13. 2013年7月06日 10:32:25
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2013/07/01 「日米同盟をおろそかにする総理は生き残れない」「歴史問題には『ノーコメント』で十分」 CIA協力者として知られるカーティス教授、参院選直前にあからさまな脅し 〜FCCJ主催 記者会見 「安倍総理の歴史認識をめぐる発言は米国との緊張関係につながる」――。知日派のジェラルド・カーティス氏は、安倍総理の歴史問題への対応に苦言を呈した。 2013年7月1日(月)13時より、東京・有楽町で日本外国特派員協会主催「ジェラルド・カーティス コロンビア大学政治学教授&中野晃一 上智大学教授 記者会見」が行われた。会見はすべて英語で行われた。 カーティス氏は、日本の選挙・政治の研究者であり、自民党政権時代より、「歴代首相の指南役」などとして知られる人物。同時に、米国で日本の官僚や政治家の留学生を受入れる際の、水先案内人、つなぎ役として世話をしてきたといわれ、小泉進次郎衆議院議員(自民党)をコロンビア大学で教えたのもカーティス氏である。 □主催 日本外国特派員協会 (FCCJ) (詳細、英語) 掲載期間終了後は、会員限定記事となります。 会見は全編英語となっております。記事後半に質疑やり取りの邦訳を加えました。 また、CIAの上級オフィサーだったロバート・クロウリーが残した「クロウリー・ファイル」に、船橋洋一氏(元朝日新聞主筆)と共に、CIAの情報提供者(インフォーマント)として名を連ねている。 〖クロウリー・ファイル http://cryptome.org/cia-2619.htm 〗 会見では始めに、中野氏により、今月行われる参議院選挙の結果予測が示された。直近の衆議院選挙や東京都議会選挙での投票率が大きく低迷したことから、おそらく参議院選挙でも投票率は同様の傾向を見せるだろうと述べた。自民党への投票率も、それぞれ全有権者の16%、15.4%と低迷しており、議席数における地滑り的勝利にもかかわらず、自民党の支持基盤はそれほど強いわけではないと指摘した。 今回の参議院選挙では、自民党は改選議席121のうち、72議席以上で単独過半数、53議席以上で公明党との連立過半数を獲得する見込みであると分析。自民党は比例代表(改選48議席)で14から18議席、小選挙区(改選73議席)で57から66議席を獲得するだろうと予測した。 続いて、カーティス氏により、参院選後の見通しについての分析が行われた。第一に、直近の東京都議会選挙は、2つの点で日本の政治制度の病が明白になった選挙だったと述べた。 第1点は、事実上野党勢力の崩壊であり、戦後初めて、自民党に対抗できる野党がいないという状況だということである。民主党の人気が下がり、維新の会代表の橋下氏が政治的自殺行為を行ったことを考えれば、自民党の大勝利は驚くことではないが、自民党と公明党の候補者全員が当選するという事態は、競争原理が働いていないということであり、健全な政治制度ではないと述べた。 第2点は、投票率が前回よりも10ポイント以上下がったということである。そのため、自民党は投票獲得数が減少したにもかかわらず、全員が当選するという結果になった。以上の2点から、都議選での自民党の大勝は、アベノミクスへの熱狂的な期待による自民党への強い支持と、政治が国民の要求に応えていないという国民感情が入り混じった結果であると評価した。 参議院選挙については、これまでのどの選挙よりも予測が簡単であり、政権を担うような支持を得ている野党は一つもないことから、自民党の大勝利以外にはあり得ないと主張した。自民党と公明党で、非改選議席は併せて59議席であり、過半数獲得には63議席以上必要であるが、公明党の11候補者はおそらくほぼ全員当選するので、自民党は53議席程度獲得すればよく、それは容易に達成できるだろうと解説した。 