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【参院選争点:TPP隠しを許すな】<文字起こし>20130621 報道するラジオ「参院選争点〜TPP交渉参加で、暮らしはどうなる?(前)」
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June 22 2013 Sekilala&Zowie
20130621 報道するラジオ「参院選争点〜TPP交渉参加で、暮らしはどうなる?」
シンガポール、ペルーと2回続けてTPP交渉の現場に、日本人唯一といっていいステークホルダーとして参加をし、大企業がスポンサーであるマスコミでは絶対に報じないTPP交渉の現場にて情報収集されたNGO団体PARCの事務局長である内田聖子さんと、日本には実質、TPP交渉の余地はないと、日米関係の歴史を紐解き、安倍政権になってますます対米追従の度合いを増してきたことへの危機感と、嘘が横行する政治に警鐘を鳴らし続ける元外務省情報局長の孫崎享氏のお二人を電話で結んで、新聞・テレビではまったく伝わってこないTPPの実態と国民生活について語られている。
文字に起こしたので、どうぞ(まずは前半)↓
【文字起こし】20130621 報道するラジオ「参院選争点〜TPP交渉参加で、暮らしはどうなる?(前)
水野昌子・毎日放送アナウンサー「報道するラジオ。今週の特集テーマ『TPP交渉参加で、私たちの暮らしはどうなる?』でございます。まず、ご紹介いたしますのは、グローバル企業がアジアの人たちにどんな差別や貧困をもたらしているのか、そんな問題とずっと取り組んでいらっしゃるNGOで『アジア太平洋資料センター』というところがあります。こちらの事務局長をなさっている内田聖子さんです。内田さん、こんばんわ」
内田聖子・PARC事務局長「こんばんわ」
水野「どうぞ、よろしくお願いします」
内田「はい。お願いします」
平野幸夫・毎日新聞「毎日新聞の平野です。よろしくお願いします」
内田「はい。お願いします」
水野「内田さんは、このTPPの交渉、シンガポールとペルーのリマで行われたものを実際に現場まで行ってご覧になってきたっていうことを伺って、そういう経験をなさっている方が居らっしゃるんだ。ぜひお話を伺いたいと思ってるんですけど、一般の人でもTPPって行っていいんですか?」
内田「はい。まず、参加資格は、TPPに入っている国。今11カ国ありますけれども、そこの国の交渉官はもちろん、交渉する人なので、当然行きますが、いわゆるステークホルダーと言って、これは日本語に訳すと、利害関係者と言われるんですが、要は、交渉の内容に色々と影響を与えたり、主張を反映させようと。そういう団体や企業等を指すんですね。
登録をきちんと事前にすれば、ほとんどの場合、参加出来ます。現場に行って、一日だけですけども、交渉官といろいろやりとり出来たりする機会があります」
水野「会場ってどんな雰囲気、どんな方たちがどんなぐらいの数でやっていらっしゃるんですか?」
内田「ぜんぜん分からないですよね」
水野「まったく。だって、TPPに関しては、もう情報は出しませんっていう言い方をしてますでしょ。クローズドだって」
内田「そうなんです。それで、日本はもちろんまだ今も、今日の時点でも参加してないので、当然メディアもNGOも入れないんですが、私は国際ネットワークがあるので、たまたまですけど、アメリカのNGOとして登録をして参加をしました。
それで、会場はどの国で行われても、だいたいその国で一番高級なホテルを借りきって」
水野「借りきりですか?一番高級なホテル」
内田「ぜんぶじゃないですけど。はい。3つぐらいフロアを借りてやるんですが、来てる人はまず交渉官が11カ国の、だいたい平均して合計で400名ぐらいですね」
水野「これは政府関係者でしょ?」
内田「そうですね。その他に、さっき言ったステークホルダーという様々な企業だったりNGOだったり業界団体だったり」
水野「企業か業界団体、そういった本当の利害そのもの。損得ある人たちもいっぱい押しかけてるんですか?」
内田「そうなんです。それで私も驚いたんですけども、トータルでだいたい3,400人ぐらいそのステークホルダーが全体でいるんですけれども、その8割が企業の人たちなんですね」
水野「ええ〜?企業のほうが多いですよ」
内田「圧倒的に多いです。NGOとか労働組合なんていうのは本当に2割ぐらいしかいなくて、来てる企業も、やはりアメリカの大企業がもっとも多いんですね」
