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2013年6月27日 植草一秀の『知られざる真実』
昨日のブログ記事に記載した鳩山元首相の香港フェニックステレビでの発言について、一部、事実と異なる記述があったので、一部訂正を含めて再論する。
鳩山元首相は上記テレビ番組において、
沖縄県の尖閣諸島について、
「中国側から見れば(日本が)盗んだと思われても仕方がない」
と発言したこと自体は事実であった。この点は事実を確認したうえで、表記を改めたい。
日本の一部メディアは、鳩山元首相のこの発言を強く非難している。
しかし、的確な論評を行うためには、鳩山元首相の発言の意味を正確に読み取る必要がある。
昨日付メルマガ記事にはすでに記述したが、
『「対米従属」という宿痾』(飛鳥新社)
146ページから151ページに、この点に関する記述があるので、事実関係をよく理解することが必要である。
また、孫崎亨氏の著書
『日本の国境問題』(ちくま新書)
の57ページから94ページにも、尖閣問題についての詳しい解説が記述されているので、ご参照賜りたい。
カイロ宣言では、清の時代に中国から奪った領地は中国に返還されることになっている。
「満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコト」
日本が尖閣を領地に組み込んだのは清の時代である。
日本側の主張は無主の地を日本が先占したと主張し、日本の領有権を主張するものである。
この点に関して孫崎亨氏は、中国側の主張を精査したうえで、清の時代に尖閣諸島に対する中国の管轄権が及んでいた可能性がないとは言えないことを示している。
清の時代に尖閣諸島に対して清の管轄権が及んでいたとすると、
尖閣諸島が「日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域」に該当するとの判断は生じ得る。
鳩山元首相が述べたことは、このことである。
つまり、清の時代に、尖閣諸島に対して清の管轄権が及んでいたことを中国は主張しており、その論拠も示している。
このことを踏まえると、尖閣諸島がカイロ宣言に記述された、
「日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域」
に該当することになり、このことを根拠に中国が尖閣諸島の領有権を主張することは論拠を持つことになる。
日本政府は尖閣諸島の領有権を主張しており、その主張に正当な論拠があるなら、これを主張することは正当である。
しかし、同時に中国の主張に耳を傾けたときに、中国側の主張にも一定の合理性が存在するなら、その現実から目を背けて、日本の主張だけを「一点張り」で言い張ることは賢明な姿勢ではない。
鳩山元首相発言は日本の主張を否定しているものではない。そうではなく、中国側の主張に目を向けて、その主張にも一定の合理性があることを率直に認め、そのことを表明しているに過ぎないのである。
現実を現実として直視し、自分と敵対する側の主張であっても、謙虚に耳を傾け、そこに一定の合理性があるなら、その合理性を認める姿勢は、「賢明」なものであって避難されるべきものでない。
このような理性的な姿勢、冷静な対話の姿勢がなければ、紛争を話し合いによって平和裏に解決することはできない。
重要な点は、清の時代に清の管轄権が尖閣諸島に及んでいたとの中国側の主張に合理性があるのかどうかという点、日本側が主張する、1895年の領地への組み入れのプロセスに瑕疵がなかったのかどうかという点に絞られるだろう。
詳細は、孫崎亨氏の著書『日本の国境問題』をご高覧賜りたいが、結論から言えば、中国側の主張にも一定の合理性があると認めざるを得ないと考えられる。
以下に、孫崎氏が著書に記述されている事項の一部を紹介する。
16世紀の中国の歴史的文献にはすでに釣魚島についての記載がある。
また、明の時代に出版された『日本一鑑』には、釣魚島は台湾に付属する小さな島であるとの意味の記載がある。
清朝の時代の冊封使は、尖閣諸島と古米山(久米島)の間に深い海溝がありあり、これが「中外の界」であると書いている。
これらの文献の存在に従えば、釣魚島は中国人が最初に発見し、16世紀から中国の版図に入ったことが明らかになる。
また、日本の尖閣諸島の領地組み入れについても、中国側は、日本が1884年に尖閣諸島を「発見」した際に、中国に対する侵略の意図を疑われることを躊躇して版図に入れることを憂慮し、日清戦争後に台湾に付随する島嶼として割譲したものだと主張する。
日本が日本側の主張を展開することは正当であるが、中国側がどのような主張を展開しているかに耳を傾け、その主張を正当に評価する姿勢は必要不可欠なものである。
フジ・サンケイグループを中心に、偏狭なナショナリズム感情をむき出しにして、鳩山元首相の発言を猛攻撃しているが、同じ日本人として、とても恥ずかしい行為であると言わざるを得ない。
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