一方、憲法改正に必要な3分の2以上の議席を獲得できるかどうかに関しては、自民党の候補者78人、公明党の候補者11人が全員当選したとしても、非改選議席と併せて148議席にしかならず、3分の2である162議席には届かないので不可能であると分析。同じく改憲推進の維新の会はおそらく大敗するだろうから、3分の2の獲得は問題とならないと指摘した。 (*注) 今回の参院選には、公明党は21名(選挙区4名、比例17名)の候補者を選出しており(【2013参院選 党派別立候補者数】 http://senkyo.mainichi.jp/2013san/)、カーティス氏の述べている「11人」というのは、氏の勘違いであると思われる。よって、カーティス氏の選挙予測は、前提条件に誤りがあることを指摘しておく。 参院選後の見通しについては、第一に連立与党の勝利によってねじれ国会が解消され、安倍総理は気分を良くするだろうが、彼が望んでいる改憲や戦後レジームの脱却はすぐにはできないだろうと語った。 改憲に対しては、議員や国民の過半数が賛同するだろうが、実際に何を改正するのかについてはコンセンサスがないと指摘。96条の改正という最初のステップでさえ、それによって何を改正したいのかが明確にならなければ、国民的合意は得られないだろうと述べた。加えて、参議院で3分の2の過半数を獲得していないことから、次の参議院選挙までの3年間は改憲の発動も不可能だろうと解説した。それでも改憲に邁進し、経済政策から目を離すようなことがあれば、アベノミクスへの熱狂は蒸発するだろうと述べた。 一方、集団的自衛権に関しては、安倍総理はこの秋にも、権利行使を可能にするような憲法9条の再解釈を発表するかもしれないと述べた。そうなれば、日米安保条約も改訂すべきだという反応が出てくるかもしれないと予測した。 最後に経済政策に関して、自民党議員や浜田宏一氏のようなリフレ派経済学者の中には、景気回復の腰を折り、党への支持を失うことになりかねない増税を延期すべきという声が強い一方、増税しなければ市場は財務規律を放棄したと見るだろうと指摘。10兆円の補正予算やインフレターゲットによる名目成長率の増加を受けて、安倍総理は間違いなく消費税を上げるだろうと予測した。 最も重要なのは、安倍総理がいわゆる「第三の矢」で実際にどのような政策を打ち出すかという点であると強調した。諮問委員会やスタディーグループを作ることに大胆であることと、実際に大胆な政策を打ち出すことは違うことであり、9月10月に実際に政策が出せなければ、アベノミクスへの批判が高まるだろうと予測。今こそ政治的に痛みを伴う政策を進める時だと主張した。 講演終了後、質疑応答が行われたが、その内容を以下に掲載する。なお、当日の講演および質疑応答はすべて英語で行われたが、主催側の意向により、同時通訳音声の収録ができないため、IWJによって日本語に意訳したものを掲載する。当日の同時通訳の内容と必ずしも一致しないことを、あらかじめご了承願いたい。(IWJ野村佳男・佐々木隼也) (以下質疑やり取り) ———————————————————— 質問者「フリーランス記者のクロウェルと申します。先週、安倍総理はロンドンでの講演の中で、金融関係者たちに向かって『第3の矢をしっかりやっていく』という趣旨の発言がありました。自民党内部の反対も強いと思うのですが、安倍総理にはそれを遂行するだけの政治的資本があるしょうか」 中野氏「もし我々が出した予測が現実になったとしたら、安倍政権にとっては良くもあり悪くもあるということになろうと思います。両議院で大多数の議席を取るということは、党の規律という意味では必ずしも良いニュースとは言えないこともあります。各議員からさまざまな要求が出てきて、時間がなくなってしまうということが不可避になります。安倍総理は憲法改正に意欲的ですし、個人的には教科書問題など、彼の教育改革により注目しています。政府が各方面から足を引っ張られるということもあるかもしれません。安倍総理がコントロールし続けられるかどうかはわかりません。 