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政府 憲法違反では? 「慰安婦中傷帽子を」国連勧告放置
2013/7/8 東京新聞 こちら特報部 [ニュースの追跡] より
国連の人権条約機関が、元従軍慰安婦をおとしめる行為の横行に懸念を示すとともに、日本政府に改善を求める勧告を立て続けに出した。安倍政権は「従う義務なし」と突っぱねているが、このまま放置すれば、憲法が定める条約順守義務に抵触しかねない。(佐藤圭)
「安倍政権は国際人権基準に背を向けている。人権が普遍的な概念であることを全く理解していない」。元アムネスティ日本事務局長で東京経済大非常勤講師の寺中誠氏はこう批判する。
国連の社会権規約委員会は5月21日の勧告で、元慰安婦を「売春婦」などと中傷するヘイトスピーチ(憎悪表現)の防止などを求めた。拷問禁止委員会も同月31日、慰安婦問題について「国や地の公人や政治家による事実の否定に深い懸念を持ち続けている」とした上で、日本政府に対して「否定発言への反論、元慰安婦への十全で効果的な救済と補償の実施」を強く求めた。
拷問委などの条約機関は締約国を対象に、定期的に勧告を出している。今回は、橋下徹・日本維新の会共同代表による慰安婦は「必要だった」との発言や、東京・新大久保などでのヘイトスピーチ・デモの社会問題化とタイミングがあった格好だ。
だが、安倍政権の対応は「従う義務なし」だった。先月18日、拷問委の勧告について「法的拘束力を持つものではなく、締約国に従うことを義務づけているものではない」との答弁書を閣議決定したのだ。
寺中氏は「確かに勧告は法的拘束力を持たないが、勧告の法的拘束力の問題だけを取り出すことに意味はない」と疑問を投げかける。
国際人権基準は、各国政府が達成すべき共通の基準である世界人権宣言と、これを実現する目的でつくられた社会権規約や自由権規約などの条約、条約機関の勧告、国連総会や人権理事会の見解からなる。
この中で法的拘束力を持つのは条約だけだ。しかし、条約は、締結国の現状に照らして具体化した勧告などがなければ機能しない。「人権基準は、条約や勧告などの総体で動いている。勧告を否定することは、人権基準全体を否定することに等しい」(寺中氏)
憲法98条2項には「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に順守することを必要とする」とある。日本が条約順守義務を負う以上、関連する勧告などについても、実現に向けて努力する義務が生じる。自民党の憲法改正草案にも、この条文は継承されている。
寺中氏は「安倍政権が、勧告の実現に向けた努力を故意に怠った場合、憲法上の順守義務違反を構成する可能性もある」と指摘する。
そもそも日本は、約30ある人権条約のうち、3分の1程度しか批准していない。慰安婦問題に限らず、人種差別禁止や死刑廃止などの勧告をことごとく無視してきた。
寺中氏は「日本は国際社会から完全に孤立しようとしている」と警鐘を鳴らす。
「日本政府は、国際人権体制に入る意思がない。官僚組織は、人権基準が国内に影響を与えることを徹底的に阻止してきた。国連からも『日本が条約に入っている意味はない』とみなされている」
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