水野「いわゆるアメリカのグローバル企業ですね?」
内田「そうですね。例えば、ナイキとかカーギルとかフェレックスとか。私たちがすごくよく知ってるような企業が軒並み来ていて、交渉と交渉のあいだに交渉官と話したり、さっき言った一日だけコンタクトが許される場というのにみんな来て、アピールをガンガンやってるわけですね」
水野「企業がどんどんアピールするわけ」
内田「そうですね」
水野「つまり、それが自分の企業にとって得なように、政府関係者がちゃんと交渉してくれよと。そういう意味ですか?」
内田「もちろんそうですね」
水野「そんな生々しいんですか?」
内田「結構、生々しいですね。私も、あんまり本当の秘密の話はそんなとこでしてないですけど、やっぱりいろんな会社のパンフレットとか、いろんな文書を持ってきて、交渉官に渡したり、投資をして欲しいとか、そういう会話を実際しているわけですね」
水野「ものすごい金儲けの話の場ですね」
内田「もう商談の場といってもいいと思います」
水野「商談の場と思ったほうがいいぐらいですか?」
内田「はい、そうですね。しかも、TPPの会合っていうのはだいたい2,3カ月に一回行われていて、ペルーでは17回目だったんですね。だから、かなり、もう3年間交渉をずっとしてますから、もうずっと継続して来ている企業は、もうすっかり交渉官と人間関係も出来てますので、その場だけじゃなくて、日常的にもやりとりをしてますし」
水野「つまり、交渉官というのは政府の代表者なわけですから、だったら、国の代表者を、言ったら自分の企業にとってプラスなように動かす。もうあっちの国とやってきてやーっていうような、そんな場と思っていいんですか?」
内田「もちろんそうですね。例えば、アメリカの企業でしたら、わざわざ遠くに行かなくても、日常的にアメリカで話ができますから、強烈なプレッシャーを与えてます。実際、製薬会社の連合ですとか、それから食品の輸出、農産品の輸出企業ですとか、保険会社とか、これらははっきり言って日本をターゲットにしてるわけなんですけれども」
水野「日本がターゲットですか?」
内田「そうなんです。交渉官に、こういう関税を引き下げて欲しいとか、こういうふうな交渉をして欲しいというプレッシャーはいつもかけてます。交渉の会合の時は、他の国の交渉官と会えるというのが、ひとつのメリットでもありますので、そこでやはりアメリカの業界団体や企業は、もう最大限アピールをしていて、特にペルーでは、今、交渉がちょっと遅れ気味なんですね。
たくさんTPPって広い分野があって、揉めてる分野もありますから、そうすると、企業としては早く妥結してもらわないと儲けに繋がらないということで、強烈なプレッシャーを交渉官にかけて、つまり年内に妥結してほしいとか、そういう」
水野「妥結の時期まで?」
内田「そうですね。はい」
水野「言うんですか?」
内田「それは言ってます。もちろん、USTRというアメリカの交渉の政府機関も年内を目指すと、一応言ってますので、それに念を押すという感じで、絶対にやれというようなプレッシャーをかけているという実態なんですね」
水野「日本では、安倍さんがおっしゃってるのは、国益のために、これはTPPに参加するんだと、おっしゃっておりますし、守るべきものは守るんだというふうに、自民党の公約にも掲げているわけですけれども、そういう、伝わっている日本で言われていることと、実際に現場に行かれた内田さんの印象というのは、いかがですか?」
内田「まったく違います」
水野「まったく違う?」
内田「はい」
水野「どういうふうにですか?」
内田「それは、私も驚きますけど、それぞれの国に守りたい品目があるということは、これは当たり前なんですね」
水野「いわゆる聖域ですね」
内田「そうですね。どの国にも守りたいものがある。特に主食とか、一番基幹産業的なもの。そんなのは当たり前なんですね。ところが、日本がいま守りたいと言っているもの、しかも聖域として認められたとか、これから頑張るとか言ってますけども、交渉官にいろいろ聞いてみると、それぜんぶ思い通りに守れるわけないでしょ、という感じなんですね」
水野「交渉官って日本側の交渉官ですか?」
内田「いえいえ。現地の」
水野「現地の」
内田「はい。他の11カ国の。例えばオーストラリアとかニュージランドとか、そういった国々ですね」
水野「日本の国内では、守りますよ、と言ってるものも、そんなもん、守れますかいな、と海外の交渉官は言っている」