現在自民党は、参議院選挙に勝利することを目指して、非常にまとまっている状態です。2007年でのねじれ国会のトラウマが強烈にあるので、それを解消することを、昨年の衆議院選挙以来の大きなゴールとしています。それが過ぎれば、向こう3年間選挙はありませんので、党の規律が容易に緩んでしまうことにつながります。選挙に大勝すれば、安倍総理は自身の戦略に自信を強めるでしょうが、それがいつまで続くのか、注意をする必要があります。私はあまり楽観的には見ていません」 カーティス氏「私は、安倍総理は大きな政治的資本を持っていると思います。党内部の反発がより大きくなる可能性はあるのは事実ですが、他に行く場所はないのです。今の自民党には安倍氏に取って変わるリーダーはいません。今後2・3年間、政権を取る側のリーダーについていきたいと思いますよね。もちろん各利権を代表している政治家の問題はあるでしょうが、私はそれが大きな問題になるとは思っていません。 むしろ大きな問題は、市場が第3の矢で安倍総理に期待しているような経済改革を、彼自身が本当に信じているかということです。そうだという証拠はないのです。彼は小泉氏ではありません。安倍氏も改革を口にしていますが、私の見方では、安倍氏の経済に対する考え方は、より古い自民党の、国家主導の経済成長戦略です。昔の経産省の戦略のようです。官邸内にいる安倍氏の主要なアドバイザーの大半は、経産省から来ている人たちです。 産業競争力会議の中でも、意見が大きく割れています。一方のグループは、竹中平蔵氏やローソンの新浪氏、楽天の三木谷氏など、自由市場による経済改革推進者たち。彼らは政府による経済活動の関与を排除しようという立場です。しかし、委員の過半数は、より経産省に近い考え方を持った人たちです。政府が勝ち組企業を選別し、企業に必要な改革を主導するべきという立場です。 現在安倍総理は、その中間地点に立っています。特に竹中や三木谷、新浪氏たちは、産業競争力会議による重要な提言が実行されないことに、強いフラストレーションを持っています。安倍総理は、自由市場の経済改革者の方に行くのか、古い産業政策派の方に行くのか。おそらく彼は、両方を折衷するようなやり方を取ると思いますが、もしそうなったらうまくいかないと思います。彼の個人的傾向としては、自由市場の小泉スタイルではなく、古い産業政策の方に向かうと思います。 特に海外の有識者たちは、安倍氏は小泉純一郎の新バージョンではないと理解しています。経済に関する考え方において、安倍晋三は小泉氏とは違うのです」 質問者「シンガポール・ビジネス・タイムスのアンソニー・ローリーと申します。参院選後の民主党はどうなると思いますか。党が分裂して、何人かのメンバーが自民党に入る可能性もあると思いますが、そうなると憲法改正に必要な人数という計算も変わってきます。あと、小沢一郎氏についての言及がありませんでしたが、彼の政治生命は終わったと考えていらっしゃいますか。彼には反対の立場ですか」 カーティス氏「参院選後に、民主党の分裂はあり得ると思います。しかし、彼らが自民党に入ることはできないと思います。なぜなら、必要とされていないからです。自民党はすでに大きな党です。どうして、さらに人を入れる必要があるでしょうか。特に、民主党で重要ポストについている人たちは、なおさら必要ないでしょう。自民党は、もう十分な議席を獲得しています。ですから、民主党は分裂せずに、小さな政党として生き残ろうとするかもしれません。 もちろん、民主党の保守派の人たちで、改憲に賛同する人たちはいます。しかし、改憲自体には賛同していても、安倍総理の改憲案には賛同していません。ですから、改憲という点に関して、それは起こらないと思います。 小沢一郎氏については、言及する必要もないでしょう。彼は終わりました」 中野氏「民主党は、この先大きな困難が待ち受けているでしょう。選挙では、20議席程度と大敗する可能性もあります。もしそうなれば、海江田氏の辞任にもつながり、誰を後任者にするか難しい選択となると思います。