを
重視し、共通の価値である「徳」を大切にする。損得や個人の
好みとは別に、「為すべきこと」があるのではないか、それを
集団において共通のものにしていく必要があるのではないか、
という考え方である。経済・社会に関しては、優勝劣敗だけで
は良い社会にはならないのではないか、経済主体は損得や好み
以外にも共同体に対して為すべきことがあるのではないか、と
いうことになる。政治の場では、ある役に就いている者は、好
き勝手に行動していいのではなく、局面ごとに当然為すべきこ
とがあるのではないか、その為すべきことについて多数の合意
を形成していかなければならないという事になる。(一部略)
小沢氏は、政策的にはセーフネット重視であり、政治手法は、
理念・政策を共有する政治家や支持者を結集して多数の形成を
目指し、必要であれば波風を立ててでも徹底的に議論をする。
意思決定の手続きはもちろん尊重するが、こだわるのは内容で
ある。 ──達増拓也岩手県知事
──平野貞夫著/ビジネス社刊
『真説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
―――――――――――――――――――――――――――――
サンデル教授のいう共同体主義は、小沢一郎氏のいう「共生」
そのものであるといえます。小沢氏自身は、サンデル教授のいう
共同体主義のことは知らなかったようですが、政治の世界に身を
置いて、経済・社会に対しては、優勝劣敗だけでは良い社会には
ならないことを体得していたのではないかと思われます。
麻生元首相(現財務相)は、2008年の首相就任後に小沢氏
の「国民の生活が第一」の「5つの約束」(昨日のEJ参照)を
知って、次のように述べたそうです。
―――――――――――――――――――――――――――――
小沢っていう政治家は、社会主義者である。こんな男を首相
にしてはいかん ──麻生太郎元首相
―――――――――――――――――――――――――――――
これに敏感に反応したのが、官僚中の官僚といわれる検察なの
です。これについては、「官僚」のところで詳しく述べます。
麻生太郎氏といえば、吉田茂元首相の孫として知られますが、
平野貞夫氏によると、吉田茂の政治理念を現在最も継承している
政治家は麻生太郎氏などではなく、小沢一郎氏なのです。
新憲法を制定して第2次吉田内閣が成立したとき、吉田元首相
は次のように発言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
デモクラシーの実現には、政権交代が必要で、そのためには
社会党を育成しなくてはならない。 ──吉田茂元首相
──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
そのとき、社会党は「よけいなお世話だ」と批判したといいま
すが、二大政党の必要性を早くから認識していたのです。吉田元
首相は、1962年(昭和37年)に『大磯随想』という冊子に
「政治の貧困」と題して、おおよそ次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
日本では現在、政治の貧困と言うことが叫ばれている。その
原因は、日本のデモクラシーは戦後になって与えられたもの
であり、大部分の民衆がその真意を理解していない。そのた
めに議会政治にも貧困性が現れているが、我々は議会政治よ
り他に日本の向かう道はないので、あらゆる努力をしなけれ
はならない。 ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
吉田元首相は、日本の民主主義は戦後与えられたもので、まだ
根付いていないという同じ認識を、時代の違う政治家の小沢一郎
氏も認識していたのです。 ── [自民党でいいのか/09]
≪画像および関連情報≫
●『大磯随想』における吉田茂の随筆
―――――――――――――――――――――――――――
吉田茂が出筆した『大磯随想』という本の最初の一部を掲げ
てみた。久し振りにこれを読んで見ると、吉田茂が外交官・
政治家として生きた時代と現代社会を比較して見ても、政治
的には悲しいかな少しも代わっていない事がよく分かる。む
しろ敗戦で打ち萎れる日本を何とかしようという気概につい
て考えるのならば、吉田茂が生きた時代の政治の方がまだま
しであったし、国民も緊張感を持って生活をしていたような
気がする。政治の貧困、それはまた同時に日本のマスコミの
貧困にも起因しているような気がする。政治の貧困を連日の
ように誇張し続け、また弱い人間の愚かさを滑稽に民衆にア
ピールすることだけでは決して政治の貧困は解決されないし
民主主義の本質もまた導くものでもない。そんなことを考え
ながら次の吉田茂の本の一説を読んでもらいたい。「日本で
は現在、政治の貧困ということが叫ばれている。事実、日本
の政治は貧困に違いない。だが、ある種の人が今更、誇張し
て貧困を言う気味もある。今の政治形態ではいけない、デモ
クラシーではやって行けない、という方向へ論理を持って行
くために、政治の貧困を誇張する向きもある。すると、それ
は民衆にアピールする、事実、貧困なのだから。しかしそれ
は現在の議会政治否定の方向を示すもので、我々は十分に注
意する必要がある。
http://www.townnews.co.jp/0606/2011/04/29/103642.html
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