内田「はい、そうですね。全部守るのはもちろん無理ですし、結局、それは交渉の中で話すものであって、あらかじめ、日本にはこれだけ守られているなんてことは、誰もどこでも決めてないという話なんですね」
平野「内田さん。この全部で対象品目は9,000品目に渡るというお話で、日本が交渉に参加するのは来月で、たった、出来ても3日間ぐらいだろうと言われて、とても」
水野「3日間?」
平野「たった3日間ぐらいしか認められないと」
水野「え?もうだって、17回やってはるんでしょ?」
平野「だから、そこでお聞きしたいのは、日本が途中で入って、17回で終わったところで、日本の権益だけを主張して、どれだけ認められるのかなという、率直な疑問ですよね。そのへんは、もう現地でいろいろ見聞されて、そのへんの見通しみたいなのは、どういうふうにお思いですか?」
内田「たいへん厳しいと思います」
平野「きびしいですよね」
水野「厳しい?」
内田「はっきり言って、私たちはNGOですから、TPP自体には反対をしていたりしますけども、アメリカやニュージーランドのNGOのメンバーたちは、日本がこんなに遅れて、不利な条件で入ることが、まったく理解できないと言うわけですね。
これは、たぶん推進している方も、今から入って大丈夫かなって、はっきり言って思ってると思いますし、日本の交渉を担う方々も、わたしどもも折衝したりするんですけれども、やあ、厳しいという本音はたまに透けて見えますね。
つまり、どんな交渉かというのは、もう誰も知らないわけですね。外務省とか、経産省とか、その交渉を担う人すら知らないわけです。それが初めて見られるのが、7月の交渉に入れるという日の直前なんですね」
水野「直前に?」
内田「はい。しかもぜんぶ英文で、それはもうすでに1,000ページとか、1,500ページの」
水野「そんなに?」
内田「文面になっているわけですね。だから、まずそれを読むだけで数日かかるようなものを慌ててみんなで読んで」
水野「交渉終わってまいますやん。そんなんしてるあいだに」
内田「そうです。そうです」
水野「あっという間に」
内田「あっという間に」
水野「対策とか戦略とか、情報収集とか言うてる間、ないですやん」
内田「ないですね。だから、すべて後手後手に回っていて、しかも、守るものということばっかり日本政府は言ってるんですけれども、じゃあ、いったいTPPで何を勝ち取ってくるかということは、あまりクリアじゃないんですね。実は。守るべきものばっかり言ってるんですけど。
ですから、メリットという事自体があまりにも具体化されていないので、デメリットのほうはもうかなり試算が出されていたり、現実的に見えてきてるわけですけども。それはもう、かなり不利です。しかも、年内に妥結しようというのが全体のスケジュールで目標とされているので、かつ、7月はまったく、今おっしゃったように意味ないんです。もう参加しても。行って、帰ってくるだけという感じなんですね。
ですから、次が9月と言われていて、そうすると、まあ1回か2回ぐらいしか参加できないんだとすれば、こんな広い品目、広い分野の交渉を、もう17回も他の国はやっている、そういう中で日本が入っていって、よほどのタフネゴシエーターがずらずらと並んで交渉力を発揮出来ればいいんですが、正直それは可能性としては低いので」
水野「そうですか。内田さん。ここで、もうひとかたのゲストをご紹介したいと思います。元外務省国際情報局長でいらっしゃいます孫崎享さんともお話をさせて頂きますので、内田さんもご一緒にどうぞ。孫崎さん?」
孫崎享氏「はい、どうも。こんばんは」
水野「どうもお久しぶりでございます」
孫崎「内田さん、こんばんわ」
内田「お願いします」
水野「よろしくお願いします。孫崎さん。孫崎さんは外交のプロとして、いろんな修羅場をくぐり抜けていらっしゃいましたけど、いまの内田さんのレポートをお聞きになっていて、どんなご感想をお持ちでしょう?」
孫崎「本当に、いま自民党は守るべきものは守る。攻めるべきものは攻める。これを公約にしようとしていますね」
水野「ええ」
孫崎「ですから、多くの人は、日本には守るべきものがあって、たぶんある程度、まあ100%とは行かないけれど、60%ぐらいは守れるんじゃないかという印象を持ってると思いますけれども、これは基本的にいま内田さんがおっしゃったように、守るということはありえないんです」
水野「ありえない?」
内田「そうですね」
孫崎「それは、内田さんに聞かれればお分かりのように、もうすでに交渉の17回ラウンドが終わってますね。そして、この17回のラウンドで交渉した内容については、これをあとから入った国はひっくり返すということは、絶対にできないんです」