前原氏のようなリーダーが、今こそやろうとするか、待った方がいいと判断するか、あるいは新党を結成するか。選挙で大敗したとしても、党を引っ張る積極的な後継者は出てこないでしょう。 ですから、多くの民主党員が、何か違う形で、別の党に入党したりして、新しいキャリアを始めようとする可能性はあります。民主党のイメージは大きく毀損してしまいました。民主党は分裂するかもしれません。しかし安倍氏やその周辺は、民主党のような競合勢力からの入党を排除するよう働きかけるでしょう。 小沢氏は、現在非常に脆弱であるように見えます。あまり希望があるようには思えません。政治的な死亡記事を出すのは早計だと思いますので、彼を完全に見限ることはしませんが、選挙後に彼が生き残ることには多くの困難があるでしょう」 質問者「ファイナンシャル・タイムズのジョナサン・ソーベルです。4年前に民主党が政権を取ったとき、新しい政府の誕生というだけではなく、二大政党による新しい時代の幕開けだと言う議論がありました。今日の講演では、野党の完全崩壊という話がありましたが、同時に自民党の支持基盤の弱体化という話も聞きました。根本的な政治制度の変容に関する、長期的なトレンドや議論はどのようになっているのでしょうか。一党独裁ではない、複数の党による競争力のある選挙が行われるような制度を作るという改革は、これで終わったのでしょうか」 カーティス氏「1990年のはじめに、選挙改革を訴える人々は、イギリスやアメリカのような二大政党制が普通の国の選挙であると主張しました。そこで、日本でも、小選挙区制が導入され、社民党や公明党に沿うために比例代表制も少しばかり残すことで、現在の形となりました。 大きな問題は、日本は二大政党制と相容れるような社会構造になっていないということです。例えばアメリカでは、一方に民主党を支持する特定の社会的な連携があり、共和党にもそのような社会的連携があり、そして浮動票層や不満分子がいて、競争原理が働いています。しかし、日本ではそれは当てはまりません。そのような社会的特権がありません。 ですから、民主党がやってきて違うことをやると言っても、結局自民党のようになってしまいました。彼らは自滅しましたが、それは仕方がないことなのです。二大政党制は、日本では決してうまくいかないと思います。イギリスやアメリカの政治文化を日本の政治文化に植えても、安定したシステムにはならないのです。日本にはそのような基盤がないからです。 私は、安倍総理は根本的な選挙制度改革に乗り気だとは思っていません。なぜなら、もし彼が本気なら、昔のような中選挙区制度に戻る方向になるとわかっているからです。あるいは、緩やかな複数政党制にして、白か黒かではなく、グレーの中から選ぶような制度です。この国では、政治について、白か黒かという選択をしません。 選挙制度が変わらない限り、私にはどう解決したらよいかわかりませんし、選挙制度は変わらないと思います。自民党を含むどの政党に聞いても、大半は「昔の制度をなくしてしまったのは、大きな間違いだった。前のやり方に戻すべきだ」と言いますが、彼らは現行の制度で選ばれた人たちです。議席を失うかもしれないような制度変更を進めるリスクは取らないでしょう。ですから、今後も長期間、このような政党の病は続くと思います」 中野氏「アメリカやイギリスで見られる社会層や民族性がベースとなる投票というのは、日本のケースには当てはまらないという点は同意します。難しいのは、以前の選挙制度では、自民党による一党独裁が続き、政権を取るに必要な指針のない状態だったということです。民主党もまた、改革路線でありながら、同時に所得分配政策をしたりして、政策の一貫性がありませんでした。政策一貫性のなさは、自民党に対しては見過ごされていますが、民主党は懲罰を受けています。ですから、そのようなやり方はうまくいかないでしょう。 政治制度や選挙制度を一から作ることはできません。