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2013年7月 5日 神州の泉
経済・政治学者の植草一秀氏がアベノミクスを批判した『日本を融解させる7つの大罪 アベノリスク』(講談社)を緊急出版された。これは経済のみならず安倍政権が推進する政策の本質がよく出ているので、多くの人が読むべき本である。
おもしろいことは、七つの各章が新約聖書の最終巻、ヨハネの黙示録に出ている、世界の終末と言われる神秘的な七つの開示を凝らして配列されていることである。
ヨハネの黙示録の七つの封印、七つのラッパとは、罪深い人類への最終的な裁きが世界の終末というありさまで出てくる様相が、孤島でヨハネが受けた啓示をもとに幻視的な表現で描かれたものだ。
多くの象徴が散りばめられているので、難解な文学的表記とされているが、キリスト教原理主義あるいは根本主義者(ファンダメンタリスト)は、文字通り本気でこの七つの終末開示記述を現実の予言だと信じている。
黙示録の七つの封印、七つのラッパ、天使が傾ける七つの鉢(はち)とは、聖書的に見れば人類の末期症状時代、艱難(かんなん)時代を表すものであり、非聖書圏の人間でも“世の末”、仏教徒では“末法時代”と呼ばれるものである。
黙示録によれば、人類の終末様相は七つの段階で進んでいくとある。一方、キリスト教には人の欲望を戒めるものとして“七つの大罪”がある。傲慢 、嫉妬 、憤怒 、怠惰、強欲、暴食 、色欲である。
これはブラッド・ピットの主演でハリウッド映画にもなっているが、植草氏の新著「アベノリスク」はこの七つの大罪を凝らして章割りができている。だが、著者の意図としては、安倍晋三政権が内包する七つの大罪が、上記に書いた終末時に七つの封印が解かれるありさまと捉えても分かりやすいと思う。
植草氏が安倍政権の本質を七つの大罪、七つの終末開示という意味を込めて配置した各章は以下である。
○アベノリスク第1の罪 引き起こされるインフレ
○アベノリスク第2の罪 大増税大不況 繰り返される3度目の悪夢
○アベノリスク第3の罪 TPP 失われる主権
○アベノリスク第4の罪 活断層の上の原発再稼働
○アベノリスク第5の罪 シロアリ官僚に食い尽くされる
○アベノリスク第6の罪 改変される憲法
○アベノリスク第7の罪 創作される戦争
植草一秀氏が提起するこれらの七つの大罪は、国民が手をこまねいていると、文字通り日本終末の黙示録となっている。
7月4日に参院選が公示され、各マスコミは選挙の争点を一様に“景気”一点張りで報道しているが、本当の争点は植草氏が本書で書かれた、安倍政権が内包する七つの内容にある。
マスコミや政府は国民からこの真実を覆い隠し、皮相的な株価上昇や雇用上昇にのみ焦点を当てて、安倍政権の本当の危険を覆い隠すことに腐心している。
もっとも政府やマスコミが真実を隠して米官業利権複合体に都合の良い方向に持って行く形は小泉政権以降、常套手段となってしまったが。
小泉政権時にりそなインサイダー疑惑を暴いた植草氏の慧眼は、全く衰えることを知らず、本書でも存分に安倍政権の危険な本質を具体的に暴く。
アメリカ発の市場原理至上主義に極端に傾倒し、年次改革要望書を指針とした小泉政権の悪夢は、格差社会の固定化や国民生活を逼迫させ、人々を奈落のどん底に引き落とした。
これに懲りて国民は2009年に民主党に政権を与え、生活の回復を期待した。ところが、民主党はこれを裏切り、時計の針のように小泉・竹中構造改革路線に回帰する方向性を持った。しかも野田政権は国民が望まない消費税大増税法案を強行成立させ、TPP参加ありきという大暴政を行った。
これを見た国民は再び反国民的な政権与党に絶望し、選挙意欲を喪失した国民投票の結果、政権は再び自民党の手に戻った。ところが、安倍自民党も鮮明に小泉・竹中構造改革路線に回帰し、あろうことか、亡国のTPP交渉に参加表明し、グローバル資本に日本略奪の道を開いた。
植草氏はこの本で、自分が旧大蔵省(財務省)に在籍していた経験をもとに、財務省と日銀の確執、財務省の支配体質、TPR(タックスのPR作戦)など、いろいろ重要なことを書かれているが、全体としては安倍政権が有している危険な方向性をあますことろなく描いている。
安倍政権の危険性は本書各章のタイトルを見れば一目瞭然であるが、これらを鋭く分かりやすく説明する植草氏の洞察は必見である。
全ての章が、日本崩壊に直結するリスクを説明しているが、神州の泉は第3の罪「TPP失われる主権」にもっとも危機感を抱いている。
本音を言えば、神州の泉は、安倍政権が目論む憲法改正も、広義の意味ではその最終目的がTPPに日本を引きずり込んだ後、戦争経済というショックドクトリンに日本を参加させることと、基本的人権を圧迫することによって、国際金融資本の蹂躙に対して国民がものを言えなくなる環境造りであると確信している。
第3の罪「TPP失われる主権」で植草氏が語ることは、まったく神州の泉が思っていたことと合致する。やはり小泉政権を一歩も引かすに糾弾し続けた男の安倍政権批判は飛び抜けている。
植草氏が本書で黙視的な開示になぞらえて語った安倍政権の本質は、今、国民が最も知るべきことであり、これを知ることと知らないでいることは、参院選後の抵抗運動に大きな影響を与えてくる。
参院選後に地獄が到来しても、その地獄の内実を知っておくことは、そこから這いあがるエネルギーを与えてくれる。本書は迷うことなくその地獄の意味を知らせてくれる案内書となっている。
以上簡単な書評であるが、この書物に書かれてあることを知らずして、安倍政権とマスコミに騙されたまま生きて行くことは国民の本懐ではない。是非とも植草一秀氏の「アベノリスク」を手に取ってご覧になっていただきたい。
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