水野「あ、そうなんですか?」
内田「そうなんです」
孫崎「それで、これはすでにメキシコ、それからカナダがあとから入るときの条件は、これまで合意したことは守るということですから。そうすると、さきほど内田さんがおっしゃったように、もう基本的には、残りあと1回か2回でだいたいまとまるという大枠がもう出来てるんですよね」
水野「はい」
内田「そうですね。はい」
孫崎「だから、大枠ができているところで、これをぜんぶ元に戻して、ひっくり返すということはできませんから。だから、攻めるべきものは攻めるなんて、攻める場所がないんです。守るべきものは守るって言ったって、もうすでにいろんなところが合意されてるから、守れないんですね」
水野「戦おうと思っても戦う相手が目の前にいないようなもんですよね。もう終わってるで、試合はってなもんですね」
孫崎「はい」
内田「はい。おっしゃるとおりだと思います」
孫崎「野球が終わってるところに、バッターボックスに立って、俺、ホームラン打つよって言ったって、誰もいない」
水野「えええ?そしたら、7月、またこれも参議院選のあとになるらしいですけど」
内田「そうですね」
水野「交渉に、長くて3日ですか?多くて」
内田「はい」
水野「これにわざわざ行くってのは、孫崎さん、どういう意味があるんですか?」
孫崎「これは、あたかも交渉で、守るべきものは守る。攻めるべきものは攻める、ということをしたということを、国民に印象付けるわけですから。だから、これは、前回の衆議院の選挙の時の公約もおんなじですよね。
『聖域なき』というような問題を出すことによって、この『聖域なき』というその条件のものがクリアしなければ、TPPには参加しないと、こういうことを言ってたんですけど。だから、多くの国民は、最後の『参加しない』という条件のところだけ聞いたわけですけれども」
水野「そうですよ。本当に、国益にならないんだったら参加しないんじゃないんですか?」
孫崎「そういうようなところっていうのは、今回もうまーくごまかしてるんですよ。守るべきものは守る。攻めるべきものは攻める。何にも、じゃあ具体的に何を守るんですか?って言ったら、交渉しなければ、守るべきものは具体的に分かりませんって。そんなバカな話はない」
内田「そうです」
孫崎「守るべきものっていうのは最初からクリアになって、何を守るかをしない。ということは、政府も守るべきものは守れないことを知ってるんです」
水野「知ってるんですか?」
内田「はい。そう思います。ですし、やっぱり途中で脱退すればいいと。すると宣言してますけども」
水野「そうですよね。国益に叶わないんだったら、途中で脱退するっていう話ですよね」
内田「そうですよね。ただ、現実的に考えると、それはほとんど無理なんですね。もう17回も重ねてきたものに、日本は今回、まあ相当無理を言って、入れてくれ、入れてくれっていう形で4月に、慌てていろんな国と協議をして、無理やり入れてもらって、しかも7月の交渉にも、行きたい、行きたいと懇願して、やっと3日間だけ許してもらったんですね。
そうしておいて、やっぱり守れなかったからやめますというのは、これ普通の人間関係でも、考えても、それはブーイングですし、最悪それをやってもいいですけど、それは相当、国際社会の中で信頼を失う行為ですから、かつ、最後に言えば、アメリカはやはり日本の市場というものを非常に狙ってますので、アメリカとしては、日本に入ってもらわないと困るわけですね。
それでずっと色々一緒になって準備をしてきたっていう経緯があるので、アメリカは一旦入った日本を、出たいと言っても、絶対に」
水野「出さしてもくれない?」
内田「そうです。もう足抜けできないみたいな、そういう世界なんです」
水野「あら〜。野球の球場に入ってしまったから、もう出さへんでって、なっちゃいますか。試合終わってるんですけどね」
内田「うん」
水野「なんで、こんなことになってるかとか、具体的に、どんなことが予想されるのかというお話をこのあと、またコマーシャルを挟んでお聞きしたいと思います」
内田「はい」
<後半へ続く>
◇
【参院選争点:TPP隠しを許すな】<文字起こし>20130621 報道するラジオ「参院選争点〜TPP交渉参加で、暮らしはどうなる?(後)」
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June 23 2013 Sekilala&Zowie