すでに出来上がった制度で対処するしかありません。明確な二大政党制を作るという試みは、大変難しいでしょう」 カーティス氏「一つ加えたいと思います。政党選挙の潜在的な不安定さは、とても大きいと思います。今は、安倍総理は勝ち誇り、自民党も強いですが、しかしそれは経済政策が成功するという期待があるからです。もし失敗したら、投票選好において再び大きな揺り動きがあるでしょう。それで、また新しい政党が出て来るかもしれませんが、それも長続きしないでしょう。これは、安定的なシステムではありません。今は安定していますが、それは政策への期待のおかげであって、システムとしては安定していません。潜在的に非常に不安定です。その原因の多くは、選挙制度自体にあると思います」 質問者「ロイターのアラン・チャウダーです。原子力政策に関してですが、読売新聞によると、自民党は原発維持を推進する唯一の政党ですが、前回の選挙でも争点にならず、今回の選挙でも争点になりそうにありません。国民の過半数は原発に反対していますが、このような食い違いはどのように説明できるのでしょう」 中野氏「世論調査やパブリックコメントなどに現れている国民の意志と、自民党が政権を奪回してより強力になっているという事実には、確かにギャップがあります。自民党は昨年の12月に政権に戻りましたが、今は躊躇なく原発再稼働という本当の意図をあらわにしているようです。その理由は、これまでもそうでしたが、電力会社のロビー活動が強大で、メディアにもそれを支える人々がたくさんいます。古いやり方に戻っているということです。それが大きな第一点です。 さらに、野党勢力が分裂していて、原発反対を理由に自民党に投票したくない人々に対して、効果的な代案を示すことができていません。参議院選後は、より大胆な再稼働の方向に向かうでしょう。政治的エリートと国民の視点に大きな乖離があることが原因だと思います」 カーティス氏「反対がどの程度強いのかという問題だと思います。原発再稼働への国民の反対は多いですが、その反対はどのくらい強いのでしょうか。明らかに、どんな他の問題よりも強いというわけではありません。経済成長への関心が、最も強いのです。ですから、自民党が経済政策でうまくやるという期待がある限りは、支持され続けるでしょう。 しかし、来年中に2・3機程度の原発が再稼働したとしても、無いに等しいと言えます。現実は、福島の事故の前には、日本には54機の原発があったのです。今稼働しているのは1・2機ですが、一年後に4から5機になったとして、そのこと自身が信じられないくらいです。 自民党がいわゆる『(原発)ゼロオプション』に反対する唯一の政党だとしても、国民は反対意見を表明する機会を見出すでしょう。原発再稼働を阻止する方法はあります。民主党が達成したことの一つは、経産省から独立した機関として、原子力規制庁を創設したことです。彼らは再稼働を許容するのにより厳しい姿勢を見せています。 日本はこの先、大きなエネルギー問題を抱えていると思います。ですから、東京とモスクワの間での北方領土問題に注目して欲しいと思います。日本が抱える3つの領土問題の中で、それだけが解決の糸口のある問題です。それには2つの理由があります。一つは、エネルギー。もう一つは、中国に対抗するための地政学的バランスです。副大臣レベルでの交渉が行われる予定です。プーチン氏も、この問題を解決することに関心があるようです。 『ニクソンが中国に(Nixon Goes to China)』現象と同じように、安倍総理でなければこれを成功させることはできないでしょう。彼ならば、北方領土について妥協点を探ることができるでしょう。民主党政権ではまず無理だったと思います。1956年以来の問題ですが、問題は2島プラスアルファを獲得することであり、合意に至るためには何がアルファになるかということです。不可能なことではありません。」 質問者「ドイツのフリーランス記者の?(聞き取り不可能)と申します。日本では『緑の党』のような草の根政党は、まだ議員を国会に送り出せていません。