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安倍首相のトホホな論争術
http://gendai.net/articles/view/syakai/142998
2013年6月19日 日刊ゲンダイ
安倍晋三首相と細野豪志民主党幹事長のフェイスブック(FB)・バトルがおもしろかった。何がおもしろいって、安倍の論争術のトホホなレベル、その背景となる頭の構造が透けて見えたことである。
発端は、小泉政権時代の日朝外交の裏方を取り仕切った田中均・元外務省アジア大洋州局長が毎日新聞12日付のインタビューで、安倍政権の歴史認識などをめぐる右傾化ぶりが国際社会で「日本が自己中心的な偏狭なナショナリズムによって動く国だというレッテルを貼られかねない状況が出て来ている」と、正面切って批判したことである。
安倍は即座に自身のFBで、その批判にはまったく答えることなく、02年10月に拉致被害者5人が“一時帰国”した後に、「返すべきだ」と主張した田中に対して自分は「日本に残すべきだ」と主張して対立したというエピソードを持ち出し、正しかったのは自分で、田中は「外交官として決定的判断ミス」をしたのだから「彼に外交を語る資格はない」と断じた。
それに細野が絡んできて、14日と15日のFBで「最高権力者はこのような発信を自制すべきだ」と指摘すると、安倍はまたポーランドの地から「かつて貴方はNHKで『自民党には戦争をやりたがっている人がいる』と言い、私が『それは誰のことか』と問い詰めても答えなかった。民主党は息を吐くように嘘を言う」との趣旨の発信を書き込んだ。このように、批判されただけでカーッと血が上って、批判の内容にまともに答えるのでなく、まったく別の話を持ち出して相手が自分を批判する資格などない人物であることを証明しようとするのが安倍だ。これは論争術としては下の下に属する。また、安倍の「侵略の定義未定論」や橋下徹の「慰安婦必要論」のように、「自分だけじゃない。他の人もやっていたじゃないか」というスリカエで自分の責任を曖昧にしようとするのも、もうひとつの下の下で、政治家が絶対に口にすべきことではない。
付け加えれば、02年の安倍・田中論争では、田中のほうが正しかった。安倍が後先を考えずに“一時帰国”の約束を破ったことで、その後10年以上にわたって日朝対話は断絶し、それが6カ国協議を停滞させる一因となったことに米中韓も不快感を抱いている。これについて安倍は田中と正々堂々と公開討論をしてもらいたいものだ。
(ジャーナリスト高野孟)
〈たかの・はじめ〉 1944年生まれ。「インサイダー」「THE JOURNAL」などを主宰。「沖縄に海兵隊はいらない!」ほか著書多数。
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