番組では、内田さんが、政府のTPPに関する発表と、実際の交渉現場やリーク情報など総合したTPPの実態とはまったく違うと批判をし、孫崎さんは、選挙における自民党の公約違反に触れ、次の参議院選挙がひとつの判断の分水嶺であることを述べている。
地方では「TPP反対」ポスターを貼り「例外なき関税撤廃でなければTPP交渉参加をしない」という嘘で衆議院選挙を大勝した自民党が、今度は「「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻める」という嘘で参議院選挙を乗り切ろうとしている。
何度も騙されたいのか?騙されたと言えば、良心の呵責に苦しむこともないが、本当にそれでいいのか?が国民自身に問われていると孫崎氏。
【文字起こし】20130621 報道するラジオ「参院選争点〜TPP交渉参加で、暮らしはどうなる?(後)
水野氏「報道するラジオ、今日のテーマは『TPP交渉参加で私たちの暮らしはどうなる?』です。今日はアジア太平洋資料センター事務局長の内田聖子さんと、元外務省国際情報局長の孫崎享さんにお話を伺っております。
今度は孫崎さんからまず伺いたいんですが、孫崎さん。リスナーの方々からもいろんなご意見が来ておりまして、例えば、ラジオネーム『タネファン』さんという方なんですけど、アメリカは本当に日本の素晴らしい制度である国民皆保険制度を崩そうとするんでしょうか?というふうに聞いていらっしゃるんですね。これ、医療のお話ですよね」
孫崎享氏「これも崩れますね」
水野「崩れます?」
孫崎「はい。もう確実に崩れると思います。どういうことかと言いますと、医薬品の高止まり、それから高額医療を保険の対象としようとしますから、実際に壊れるんですね。それで、ちょっとひとつ、具体的にTPPに入ったらどういうことが起こるかということを」
水野「はい。それ教えて下さい」
孫崎「ちょっと具体的な例でいきましょうね。皆さん、次の例を2つ申し上げます。政府が企業に廃棄物処理施設の許可を与えた。そして、そこから有害物質が出てきた。それで、飲料水の汚染が起こった」
水野「水が汚れてしまった」
孫崎「それで、がんの患者もそのへんで多く出てきた。ということで、地方自治体がその施設利用を不許可にした」
水野「許可しませんよと」
孫崎「そう。そしたら、どうなるかという例が」
水野「そんなん当たり前のことですやん。廃棄物処理施設を作って、水が汚れて病人の方が出たら、そんなもん許可できませんというわけじゃないんですか?」
孫崎「これが、メキシコでメタルクラッド社というのが同じようなことをやったんです。そしたら、この企業の利益確保が失われたといって、提訴して、1700万ドルの賠償を払わなければならないという判決が出たんです」
水野「相手の企業はどこの国ですか?」
孫崎「アメリカ」
水野「はあ」
孫崎「こういうことが起こるの。だから、利益を持てなければ、どんな理由であっても、利益を失ったら、賠償しなければいけないという制度なんです。じゃあ、もう一つ言いましょうね。
カナダ政府は、米国の製薬会社イーライリリー社に対して、注意欠陥多動性障害治療剤が、臨床実験が不十分だということで、特許を与えなかったわけですね」
水野「ドイツの企業の薬を特許を与えるかどうかと。ごめんなさい。カナダの政府の話ですね」
孫崎「アメリカの企業が特許をくださいと言った。だけども、医療は、治るということと同時に副作用がありますから、臨床実験数が必要なわけです」
水野「当たり前ですやん」
孫崎「その実験数が不十分だということで特許を与えなかったわけ」
水野「当たり前だと思いますけど」
孫崎「そしたら、会社はこれをカナダの裁判所に訴えた。カナダの裁判所は、これは同じように不許可は当然だということで、会社の要求を却下したんですね」
水野「そこまでは納得いきますね」
孫崎「そしたら、この会社はISD条項というのを使って」
水野「これTPPに入ったら出てくる問題と言われているものですね。ISD条項ですね」
孫崎「そうそう。これは、企業が国家を訴えられるという条項なんですけど。これで、カナダ政府を去年の12月に訴えて、その額が1億ドルです」
水野「1億ドル」
孫崎「その法律、制度というのは基本的に、人間の安全であるとか、命であるとか、いろんなことを考えて、法律っていうのはあります。しかしながら、米国の企業が進出するときに、その利益の確保が法律ないし制度でもって、機会が失われた。機会が少なくなったら訴えることができる。