なぜならば、それにはお金がかかるからです。そのようなシステムを変える必要があると思いませんか」 中野氏「私も同感です。新政党が政治レースに参加することが難しい理由として、お金だけではなく、キャンペーン活動に関するさまざまな規制があることも理由として上げられます。候補者擁立のために、とてつもなく高い供託金を払う制度もあります。国家管理社会の制度だと思います。日本のプロセスの近代化が今後も必要でしょう。民主党が政権で失敗した一つの理由は、長年自民党に適用されていた制度を民主党も踏襲したからです。自民党に有利な制度で、それ以外には不利になるような制度ですが、それを変えるのは非常に難しいわけです。 しかし、先ほどの話に戻りますが、選挙制度を変えるのは容易ではありません。現職議員には既得権家があり、現行の制度の下で選ばれているので、選挙制度を変えることには消極的です。革命のような社会運動の高まりが必要になるでしょう」 質問者「ドイツのフリーランス記者の?(聞き取り不可能)です。共産党が唯一の一貫した原発反対政党ですが、他にも菅直人氏のような中心となる人物もいます。最近、菅氏に話を聞く機会はありましたか。自民党や共産党以外の選択肢として、彼のような人が世論の広い支持を受けることはあると思いますか」 中野氏「彼がまだカムバックを果たそうとしていることには多少驚きがあるのですが、おそらく『安倍総理がカムバックできたのだから、私もそうしたい』と思っているのでしょう。もちろんそれに値すればですが。私自身は、多分カーティス氏よりも、安倍総理が今後も安定して政権を握るかに関して若干疑問を持っているのですが、それは麻生氏も総理にカムバックしたいと思っているだろうからです。安倍総理には健康上の問題もありますし。 菅氏は今なお政治に関心がありますし、半分リタイアした政治家ではありません。しかし、彼には敵もたくさんいると思います。原発問題に関しても、例えば共産党は、日本政府が東南アジアに原発輸出を促進しようと決めたのは当時総理だった菅氏だと主張し、菅氏の原発反対の姿勢は人気取りだと批判しています。彼は政治的な才能や知名度はあると思いますが、敵も多いのです。彼の総理としての評価は、海外からはより高い評価を受けていますが、日本では政治的な理由で評価が大変低いです」 カーティス氏「彼がどれだけ脱原発を信じていても、政治的影響力を取り戻して、重要な役割を果たすことはないと思います。前回の衆議院選挙でも何とか生き延びたという結果でした。菅氏には確固たる支持はありません」 質問者「デュナ・サリーと申します。東京都議選での共産党の躍進と、次の選挙でも共産党が票を伸ばすだろうというお話がありましたが、共産党は今後どのように発展すると思いますか。党名を『元共産党』と改名したら、現在のカルト的集団から、もっと発展するチャンスがあると思いますか」 カーティス氏「共産党は戦前から存続する唯一の政党で、故に国民の少数の層には深く根付いています。公明党が多くの候補者を擁立しないという話をしましたが、同じようなことがおそらく共産党にも言えると思います。党の改名の話も長年出ていることですが、決して変えようとしません。多くの問題について、彼らの提言は筋が通っていますし、多くの人もそう感じていると思いますが、彼らに政権を取って欲しいと思いますか。それは勘弁願いたいというのは、国民の大半の意見だと思いますし、それは変わらないでしょう」 質問者「ドイツのスードイチェ・ツァイト紙です。カーティス氏は、2009年の選挙の後、民主党は早期に解散総選挙をするほど間抜けではないとおっしゃいましたが、彼らは実際そうしました。もし、自民党の4年間の任期を全うできないとしたら、どんな状況だと思いますか。アベノミクスがクラッシュするとか、日本国債が崩壊するとか、自民党内部にも安倍総理の座を狙う人がたくさんいると思いますが」 カーティス氏「その質問をしていただいて感謝します。