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アベノミクスの破綻(1)〜政治経済学者・植草一秀氏
http://www.data-max.co.jp/2013/07/01/post_16454_uk01.html
2013年7月 1日 15:47 NETIBNEWS
<「アベノミクス」メッキの下にある「アベノリスク」>
6月26日に通常国会が会期末を迎え、政治は7月21日の参院選投開票日に向けて走り出した。通常国会会期末には、安倍晋三首相に対する問責決議が参院で可決された。問責決議は不信任決議と異なり、内閣総辞職などを強制する力を持たないが、過去に3度存在する首相に対する問責決議可決においては、すべて、問責された首相が4カ月以内に退陣している。
メディアは大きく報道していないが、安倍政権の前途には重い暗雲が立ち上っている。
日本国憲法は国会を国権の最高機関と規定しており、その最高機関である国会の問責決議の重みは比類のないものである。ところが、安倍首相は問責決議可決後の記者会見で、決議を厳粛に受け止めるなどとは一切述べずに、問責は「ねじれの象徴」だと開き直った。自民党多数の衆院から見れば参院が「ねじれ」ているのだろうが、野党が多数の参院から見れば、「ねじれ」ているのは衆院なのである。参院の決議に敬意さえ示さない姿勢は参院軽視、参院冒涜の姿勢だと批判されても返す言葉のないものだ。
記者会見で安倍氏は、相も変わらず、アベノミクスの自画自賛を繰り返した。メディアがアベノミクスを持ち上げてきた流れに乗り、参院選も乗り切ってしまおうとの考えが明白だが、このアベノミクス自体、かつての輝きはなくなっている。
筆者はアベノミクスが薄っぺらな「金メッキ」だと判断する。初めはキラキラ輝いているが、薄っぺらなメッキはすぐに剥がれ始め、地肌が顔をのぞかせる。メッキが剥がれた下から現れるのは、「アベノリスク」である。このリスクこそ怖いものである。
7月3日に緊急書き下ろし新著『アベノリスク−日本を融解(メルトダウン)させる7つの大罪−』(講談社)を上梓する。主権者である国民が、直面する超重要争点について熟慮することなくムードに流されて参院選に臨むなら、参院選後に思いもよらぬ地獄の日々が始まることになりかねない。
安倍政権が隠し持つ7つの巨大リスクを、徹底的にわかりやすく解説した。願わくは、1人でも多くの有権者が、重大な日本の政治問題を、参院選前に熟慮してほしい。その一助になればと思い、本書を執筆した。
現在の趨勢が続いて、自公の与党が参院選で大勝すれば、リスクは現実のものになってしまうだろう。そのとき、私たちの日本に何が生じるのか。「アベノミクス」の次に起こることを知りたい人に本書を贈る。
アベノミクスの破綻(2)〜政治経済学者・植草一秀氏
http://www.data-max.co.jp/2013/07/02/post_16454_uk02.html
2013年7月 2日 07:00
<ほんとは怖い7つのアベノリスク>
7つのリスクとは、インフレ、消費税大増税不況、TPP、原発、シロアリ、憲法、戦争、である。新約聖書末尾に収められている「ヨハネの黙示録」になぞらえるとこうなる。
第一のラッパが吹き鳴らされると、日銀の資産を大幅に劣化させてまで誘導される激しいインフレが、政府と企業だけを救い、国民は大いに苦しめられた。
第二のラッパが吹き鳴らされると、大増税が始まり、アベノミクスへの期待効果によって生まれたわずかな株高などは簡単に吹き飛ばされた。
第三のラッパが吹き鳴らされると、TPP加盟によって美しい国土は荒れ地と化し、米国市場原理主義の猛威が日本社会を荒廃させた。
第四のラッパが吹き鳴らされると、活断層の上の原発がいつのまにか続々と再稼働し始め、人々は原発事故の悪夢に怯える日々を過ごした。
