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2013年07月09日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆国民の意思を示す言葉に「一般意思」「特殊意思」「個別意思」という区別がある。「一般意思」とは、社会構成員に共通する全員一致の意思、「特殊意思」とは、特定の集団的意思(たとえば、自民党の党員全体の共通意思)、「個別意思」とは、文字通り、個々の国民の意思ということである。
啓蒙思想の時代、18世紀のフランスで活躍した哲学者、政治・教育・哲学者、言語哲学者ジャンジャック・ルソー(1712年6月28日ジュネーヴ共和国に生まれ〜 1778年7月2日)の「社会契約論」に「一般意思」という言葉がある。「一般意思」とは、「人々が社会的な結合体を結成するにあたり、よりどころとなる合意のこと」と定義されている。すべての人々にとって共通する利害を表している。だれもそのことに関しては異存がない。人々はこの合意に基づいて社会的な結合体である政治体を作り上げている。
しかし、この「一般意思」=「すべての人々にとって共通する利害」を求めるのは、「100%」を求めることであり、理想=ベストではあっても、現実には難しい。それでも、人々は、「100%」は、無理でも、限りなく「100%」を目指して、「合意形成」の努力を続けなくてはならない。
宗教界では、ローマ法王庁が、新しいローマの司教たる教皇を選ぶとき、「コンクラーベ」(「鍵がかかった」部屋で枢機卿が投票)によって行うシステムは、「3分の2以上の得票」が得られるまで、何度も投票を繰り返して決めている。「3分の2以上の得票」とは「66.6666・・・%」であり、限りなくベストを希求しようとする意思を秘めたベターな割合である。日本国憲法の改正条項も、こうした思想哲学の歴史的産物であると言ってよい。
もちろん、社会生活のなかで、社会構成員に共通する全員一致の意思をまとめて「合意形成」するのは難しいので、通常の場合、「多数決」により「ベター」を求めて、一応の「合意形成」を行って、社会運営している。そうでもしなければ、効率的・スピーディな生活を進めていくことができないので、「特殊利益」や「個別利益」を調和させ、妥協の産物を積み重ねているのだ。これは、いわば「生活の知恵」である。
◆だが、安倍晋三首相は、本来「不磨の大典」と言われる日本国憲法の改正問題に、こともあろうに「第96条=改正条項」の「一般利益」を希求する論理を否定して、自民党を中心とする利益集団の「特殊利益」を求める論理にすり替えようとしている。これは、とんでもない策謀だ。
毎日新聞は7月7日午後10時22分、「<首相>96条に再言及 自民草案、見直しに柔軟」という見出しをつけて、以下のように配信している。
「安倍晋三首相は7日のNHK番組で、憲法について『6割の国民が変えたいと思っても国会議員の3分の1超が反対すればできないのはおかしい』と述べ、改憲の手続きを定めた96条を見直し、発議要件を衆参両院の過半数(現行3分の2以上)の賛成に緩和することに改めて積極的な姿勢を示した。
【街頭演説では】安倍首相:演説で公示後初めて憲法改正訴え
また首相は、自衛隊の「国防軍」化などを盛り込んだ自民党の憲法改正草案を見直す可能性について『ここを修正すればいいということであれば、当然、政治は現実なので考えていきたい』と語り、柔軟に対処する考えを表明した。改憲に積極的な勢力の結集を優先したいためと見られる。首相は一時唱えていた、憲法の他の条文より96条を先に見直す先行改正には触れず、改憲の手続きについて『国民投票法の3要件がある。それをまず整えることから始める必要がある』と指摘。投票年齢を「18歳以上」に定めるための国民投票法改正を優先する考えを示した。公明党の山口那津男代表は同じ番組で、96条先行改正について『やるべきではない』と主張。民主党の海江田万里代表は『何を変えるという議論もなしに、手続き論だけするのは反対だ』と語った。一方、日本維新の会の橋下徹共同代表は96条の先行改正論を訴え、憲法改正について『ぜひ連携できるところと連携したい』と述べ、自民党との共闘を探る考えを示唆した。【木下訓明、飼手勇介】」
安倍晋三首相の「憲法改正条項改正」の考え方は、「一般意思」を希求する論理をかなぐり捨てて、自民党中心の利益を最優先する「特殊利益」を求める論理を強引に推し進めようとするものであることがはっきり出ている。「三分の二以上の賛成」という言葉の深い意味をまったく理解していない。自民党の最高意思決定機関である「総務会」でさえ、「全会一致」を原則としているのに、本来「一般意思」が希求されるべき憲法改正発議要件を緩和しようとするとは、正常な判断ではない。一国の最高指導者である首相としては、お粗末と断じざるを得ない。
◆憲法をないがしろにするとどうなるか。エジプトは、軍部のクーデターにより、産まれてまだ半年を経たばかりだった憲法が、停止された。この結果、内乱から内戦が勃発してきている。政治が安定しなければ、社会は乱れるという典型である。
日本は、古代シュメール以来6000年の歴史を誇る「万世一系の天皇制」を護持し、政治的安定の基盤を築いている。そのうえ、「硬性憲法」を持ち、「法の支配」に基づく、社会を堅持している。
だが、憲法改正発議要件を「三分の二以上の賛成」から「二分の一」に緩和してしまうと、政権交代の度に「憲法改正の発議」が可能となり、政治的安定性が揺らぎ、ひいては、社会不安から動乱を誘発し、さらには「天皇制」が否定されかねない最悪の状況が生まれる危険がある。安倍晋三首相に猛省を促したい。
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