前回私は、『民主党は間抜けではない』という、間抜けな予言をしてしまいました。誰が間抜けなのかわからなくなってしまいますが、私も若干居心地が良くないですね。 野田氏が安倍氏と選挙制度改革と引き換えに解散総選挙に合意しましたが、『ちょっと待て。これは政治だ。政策は選挙制度だけではないだろう』という声がありました。しかし、野田氏は合意を守ることを尊重しました。彼は国会で、『騙す方の責任か、騙される方の責任か』という、現実の世界とは思えない、聞くに堪え難い発言をしました。言い換えれば、『合意を持ち出した安倍氏を責めるのか、正直に約束を果たした私を責めるのか』と。責任は野田氏にあることは明らかです。どうせ選挙で負けるとわかっているのだから、これ以上総理の座にいるのは苦痛だと思って、早期解散したのかもしれませんが。 しかし自民党に関しては、今後数年間政権を維持する可能性は高いと思います。しかし、2つの大きな疑問符がつきます。一つ目は総理の健康問題です。彼はすでに13か国を訪問し、総理就任以来3日しか休暇を取っていないと言われます。土日も仕事をし、早朝や夜中にも人に会い、信じられないペースで働いています。彼はアドレナリンで動くタイプですが、彼の健康がどれほど持つのか。薬のおかげで慢性的な胃腸の具合は管理できていますが、無理し過ぎているという気がします。それが一つ目の大きな疑問符です。 あと、もう二つ疑問符がつきますね。一つは、日本経済に何か起こったらどうなるのか。今年いっぱいは、良い状態が続くと思います。良好な第4四半期となり、来春に消費税増税が実施されるとして、その後どうなるのか。来年になって、成長戦略はあまり効果が見えずに、日経平均株価もそれを反映するようになった場合、どうなるのか。来年の夏、政権誕生から18ヶ月くらい経った時点で、状況があまり芳しくなかったら、どうなるのか。それが二つ目の疑問符です。 そして三つ目は、歴史問題や外交問題です。もし彼が、いわゆる歴史問題について、より多くを発言すれば、韓国や中国との関係をさらに悪化させるだけではなく、アメリカとの緊張関係にもつながります。日米同盟をうまく管理できないと日本国民から判断されれば、どんな総理も生き残れないと、私は信じています。 安倍氏が日米関係をうまく管理できないだろうと予測しているわけではありません。しかし、安倍氏は実務的でリアリストとしての『頭』と、感情的で自国に対するプライドを持つ『心』との間で内面的な葛藤があると、私は見ています。頭がコントロールしているうちは、大丈夫でしょう。このことは彼も理解しています。しかし、もし誰かが慰安婦や河野談話のような問題を質問して、彼が心で思っていることを発言してしまうと、大きな問題になってしまいます。 ですから、この問題が今後も存続する可能性を排除しません。アジア隣国との問題だけではなく、アメリカにとっても神経を尖らす問題です。歴史問題、特に慰安婦問題は、日本に対して大変強いネガティブなイメージを喚起します。安倍総理がそのことを理解して、思いを自分の中だけにとどめてくれることを願います。私の意見では、総理として歴史問題に答える際には、『ノーコメント』という二語で十分です。政権を離れた後に語れば良いのです」 中野氏「彼は『ノーコメント』以上に話したがるだろうと思いますが、カーティス氏が指摘したように、それは大きな問題となるでしょう。安倍氏が政権について以来、アメリカ政府の焦りは明白で、これまで以上に右傾化することは許容しないというシグナルを送ってきています。侵略の定義や慰安婦証言の信憑性に対する疑問というのは、橋下(大阪市長)に始まったことではなく、安倍氏から始まったことであり、橋下氏は単にそれを追いかけただけということも、アメリカはわかっています。 しかし、参院選が大勝利に終われば、安倍氏は政治家としてのスタンスに承認が与えられたと考えて、自分の主張を話したがるようになると思います」 ☮http://iwj.co.jp/wj/open/archives/87931 |