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「バトルなき成長戦略」と竹中氏170日のいら立ち[日経新聞WEB]
編集委員 清水真人
2013/6/25 7:00
首相の安倍晋三は7月の参院選後も経済再生を政権運営の基軸に据え置かざるを得なくなった。14日に閣議決定した成長戦略への市場の評価が微妙で、秋に第2弾を約束したためだ。首相直属の産業競争力会議と、議員の一人で慶大教授の竹中平蔵の170日間を振り返ると、欠けていたものが浮き彫りになる。
■官房長官に直談判
17日、首相官邸近くのホテル。竹中は官房長官の菅義偉に「選択肢は2つあります」と官邸政策会議の再編を説いていた。
「競争力会議に作業部会を設け、参加する民間議員は少人数に絞り込んで議論を継続する」
「同会議は経済財政諮問会議の下部組織に衣替えし、成長戦略もマクロ政策と一体で扱う」
競争力会議の民間議員を実質的に減らすか、諮問会議への統合を唱えた竹中。第2次安倍内閣はマクロ政策討議の場として諮問会議を復活させ、成長戦略は新設の競争力会議で検討させてきた。ともに議長は安倍で、経済財政・再生相の甘利明が閣僚と民間議員を統括する。竹中は「両者のすみ分けは難しい。例えば税制はどちらで扱うのか」と当初から危ぶんでいた。
「金融政策の路線転換を見ても、最高司令官の安倍首相が1人で奮闘している姿が際立ち、政策決定の司令塔ははっきりしない。諮問会議や競争力会議が十分に機能を果たしていない」
5月18日に都内で開いたシンポジウム。竹中はこう危機感を訴えるまでになった。固まってきた成長戦略の100ページ近い素案を見て「各府省の予算要求をホチキスで留めた典型的な総花型だ。競争力会議は限界だ」と漏らし始める。「非常手段」として頼ったのは旧知の菅だ。
市場の視線を意識した竹中は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産運用見直しを菅に直談判した。同法人は6月7日、国内債券の割合を減らし、国内外の株式や外債を増やす方針を成長戦略とは別に発表する。小泉純一郎内閣で経済財政相を長く務めた竹中は最後の1年、総務相として郵政民営化を進めた。この時の副大臣が菅で、2人の間にはホットラインがある。
安倍は当初、竹中を勝手知ったる諮問会議の民間議員に内定していた。これに副総理・財務相の麻生太郎が猛反対。小泉の元首席首相秘書官で内閣官房参与に就いた飯島勲も安倍に「辞令を返上したい」と怒鳴り込んだ。この2人は小泉内閣当時から竹中と犬猿の仲だ。安倍はやむなく竹中を競争力会議に配置換えした。今の竹中には小泉のような絶対的な後ろ盾はない。
■経産官僚主導VS規制改革
年明けからの競争力会議で竹中の壁となったのは、甘利と事務局を主導する経産官僚だ。1月23日の初会合。甘利が掲げたのは戦略分野を国が特定し、政策資源を集中投入する「新ターゲティングポリシー」だ。竹中は「規制改革が成長戦略の一丁目一番地だ。公的資金を投入しながら経営破綻したエルピーダメモリの例を繰り返してはならない」と官主導をけん制した。
安倍と甘利がそれぞれ意中の経済人らに声をかけ、民間議員は10人まで増えた。円滑な運営に向け、竹中と化学者で東大教授の橋本和仁をまとめ役とする案が事務局から出てきた。そこで竹中が打ち合わせ会合で意欲的に発言すると「大臣のように仕切っている」との噂が流布する。これを伝え聞いた甘利が周囲に違和感を漏らし、一部民間議員からも竹中批判が強まる。
竹中は甘利に面会を求めて「事務局から要請を受けてやったこと」と説明したが、甘利は「私は聞いていない」と応じる。竹中は事務局不信を強め、甘利に「民間議員の代理を事務局に入れてほしい」と申し入れるなどぎくしゃくは続く。竹中らをまとめ役にする構想も消えた。
新ターゲティングポリシーと規制改革重視のズレはそのまま。潜在成長率が今どれくらいで、目標はどこに置くかといった「総論」も素通りした。名目3%、実質2%の成長率目標は諮問会議が議論した数字の引き写しでしかない。甘利は産業再編、科学技術など7分野に民間議員を割り振り、縦割りで「各論」の詰めを急がせた。民間議員の横の連携は寸断されがちとなった。
10人のワン・オブ・ゼムとして竹中が担当したのは日本の立地競争力の強化だ。規制改革の突破口として、地域を限定して大胆な自由化を進める「国家戦略特区」を提案した。特区担当相の新藤義孝が評価し、成長戦略の柱の一つに浮上する。制度設計を詰めるワーキンググループ(WG)の座長には、竹中も推した大阪大招聘(しょうへい)教授の八田達夫が就いた。
■意図的にバトルを起こす
「安倍官邸にはバトルがない。各省とのバトルがなければ、規制改革など進むはずがない」
こうつぶやく竹中。小泉内閣では諮問会議で民間議員が急進的な改革提言を出し、各省大臣と激論。竹中は綿密なシナリオを描いて行司役を演じ、最後は小泉の裁断を引き出して前進させた。今は諮問会議でも競争力会議でもこんな「バトル」は影を潜める。竹中は規制改革会議(議長=住友商事相談役・岡素之)にも各省への切り込みが足りないと「失望」を公言する。
「各省から長時間のヒアリングを進め、折衝しています。久しぶりに霞が関に緊張感が走り、活性化している印象です」
WG関係者から竹中にはこんなeメールが届く。「公設民営」学校の解禁、都心居住を促進する容積率緩和など東京都や大阪府・市の描く特区構想を巡る「バトル」が勃発している。規制改革会議とのすみ分けが火種だが、竹中は安倍の眼前で特区を議論する「戦略特区諮問会議」新設も発案し、「バトル」拡大を画策する。秋の陣の前哨戦はもう始まっている。=敬称略
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK24011_U3A620C1000000/?n_cid=DSTPCS001
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