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6月20日 東京新聞「こちら特報部」
一国のトップはフェイスブックなどで、どこまでしゃべっていいのか? 安倍晋三首相が街頭演説で抗議する聴衆を「左翼」呼ばわりし、小泉訪朝時の元外務省幹部を名指しで「語る資格なし」と批判した。時の最高権力者がネットを利用した情報発信は歓迎したいが、「個人攻撃では」などと話題になっている。どう考えたらいいのか。 (小倉貞俊、小坂井文彦)
安倍首相が聴衆の一部を「左翼」と呼んだのは九日。夕方、都議選の自民党立候補予定者の応援のため、JR渋谷駅前で演説したときのことを、自身の会員制交流サイト「フェイスブック」にこう書き込んだ。
「渋谷には本当に沢山(たくさん)の皆さんが集まって頂き感激しました。聴衆の中に左翼の人達が入って来ていて、マイクと太鼓で憎しみ込めて(笑)がなって一生懸命演説妨害してましたが(中略)彼らは恥ずかしい大人の代表たちでした」
フェイスブック上には多くの賛意コメントが寄せられた。だが、この経緯を取材したノンフィクションライターの窪田順生(まさき)氏は「たまたま近くでTPP(環太平洋連携協定)反対集会が開かれており、参加者が首相の演説に『TPP反対』と声を上げてアピールしていた。先の衆院選で自民に投票した農家の知人も参加しており、『左翼』とくくるのは正確ではない」と話す。
もともと自民党は政権を奪還する前、TPP交渉参加への断固反対を掲げていた。「安倍首相はその変心についてきちんと説明していないのに、そうした人たちの声を『左翼』と切り捨てる結果となった」
フェイスブックをめぐるもう一つの話題は、田中均・元外務審議官への批判に端を発する、民主党の細野豪志幹事長とのインターネット上の論戦だ。きっかけは、十二日の毎日新聞に「右傾化 日本攻撃の口実に」の見出しで載った田中氏のインタビュー。その中で「国際会議などで、日本が極端な右傾化をしているという声が聞こえる」「(五月の飯島勲内閣官房参与の訪朝は)スタンドプレーとは言わないが、そう見られてはいけない」などと論評した。
これに対し首相は同日の書き込みで、田中氏が二〇〇二年に拉致被害者五人が一時帰国した際、北朝鮮に送り返すべきだと主張したことに触れ「外交官として決定的判断ミス」「彼は交渉記録を一部残していない。彼に外交を語る資格はありません」と強く非難した。
その後、細野氏が自身のフェイスブックで「田中氏は今は一民間人。『表現の自由』を有している」(十四日)、「最高権力者が持つ強大な権力を考えたときに、あのような発信は自制すべきだ」(十五日)などと発信。安倍首相が応酬をする展開となり、ネット上で細野氏に批判的なコメントも多く寄せられた。
渦中の田中氏はどう受け止めているのか。所属する日本総合研究所を通じて「コメントはしない」と回答した。
窪田氏は首相のこうした姿勢について「『ネット右翼』を味方にし、高い支持率を背景に強気になっている。批判者を敵とみなして対立構図をつくり、支持者らをあおる狙いだろうが、最近の首相の事実認定にはやや粗雑な傾向が出てきている」と分析する。
安倍首相はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が好きだ。フェイスブックやツイッターにほぼ毎日のようにしゃべったり、つぶやいたりする。外交や政治のほか、母親の誕生日なども話題にしている。
フェイスブックは約三十六万六千人がフォローし、ツイッターは約十三万六千人のフォロワーがいる。ネット世界でのアピール力は小さくない。
ニュースサイト編集者の中川淳一郎氏は今回のしゃべりを「ネットの保守派を取り込むのが狙い」とみる。フェイスブックには、「左翼」発言で約五千六百人、田中氏批判では約二万四千人から賛同を意味する「いいね」を得ており、狙いは奏功したともいえる。
だが、「支持があったと思い込むと、時に間違いをおかす」と言う。安倍首相に好意的な書き込みが集中するが、細野氏には批判があふれている。議論をしないまま、支持者の意見だけを聞いていては、「裸の王様」になるという意味だ。
また、中川氏によると、実はネットユーザーは個人攻撃を嫌い、誰かをほめると好かれる傾向にある。安倍首相の批判の書き込みに、細野氏が「海外におられる安倍総理からコメントを頂きました。お忙しい中でコメント頂いたことに、心より感謝申し上げます」と丁寧に対応したことが、好感度を上げたという。
立命館大の東照二教授(社会言語学)は「個別のことに、一国の総理がいちいち反応するのは大人げない。今回の発言はいわば、個人的な好き嫌いの表明。調子に乗りすぎかと思う」と続ける。
政治家のSNS利用が先行する米国では、個別の意見に反論すると、批判を受け止められない子供とみなされ、評価を下げるという。「個人攻撃は有権者に嫌われることもあり、政治家は発言に気を付けている。オバマ大統領はあのような発言は絶対にしないだろう」
日本でも個人を特定してたたく行為は以前は嫌われていたはずだったが、容認する雰囲気が醸成されてきていると感じている。「悪い意味で個人主義が進み、他人をないがしろにして、自分だけを大切にすることがまかり通っている。日本人の『頼る』傾向が強まる一方、自分の責任でやっていくという意識が低下し、社会が幼稚化していることもある」
学習院大の平野浩教授(政治心理学)は「トップの発言として、いかがなものかと思うが、発言の許容範囲を示す絶対的な基準はない。社会の変化で決まる」と説明する。政治家が建前だけを語る期間が長く続き、本音で語ることを「よく言った」と評価する昨今の社会の雰囲気が影響しているとみる。
「だからといって、本音なら何をしゃべっても許されるわけではない。仲間内で賛同を得ても正しいとは限らない。米軍基地や原発事故など、特定の問題で困っているのは常に少数派だ。政治家は仲間内の意見に流されてはいけない」
また、「市民の暗黙知が弱っている」ことがしゃべりを後押ししたという。暗黙知とは、経験や勘に基づき、意識化はされず、言葉にはしにくくても暗黙のうちに人が持っている知識のことだ。
「発言を問題視するのは、首相として軽々しいからか、品がないからか、左翼とレッテルを貼るのがいけないのか。何が良くて、何が良くないのか、という感覚をみなが磨いていくべきです」
<デスクメモ> 原発事故後に、「左翼が台頭」との危機感でもあるのか。カウンターパワーとして、ウヨクを育てて結集する気ではあるまい。TPP反対などで「物言う市民」が左翼とくくられてしまうのは、迷惑なことだろう。原発の行方には右も左も、ない。核のごみ処分も考え「脱」に向け「前」進あるのみだ。 (呂)
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