だから、日本の法律よりも、日本の最高裁判所の法律よりも、ISD条項で決めるほうが上位に行くんです。ということは、ISD条項を認めるTPPに入ったら、日本の国家主権というものがなくなっていくんです」
平野氏「孫崎さん、これ、いま政府はISD条項を日本政府は認めるか認めないか、中途半端な言い方してますよね」
孫崎「そんなもの入ってるんです。ISD条項のないTPPっていうのはありえません」
平野「それで、安倍さんは公的医療保険の論議は対象外だと言っているんですけど、具体的に知的所有権とか、金融サービスでこういう問題が話し合われているわけですよね。だからもう認めざるをえないような状況に追い込まれてるんですよね」
孫崎「今回、非常に重要なことは、議論をしなくても大枠は、これを排除するという以外のものは、全て将来対象になるんです。だから、今回、国民健康保険の問題を議論してませんよということは、その問題は将来かかってくるということなんです」
水野「かかってくるということですか」
孫崎「もしも、今回、それをここのところをこうするという守りがしっかり決められるということでなければ、将来は崩されるということなんです」
水野「じゃあ、いま教えていただいたISD条項。国の法律よりもこのISD条項で海外の企業が国を訴えることができると」
孫崎「そういうことなんです」
水野「それだと、わたしらの医療保険ですね。3割だったら3割の負担で、みんなが同じ医療を受けられるという日本のシステム。これが崩れていくというのはどういう関係になるんですか?」
孫崎「どういうことかといいますと、今申し上げましたように、米国の医薬品会社、具体的には高額の、非常に高いものを保険の対象にしろと必ず言ってきます。安いものだけ対象じゃダメじゃないかと。高額のものも対象にしろということを言いますから、そうすると、医療保険の対象のものは一気に高額のものが対象になります。ということは、実質的に、まかなえるお金は同じですからパンクします」
水野「保険がもう効かないような診療になるわけですね。自由診療でお金出してやってください。自由に払ってくださいと」
孫崎「そうすると、結局、どういうことになるか。このISD条項というものがなぜアメリカの企業にとってプラスかというと、これをアメリカで一生懸命にやってるのは保険会社です。
どういうことになるかといいますと、国民健康保険が崩れれば、日本の国民は民間の健康保険に入らざるを得ないんです。だから、国民健康保険に依存しなくて、個人個人が私的に健康保険に入る。
この健康保険の会社の対象がアメリカですから、アフラックとか。だから、健康保険が崩れたほうが、今一番TPPのアメリカの推進になっているアフラックとかという保険会社に一番にプラスになるんです」
水野「アメリカの主要な業界ですね。保険業界で。その保険業界が日本に入りやすくなるんだ」
孫崎「そういうことです」
水野「あのですね。孫崎さん。いままでのお話でいろんなご意見を皆さんから頂いてるんですけど、じゃあなんで安倍さんはある種国民に嘘をついてまでTPPに参加しようとしているんですか?日本は」
孫崎「ポチになりたいだけ」
水野「アメリカの?なんでポチになったら、ええことありますか?」
孫崎「ポチになったら、自分は首相の座にいれると。こう思ってるだけですよ」
水野「そんなもんですか?政権って」
孫崎「そんなもの。本当に残念です。日本の国益にTPPがこれまでたぶんいろんな方に伺われて、TPPの危険性というのはいろんな事言われたと思います。だけど、これに入ってプラスだということは、具体的に誰も説明できない」
内田聖子氏「そうですね。だから、本当に合理的な説明ができないんですよ。さっき言ったように、なぜこんな不利なのに入るかって、いろんな人が思ってるんですけど、誰も合理的な説明できない」
水野「メリットを説明できない。で、デメリットはいっぱい説明されている。それでも進んでいくのは、政権にとっては得なんですか?」
内田「いま孫崎さんがおっしゃったように、もう理性的な判断の域をもう超えていると私は思っていて、つまり、ちゃんと国民の命とか財産とか健康とか、あと自給率ですね。農業って単に農民の人たちがっていうんじゃなくて、国にとっては安全保障だって」
水野「安全保障ですよね。食べ物の自給率ねえ」
内田「それがもう絶対にボロボロになると分かっていて、そこに入るということは、もう国家という機能自体を放棄しているとしか思えないです」
