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2013/7/3 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
この政策は今まで2カ月間で成功しているのか
映画監督の富田克也氏が先月28日、朝日新聞のオピニオン欄に登場。アベノミクスの真相を鋭くえぐっていた。
富田氏といえば、2年前、出身地の甲府を舞台に、不況と空洞化が進む地方都市の現状をドキュメンタリー風に撮った。ロケ地はかつて“銀座”と呼ばれた甲府駅前商店街だ。カメラはシャッター街を追いかけた。
朝日の記者と再びロケ地を訪れた富田氏は「バブルがはじけ、シャッター街になって、すべてを失ってしまったんじゃないか。ここに立つと、そんな感覚を強烈に覚えます」と語っていた。映画に出てきた人々もアベノミクスについて語っていた。
「ここにアベノミクスの効果なんてないですよ」
「298円のお弁当が売れる。自分で防衛しながら、穏やかに暮らすのが庶民。株価で一喜一憂する世界とは関係ありません」
「良すぎる暮らしをしている奴らがまだ不満で、もっと欲しいっていうのがアベノミクスでしょ」
多くの庶民は、「その通りだ!」と膝を打ったのではないか。
新聞をめくると「アベノミクス」礼賛報道があふれている。安倍政権応援団の読売、日経、産経を筆頭に、6月の日銀短観が7四半期ぶりにプラスとなったことを、〈景気、自律回復へ一歩〉〈景況感改善 円安が効果〉とデカデカはやしたてていた。路線価が下げ止まったのを受け、NHKまでもが「サラリーマンにも不動産投資熱」と煽っていたが、あまりに庶民感覚とズレている。
富田監督が撮った甲府市に代表されるように、地方都市の疲弊は極限に達しているし、短観では中小の製造業の業況感は軒並みマイナス20〜30弱だ。円安の恩恵はなく、むしろ円安による原材料高で採算は悪化し、しかし、それを価格に転嫁できないから、日増しに経営は厳しくなっている。
「JRの駅前商店街の客は増えず、地方都市の経済はまったく良くなっていません。アベノミクスというのは、『大』が優位に立ち『小』は衰退する政策で、すべてにおいて格差が広がり『中間』がなくなるのです。そうした構造変化になぜ、メディアは目を向けないのか。あえて見ぬフリをしているかのようです」(経済ジャーナリスト・有森隆氏)
大マスコミがどんなに景気回復を宣伝しても、庶民はドッチラケではないか。「どこの国の話だ?」が現実なのだ。
◆庶民はアベノミクス批判本で自己防衛
その証拠に、書店ではアベノミクスのモロさ、副作用、危険性を指摘する本が売れている。藻谷浩介氏や河野龍太郎氏らエコノミストの対談本である「金融緩和の罠」(集英社新書)は読み応えがあるし、同志社大・浜矩子教授の「『アベノミクス』の真相」(中経出版)は書店のベストセラーランク1位になり、6万部を突破したという。6月末には立命館大の高橋伸彰教授と日大の水野和夫教授による「アベノミクスは何をもたらすか」(岩波書店)という対談本も出版され、これも注目を集めている。
ちょっと触りを紹介すると、
〈お金の信用は国債の実質価値によってささえられている。金融緩和が危険なのは、その円の信用を担保としてさしだして日本経済を水ぶくれさせようとするからである〉(「金融緩和の罠」)
〈チーム・アベは、自らバズーカで打ち放ったカネを、自らの誘い水で「投機市場」に呼び込もうとしている。要は、日銀が「バブル製造装置」と化すということである〉(「『アベノミクス』の真相」)
〈アベノミクスが目指す日本経済の再生が金融化された資本主義の暴走に拍車をかけ、経済社会をますます不安定化させるのではないかと懸念する〉(「アベノミクスは何をもたらすか」)
いずれも、「アベノミクスは株価を上げるだけのバブル狙いの政策に過ぎない」と指摘している。つまり“幻想”期待だけを膨らませるマジックだ。庶民がこうした本を求めるのは、アベノミクスの怪しさを肌で感じとっているからだろう。聞こえのいい言葉や数字には騙されないぞ――。そのための自己防衛だから、こうした本を読む。その裏には強烈な大マスコミ不信が見え隠れする。
◆中小企業は円安のコスト高を価格転嫁できない
実際、黒田日銀のバズーカ砲から2カ月が経ったが、その成果はグラグラだ。
株価や為替が乱高下し、長期金利が上昇したことだけではない。大企業が潤った円安も中小企業にとっては原材料価格やエネルギーの高騰によるコスト高にしかならなかった。
「日本の労働人口の7割は中小企業に勤めているのです。中小企業の賃金が上がらなければ、消費が回復するわけありません。上場企業はアベノミクスによって円高が是正され、株価の上昇で含み益も出ている。しかし中小はコスト上昇を価格に転嫁できずアップアップです。百貨店は高額品が売れて潤っているが、日用品を売るスーパーは価格競争がますます激化している。アベノミクスによって二極化が広がっているのです」(東京商工リサーチ情報本部長・友田信男氏)
安倍政権は消費者物価指数が上がったことをとらえて「デフレ脱却」と胸を張るが、エネルギー高騰を除けばマイナスだ。
賃金上昇で、内需が活発化したことによる物価高とは程遠い。それどころか、電気代の値上げは、ますます庶民のサイフのひもを固くする。安倍政権は、実質成長2%を目標にして、アノ手コノ手だが、夢物語なのである。
◆閉塞感をカネの魔力で封じ込める安倍政権
それなのに、なぜ安倍は「成果」に胸を張り、大マスコミはそれを礼賛するのか。「参院選に勝利するためのお化粧」であるのは言うまでもないが、前出の富田監督はユニークな見方をしていた。
「社会を変える意識をカネの魔力で封じ込めよう、というのがアベノミクスじゃありませんか」と言うのである。
財政赤字が膨らみ、公共事業で地方をテコ入れすることもできなくなった。もはや官僚は頼みにならないし、そこに3・11の大震災と原発事故が重なった。
それでなくても、少子高齢化で先細りの日本である。誰の目にも閉塞状況は歴然なのだが、民衆の不安や不満、イラ立ちが爆発すると政権は困る。だからカネの魔力で封じ込める。そういうことだ。
アベノミクスで放たれた20兆円のバラマキ、防災を建前にした国土強靭化、異次元緩和で吊り上げた株価と、どれもこれも専門家に言わせれば禁じ手だ。それを総動員したのはまさしく、国民の不安、不満をカネの魔力と幻想でガス抜きさせる狙いが見える。株が上がったところで、少子高齢化は変わらないし、財政事情が好転するわけじゃない。空洞化や年金パンクも解決しない。しかし、庶民は何となく、ゴマカされてしまう。
こんなイカサマ政権が続いたら、参院選後の日本経済と国民生活は大変だ。
「参院選で自民党が勝てば、衆参のねじれが解消する。自民党はやりたい放題になります。来年4月の消費増税も既定路線で実行され、庶民は5%アップ分の13兆円を召し上げられる。安倍さんはますます大企業寄りの政策を進め、大企業の儲けは、配当や役員報酬という形で外資に持っていかれることになります」(経済アナリスト・菊池英博氏)
「先送り」と「ゴマカシ」を続けた失われた20年が、またぞろ繰り返され、今度こそ日本は、奈落の底に沈むことになる。
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