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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130707-00000540-san-pol
産経新聞 7月7日(日)19時37分配信
防衛省と警察庁が、ある疑惑をめぐり激しい情報戦を繰り広げている。かねて治安対策で権限争いを続けてきた両省庁だが、にわかに場外戦を激化させている背景には、「国家安全保障会議(日本版NSC)」の創設をにらんだ主導権争いがある。
仁義なき暴露合戦の様相を呈する中、外務省も参戦し、三すくみの権力闘争から目が離せない。
■情報本部の女性事務官
発端は防衛省が4月22日に発表した職員の処分だった。
防衛省情報本部に勤務していた60歳代の女性事務官が、「部内限り」の資料を職場外に持ち出そうとしていたことが発覚。しかも事務官は過去に2度、職場に申告せず中国人留学生の男性と食事をしていたことも判明した。
情報本部といえば、情報収集衛星の画像分析や通信傍受した電波の解析など国防に関わる「秘」を扱う部門。そこに所属する事務官が部外に資料を持ち出そうとしていたとなると、ただごとではない。
だが、防衛省によると、女性事務官は秘密情報にアクセスする権限はないという。持ち出しを図った資料も米国務省の定例会見の和訳だった。
事務官は会見資料を入れたリュックサックを庁舎内に置き忘れたことが端緒となり、注意処分を受け、3月末に退職した。
「女スパイ」のイメージとは程遠く、中国のスパイ活動の協力者に利用されかけた「情報漏(ろう)洩(えい)疑惑」の方がしっくりくる。
■「警察庁のリークだ」 「真空掃除機」。
スパイを摘発する外事警察の用語だ。
情報提供者に警戒されないよう、特定の資料を求めるのではなく、入手できる情報を強力な掃除機で吸い取るようにかき集める中国流の情報収集術を指す。
これに照らせば、女性事務官の資料も中国の諜報機関にとっては収集に値すべき情報といえる。
接触していた中国人留学生は、事務官がよく立ち寄るスーパーでアルバイトをしていた。突然降り始めた雨に事務官が途方に暮れていたところに留学生が傘を差し出し、2人は会話をする関係になった。
かつて中国やロシアの諜報活動を取材した経験からいえば、この留学生のスパイ臭はかなり強い。
中国の諜報組織の指揮の下、事務官をターゲットと見定めた上で何気ない会話から距離を縮め、情報提供者に仕立て上げる−。
そうした周到な工作活動が浮かび上がり、スパイ摘発を担う警察庁にとっては徹底的に解明すべき事案と映るかもしれない。
実は、この女性事務官に対する処分情報は、防衛省の公表前からマスコミに拡散していた。おさらいすると、防衛省は3月に処分を行ったが、当初は非公表とし、公表したのは4月22日になってから。
公表直後に発売された週刊文春と週刊新潮が、そろって事務官に関する詳細な記事を掲載したことも、事前に情報が拡散していたことを裏付ける。
非公表での処分→マスコミへの情報拡散→余儀なくされた処分公表と報道−。
一連の流れを振り返り、防衛省幹部は口をそろえる。
「警察庁がリークしたに決まっている」
■NSCのポスト争奪戦
その動機もまことしやかにささやかれる。
「情報管理の甘い防衛省にNSCの事務局トップなんて任せられない、というイメージを植え付ける算段なんだよ」
この算段については少し説明が必要だろう。
政府は秋の臨時国会でNSCを設置するための関連法案を成立させ、来春にも発足させたい考え。NSCは首相官邸主導で外交・安全保障政策を立案するほか、有事やテロなどの緊急事態では情報を集約し対処方針も決める枢要な意思決定の場となる。
NSCは各省庁からの出向者らで構成する事務局として、国家安全保障局(安保局)を設ける。安保局のトップとなるのが局長ポストで、防衛省や警察庁、外務省などの関係省庁は水面下で争奪戦を展開しつつある。
先に触れた算段とは、警察庁側はリークにより防衛省の情報管理の甘さを際立たせ、安保局長ポストは防衛省出身者では「不適格」との烙(らく)印(いん)を安倍晋三首相に押させることだ。そして最終目標は、安保局長に警察庁出身者を充てることにある−。
これが、(あくまで)防衛省の見立てによる警察庁側の算段だ。
■外務省の深謀遠慮
防衛省と警察庁の相克は今に始まったことではないが、今回の場外戦には外務省も参戦した。
安保局の組織編成をめぐり、外務省は北東アジアや国防戦略といった地域・テーマ別の「分析官」を安保局に置く案を提唱。外務省の組織体系を踏襲し、専門知識を備えた同省出身者を送り込むことを想定している。
これにより安保局は「情報集約」に加え「情報分析機能」も持つことになる。
ある警察庁幹部は、ここに外務省の深謀遠慮を読み取る。
「安保局が情報分析機能も持てば、それを統括する安保局長も外務省出身者を充てるべきだ、との結論に持っていきたいんでしょ」
この警察庁幹部は、うちにとって深刻なのは、内閣情報調査室(内調)の存在意義が失われてしまうことですよ、と苦く笑った。
これはどういうことか。
内調トップの内閣情報官ポストを歴代独占するのは警察庁で、首相に近いポストは権力の源泉といえる。
内調の機能の柱のひとつが情報分析で、その機能をNSCに剥奪されれば存在意義は著しく低下する。それを見越し、警察庁の牙城を突き崩そうとする外務省側の算段を敏感にかぎとっているのだ。
警察庁と外務省の権限争いには高みの見物を決め込む防衛省幹部は、こう解説する。
「第2次安倍内閣では、内閣情報官と内閣危機管理監に加え、事務の内閣官房副長官まで警察庁出身者が独占している。その上、安保局長ポストまで握ろうとすれば、さすがに外務省も黙っちゃいないよ」
安保局長をめぐる防衛省vs警察庁vs外務省という三すくみの構図。
「安保の要は防衛省」
「危機管理なら警察庁」
「日米安保は外務省」
三者三様の看板と省益をかけた争奪戦は始まったばかりだ。(半沢尚久)
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