水野「食品の安全や農薬などの基準というのも、今の孫崎さんの話で、ISD条項と言われたら、ぜんぶそんなんあかんねん、あんなんあかんねんって他の企業から言われかねないですね」
内田「はい。実はすでに言われてまして。日本でまったく報道されないんですけども、アメリカは、5月か6月の一カ月の間、国内で、主に企業に対して、日本がTPPに参加したら、どういうことを求めますか?というパブリックコメントという、誰でも書けるようなウェブサイトに書き込むという、そういうのを取ってきたんですね。
それが締め切りがあっていま80社ぐらい。80件ぐらい集まってるんですが、もうそこは軒並み、さっき私が言ったようなTPPの交渉に来てるような企業が、もうガンガン書き込んでるわけです。
例えばカーギルとか、それからアメリカの生命保険協会だとか、それからトウモロコシとかいろんな農産品を売る業界。そこはもうとにかく日本の関税が高いので、取っ払ってくれと」
水野「ぜんぶ取っ払えという、それぐらいの勢いですか?」
内田「それは当たり前のことなんですね。アメリカ企業の要求としては。かつ、それだけではなく、いわゆる関税とは別の非関税障壁といって、いろんな制度とか法律とかISDにも絡みますけども、例えば食品添加物の認証手続きですね。日本は本当に安心安全な食が素晴らしい誇るべき国だと思いますけども、そんなものは、遺伝子組み換え食品とか、農薬がいっぱいついた農産物を売りたい企業からすれば、邪魔なわけですね」
水野「なるほど。それを取っ払えってくるわけですね」
内田「はい。取っ払えと」
水野「孫崎さん?時間がきましたので、最後にひとこと。じゃあ、今からストップを掛けられるものですか?」
孫崎「私は今度の参議院選挙だと思うんです。本当に、みなさんね。守るべきものは守る。攻めるべきものは攻める。こんなもの。これは自民党の公約ですけれども、これは嘘なんです。だから、そういう意味で、本当に今度の、このTPPで何が起こるか、しっかり見極めれば、今度の参議院選挙でどういう結果が出るかによって、やはり政権は考えますから。国民はTPPがいったいどういうものか。特に、ISD条項の危険性。国益を、国の主権というものがなくなる制度であるということは、本当にしっかり見ていただきたいと思ってます」
水野「はい。知った上で選びたいと思います。どうもありがとうございました。アジア太平洋資料センター事務局長の内田聖子さん、そして元外務省国際情報局長の孫崎享さん。お二人ありがとうございました」
平野「ありがとうございました」
内田「ありがとうございました」
水野「平野さん、今日のTPPに関してのいろんな話は、『アンキロス』さんというラジオネームの方は、『なんか日本はええカモにされてるんちゃいますか?』とおっしゃる。あるいは、『明石焼き』さんは、『国民には分からない。知らされていないこと、多いですね』こんなのいただきました」
平野「日本の国益が一方的に損なわれているというような状況が浮かび上がって来ましたよね。それで、2月の日米合意ですね。交渉に参加するということを決めた時に、アメリカの豚肉生産者組合の幹部が『めまいがするほど嬉しい』と」
水野「めまいがするほど嬉しいと」
平野「狂喜してるんですよね」
水野「もう、アメリカの豚肉の関係者は」
平野「もう、それだけ日本のこの農業が逆に危機にあるということが浮かび上がるわけですよね」
水野「こちらの人はめまいがするほど、どないしようと」
平野「その辺の危機感を有権者の人がどれだけ今度の、さきほどの孫崎さんの話ですけども、感じ取るかと。ただ、地方選挙はこのところずっとあって、自民党は取り零しが目立ってるんですよね。
これは、こういうTPP、特に地方へ行けば行くほど深刻ですから、これをちゃんと見抜いてるんじゃないかなと、私はじつは思ってるんですよ。その結果が、自民党がいまこれだけアベノミクスと言われながら勝てない一つの大きな要因になってるような気がするんです。
これから、やっぱり大きな隠れた、あまり交渉事ですから、外には出にくいんですけども、もっとも我々が注目しなければならない日々の生活に繋がる外交交渉なんで、ほんとうに目が離せないなと。参議院選挙は明確にそれを判断を示したいなと思いますよね」
水野「私たちの食卓に乗るすべてのものが大丈夫なのか、安全なのかというところの問題にも繋がりますし、医療の問題ということは、つまり命の問題がTPPだということになってくるわけですね」
<終わり>
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