第五のラッパが吹き鳴らされると、血税を食い荒らすシロアリ官僚がますます増殖し、再び増額された巨大公共事業・役人利権予算に群がった。
第六のラッパが吹き鳴らされると、権 力の横暴を防ぎ止める役割を担っていたはずの憲法が、国家権力によって次々と都合よく改悪され、国民主権や基本的人権がないがしろにされた。
第七のラッパが吹き鳴らされると、憲法改悪によって戦争への道が切り開かれ、集団的自衛権の名のもとに日本が報復攻撃の対象とされ、・・・。
「ほんとは怖いアベノリスク」をすべての国民が理解しておく必要がある。昨年から本年5月にかけて、安倍政権が絶賛された理由はただ1つ。株価が上昇したことだ。野田前首相と安倍晋三氏による党首討論で、野田氏から解散宣言が飛び出したのが昨年の11月14日。この日の日経平均株価は8,664円だった。この株価が本年5月22日に15,627円に上昇した。半年で6,963円の株価上昇だ。株価が上がると経済は明るくなる。これをメディアが絶賛したのである。
前回記事にも記述したように、株価が上昇した理由は、株価が安すぎたことと、円安が進行したことだ。菅政権と野田政権は財務省路線に乗り、ひたすら増税実現を追求した。経済心理は凍りつき、株価は理論値以下の水準に引き寄せられていた。安倍政権は増税に先行する大型補正予算を編成し、経済心理の改善を誘導した。これが株価上昇力を高めたのである。
他方、日本の株価は円ドルレートとの連動関係を強めていた。円高が株価下落、円安が株価上昇を生み出す図式が成立していた。安倍氏のブレーンがここに目をつけたのかもしれない。安倍氏は徹底して金融緩和政策の強化を訴えた。金融市場は安倍政権下での金融緩和政策強化を「期待」して、長期金利を大幅に低下させた。この金利低下に連動して急激な円安が生まれ、これが急激な株高をもたらした。
安倍氏が言う「第一の矢」の金融緩和と「第二の矢」の積極財政が相まって、円安・株高の市場反応が生まれた。この限りにおいて「アベノミクス」は効果を発揮したと言ってよいだろう。
しかし、この順風は持続していない。三本の矢は飛行する方向を真逆に変え始めてしまった。「アベノミクス」が「アベコベノミクス」に姿を変えた。
アベノミクスの破綻(3)〜政治経済学者・植草一秀氏
http://www.data-max.co.jp/2013/07/03/post_16454_uk03.html
2013年7月 3日 07:00
<「アベノミクス」が「アベコベノミクス」に変質>
新体制の日銀が、初めて金融緩和政策強化を決定したのが4月4日。金融市場では、この日を境に、長期金利低下が長期金利上昇に切り替わった。この影響を受けて、5月23日以降、為替レートが円高に回帰し、株価が急落した。日経平均株価は6月13日に12,445円にまで下落した。昨年11月から半年かけて実現した株価上昇の45.7%が、わずか20日間で消滅した。
アベノミクスの第一の矢は、金融緩和=金利低下=円安=株高=景気浮上・インフレ率上昇のシナリオを描くが、実際に4月4日以降に発生したのは、金融緩和=金利上昇=円高=株安の連動であった。第一の矢の飛ぶ向きが正反対に変わってしまったのだ。
第二の矢は財政出動だが、補正予算を成立させた後、軸足が大移動を始めた。財政出動が大増税出動に切り替えられようとしている。安倍政権は今秋にも、消費税大増税を最終確定する姿勢を示している。これが確定すれば、第二の矢の飛ぶ向きも180度転換することになる。
第三の矢は成長政策だが、安倍晋三氏が満を持して講演で成長政策を発表した6月5日の講演終了直後から6月7日にかけて、日経平均株価は1,200円も暴落してしまった。安倍首相が掲げる成長政策とは、農業の自由化、医療の自由化、解雇の自由化、経済特区の創設、法人税減税などであり、資本を優遇する施策ではあるが、生活者=消費者=主権者にメリットを与えるものではない。第三の矢も生活者を直撃する方向に飛んでゆくことになるのだろう。
