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2013年6月29日 植草一秀の『知られざる真実』
ジャーナリストの高橋清隆氏が
『「対米従属」という宿痾』(飛鳥新社)
の書評をブログに掲載下さった。
ご高覧賜りたい。
鳩山首相の尖閣問題に関する発言を一部の偏向メディアが猛攻撃しているが、日本人の冷静な理性が問われる問題である。
繰り返し記述するが、日本が日本の主張を堂々と提示することは当然だ。
しかし、領土問題のように、国と国の主張が真正面からぶつかるような問題への対応においては、自己の主張を検証するとともに、相手側の主張にも真摯に耳を傾ける姿勢が必要不可欠だ。
鳩山元首相は中国側主張について、その論拠等を正確に知ったうえで、中国側の立場からすれば、尖閣領有権を主張する論拠があることを認めたものであり、不当でも何でもない。
自己の主張だけを振り回し、相手側の主張には耳を傾けない姿勢が、問題の解決を遅らせ、問題をより悪化させてしまう原因になる。
日本国民は、偏狭なナショナリズム感情を扇動する低質な一部マスメディア報道に洗脳されぬよう、気を付けなければならない。
さて、通常国会が終了して参院選に突入する。
その通常国会の土壇場で、重大な決定が行われた。
安倍晋三首相に対する問責決議が参院で可決されたのである。
参院の問責決議に強制力はないが、国権の最高機関である国会の一翼を担う参議院が内閣総理大臣に対する問責決議を可決した意味は極めて重大である。
日本国憲法の下、参議院が発足して以降、首相に対する問責決議が可決された例は、今回の問責決議可決を含めて4例ある。
第1例は、2008年6月11日の福田康夫首相に対するもの。福田内閣は3ヶ月後に退陣している。
第2例は2009年7月14日の麻生太郎首相に対するもの。麻生内閣は2ヶ月後に退陣し、民主党に第一党を奪われ、政権交代。
第3例は2012年8月29日の野田佳彦内閣総理大臣に対するもの。その後、野田首相は11月16日に衆議院を解散し、12月16日の総選挙で敗退して退陣した。
そして、第4例が2013年6月26日の安倍晋三内閣総理大臣に対するもの。
上記の事実が明らかにしているように、参議院における問責決議可決の意味は重大である
安倍氏は問責決議可決後の記者会見でこのことを問われると、
「ねじれの象徴」
と開き直った。
日本国憲法が国権の最高機関と定める国会の一翼を担う参議院が内閣総理大臣に対して問責決議を可決したのである。
まずは、その事実を厳粛に受け止める、真摯に受け止めることが必要不可欠である。
安倍首相が問責決議を突き付けられた理由は、参議院が開いた予算委員会に欠席したためである。
日本国憲法第六十三条に以下の条文がある。
第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
後段の規定に注目いただきたい。
「内閣総理大臣その他の国務大臣は、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。」
と定められている。
この憲法の規定に違反して、安倍晋三氏は予算委員会を無断で欠席した。
欠席したのは安倍首相だけではない。
同じ日本国憲法第九十九条には次の条文が置かれている。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
内閣総理大臣には憲法尊重・擁護義務がある。
参院選の最大のテーマは憲法である。
より正確に言えば、憲法第96条改変問題である。
憲法を争点に参院選が戦われようとしているなかで、内閣総理大臣が憲法違反を行って参議院から問責決議を突き付けられるとは、一種のブラックユーモアのようでもある。
野党が党利党略で問責決議を提出し、数の力で可決したのではない。
問責決議を可決されるに値する、重大な憲法違反の行為が存在したために、安倍首相に対する問責決議が可決されたのである。
憲法を守ることもできず、憲法に違反したことを問われて、反省も謝罪の言葉も口にできない首相に憲法改変提案を示す資格はないと言うべきだ。
安倍首相は、問責決議可決について記者会見で問われたときに、「ねじれの象徴」と述べたが、この言葉のなかに、安倍氏の独善性が如何なく発揮されている。
安倍氏の立場から見れば、参議院が「ねじれている」のであろうが、参議院の立場から見れば、衆議院が「ねじれている」のである。
衆議院と参議院は国権の最高機関である国会の、それぞれが一翼を担う存在である。
予算案審議などにおいて、衆議院の優越の規定があるが、衆議院が一級で参議院が二級ということではない。
上院は参議院であり、衆議院は下院なのである。
たまたま、7月21日の参院選で自民党の好調が予想されているから、安倍氏は上から目線の発言を示したのかも知れないが、国権の最高機関である国会が問責決議を可決したことに対する真摯な姿勢はかけらもない
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