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PRESIDENT 2013年7月29日号 ソーシャルメディアリスク研究所代表 田淵義朗
ネット上の選挙運動が解禁となった初の参院選だが、選挙違反についての選挙管理委員会および警察の取り締まりは今後どうなっていくのか。選挙真っ最中の候補者にとって頭の痛い問題だろうが、選管、警察の手探り状態は続いている。
そもそも、公職選挙法に加えてネット解禁の特例部分を認めるという2階建て構造が混乱のもと。ネットでなくリアルの従来型選挙は、従来通り公選法の取り締まりが適用される。ネットが米国の水準まで完全には解禁されておらず、有権者のSNS利用はOKだが電子メールは禁止、候補者の有料バナー広告はダメだが無料のバナー広告はOK……という具合に規制が複雑でわかりにくいため、書店に多くのQ&A本が並んでいる。
1番の問題は、選挙管理委員会の中にネットを理解している者が少ないこと。取材中に「Webとはホームページのことか」「電子メールとSNSの違いは何か」ときかれたことも。また、「解釈に違いがあっては問題になるから」と、多くの都道府県の選管ホームページには今も総務省のリンク先だけ掲示している。その下の市町村の選管となれば、さらに心もとない状態だろう。これでは候補者からの具体的な疑問や相談に明確な回答ができるはずもなく、ガイドラインの文言を棒読みするだけになりそうだ。
一方、実際に取り締まりに当たる警察は、理解不足のままでは済まされない。専門のサイバー犯罪にたけた捜査員を配置したり、専門家を呼んでSNSについて研修会を行っている。が、「無数のネットの書き込みから選挙違反に該当するものを見つけるのは困難」といった声も聞かれる。
結局は警察も、ネットより買収や供応といった従来型の案件を中心に摘発を進めるのではないか。今後への一罰百戒となりそうなネット案件も手がけるだろうが、数は少ないだろう。選管も候補者に対しては警告の範囲で終わりそうだ。
ただしネット選挙違反でも金の絡む事件、組織的にネットで動員をかける類いのものは、タレコミや告発次第で積極的に捜査することは間違いない。例えば対立陣営の候補者の誹謗中傷を、裏で運動員に金を払ってネットに書き込ませるようなケースだ。これは候補者のダメージが大きいだけに、その対応がどうなるか注視したい。
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