つまり、4月4日以降、アベノミクスは"アベコベノミクス"に姿を変え、三本の矢は生活者を射抜いてしまう方向に飛ぶ向きを変えてしまったように見える。
6月27日以降、米国経済堅調、米国長期金利上昇の影響で、為替が再びドル高方向に回帰し、不安定化した中国市場が落ち着きを取り戻したことから、日本の株価も反転の兆しを示しているが、アベノミクスの内容が変質を来している状況には変化が見られない。株価は反転の兆しを示しているが、これはアベノミクス効果ではなく、米金利上昇=ドル高によるもので、その先に浮上する米国金融緩和政策縮小の影響を考慮すると、手放しの楽観が許されぬものである。
アベノミクスの破綻(4)〜政治経済学者・植草一秀氏
http://www.data-max.co.jp/2013/07/04/post_16454_uk04.html
2013年7月 4日 07:00
<憲法・原発・TPP・シロアリ・戦争のリスク>
無理なインフレ追求政策は、さらなる長期金利上昇を発生させて、経済改善を妨げる効果を発揮してしまうだろう。巨大増税決定による財政政策逆噴射は、日本を不況に回帰させる原因になってしまうだろう。安倍政権の今後の経済政策運営が、日本経済の命運を分かつと言っても、言い過ぎではないと思われる。
さらに重要なことは、安倍政権の持つリスクが経済政策上のものだけではないことだ。国の根幹に関わる憲法、国民の命の問題に直結する原発、国家主権の喪失をもたらしかねないTPPという3つの問題がとりわけ重大だ。
安倍政権は憲法を変えやすくするために、憲法改正発議要件を定めた憲法96条の改正を提案している。安倍首相の提案では、衆参両院の過半数の賛成で憲法改正が発議され、その後の国民投票での投票総数の過半数の賛成によって憲法改変が実現することになる。衆議院で295議席を有する自民党だが、比例代表選挙での全有権者に対する得票率は16%に過ぎなかった。国会議席数と民意との間には巨大なかい離がある。国民投票も、投票総数の過半数の賛成で良いということになると、投票率が5割なら全有権者の4分の1以上の賛成で憲法が変わってしまうことになる。
自民党憲法改正草案には、人権抑圧、国権突出、戦争体制構築という、恐るべき内容がふんだんに盛り込まれている。憲法の安易な改変を絶対に許してはならないが、参院選の結果によっては、恐るべき事態が発生することになる。
地震国日本での原発稼働がいかに危険であるかをすべての日本国民に知らしめたのが3.11原発事故である。この教訓をないがしろにする政策方針を許してよいのか。
TPPは日本国民ではなく、外国資本に利益を供与する仕組みである。日本農業が外国資本に支配され、国民医療に経済格差が持ち込まれ、生活者に優しい共済制度が破壊される。この巨大リスクを現実化させることがほぼ確実なTPPに日本が参加することは、主権者国民に対する背信行為である。
野田佳彦氏が変節する前に叫んでいたシロアリ退治=官僚利権の根絶は、今や、議論そのものがかき消されている。このまま進めば、日本は外資のハゲタカ、官僚のシロアリ、強欲資本主義者のハイエナに食い荒らされてしまうことになる。
そして、日米同盟の名の下で、日本が戦争を遂行する体制を整えれば、日本は米国が主導する侵略戦争に自動的に加担させられてしまうことになる。また、日米軍事同盟への固執が日本を戦場とする戦争勃発という代償をもたらす可能性もあるだろう。
憲法改悪・原発再稼働・TPP参加・消費税増税・インフレ誘導・官僚利権擁護・戦争遂行に反対する政治勢力の拡大を実現させなければ、日本は本当に危うい。
(了)
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