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「国民所得150万円増でも給料増えず 浜矩子氏「アホ」と一蹴 (週刊ポスト)」
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14日に閣議決定された「日本再興計画」でも、GNIなる経済指標が多用されている。
高度成長期にはGNP(国民総生産)、80年代からはGDP(国内総生産)がメインに使われてきたが、数年前からGNI(国民総所得)なる概念が浮上し、安倍政権の「日本再興計画」で主役の座に躍り出た。
GNIはGNPとほぼ同じ概念(捉え方が分配か生産かの違い)だから、先祖帰りしたとも言える。
GNPが、戦後世界で自国企業がグローバルな経済活動を通じて稼いでいた米国にとって必需の経済指標であったように、GNIも、国内で産業空洞化が進む一方、海外展開を強化している日本のグローバル企業の活動を“正当化”するための主要経済指標チェンジとみることができる。
日本経済におけるGDPとGNIの大きさを比較すると、GNIが1.03倍に達する。
この値は、(「海外からの要素所得の受け取り」−「海外への要素所得の支払い」)がプラスで大きいことを意味する。
ちなみに、米国は1.01倍弱で、韓国はプラマイゼロである。
それはともかく、「週刊ポスト」の記事に拠れば、アベノミクスなる名称を嬉々として振り回している安倍首相も、経済論理にはうといようだ。
「表現を変えたのは8日の都議選の街頭演説からだ。1か所目の墨田区曳舟の駅前では、恐る恐る聴衆の反応を確かめるように「国民の平均の所得」と言い換え、2か所目の両国になると「収入が増える」、そして3か所目の江東区豊洲に来ると自信満々に「平均年収を150万円増やすことをお約束します」と開き直った。
そして翌日、NHKの日曜討論で間違いを指摘されるとこんな言い方をしたのである。
「国の貿易や特許料も含めた総収入の1人あたりですが、これが増えていかなければ国民の所得も増えないのは当然」」
安倍首相のNHK番組での言い訳であるが、実のところ、まったく言い訳にもなっていない。
まず、GDPではなくGNIを説明する状況で、(国際)特許料収入はいいとしても、すでにGDPに含まれている貿易をわざわざ持ち出すのは“不適当”である。
輸出は、輸入原材料などを除きほとんどの付加価値が国内で生産され、輸入は、最終販売価格から輸入価格を差し引いたものが国内で生産された付加価値となる。(純輸出をGDPのプラス要素としているのは屋上屋で経済論理としてはおかしい)
GNIに関わる貿易といえば、日本企業のタイ法人がそこで生産した製品を輸出して稼いだお金を日本企業に配当として支払うような場合であるが、ブレイクダウンすれば貿易も関係するという次元のものでしかない。
次に、「これが増えていかなければ国民の所得も増えないのは当然」というのは、“これ”がGNIの「海外からの要素所得の受け取り」額を指すのであれば、真っ赤なウソである。
一人当たりGDPが10万ドルを超えて破格の世界一であるルクセンブルク(人口50万人ほど)は、GNI/GDPの値が0.82である。金融立国らしく、「海外への要素所得の支払い」が「海外からの要素所得の受け取り」を大きく上回っている経済状況を示している値である。
GNIの大きさは、どのみち一人一人の実入りに直結する話ではないが、その国家に属する国民の所得水準を決するものではない。
(フィリピンのように海外出稼ぎのボリュームが大きい国家では、国民が国外で得る報酬も含まれるGNIが大きな意味を持っているが、日本の場合は、圧倒的に外国人に支払う雇用者報酬のほうが多い)
GDPも、平均値はともかく一人一人の実入りに直結する話ではないが、GNIが大きくなるよりは、GDPが大きくなる方が諸個人の実入りも増える可能性が高い。
なぜなら、付加価値に占める勤労者所得の割合を示す労働分配率は60%を超えているからである。
GDP(国内総生産)であれば、その値が100増えれば、勤労者所得も60は増えると考えることができる。
GNIの「海外からの要素所得の受け取り」は、その原資となった付加価値を生産した勤労者に支払われた残りの一定部分であり、日本の勤労者の所得が増加する保証はないのである。
せいぜい、所属する企業の経営基盤の厚みが増すとか、海外からの所得が配当などを通じて国内にも分配されそれが消費などにまわることでGDPが増加するといった程度である。
GNIの「海外からの要素所得の受け取り」が国内の家計や法人そして政府部門に還流するのなら、GDPにその成果がちゃんと反映するから、ことさら、GNIを持ち出す必要はないのである。
最後に、「国の貿易や特許料も含めた総収入の1人あたりですが、これが増えていかなければ国民の所得も増えないのは当然」という説明は、“供給→需要”という経済論理が見えていないことの証左である。
勤労者の所得(賃金)を増やすことがGDP(GNIも)を増大させることであり、GNIの増大が勤労者所得を増大させるという説明はマヤカシである。
それは、グローバル企業を中心に270兆円もの内部留保を抱えながら、賃金水準を切り下げ続けてきた現実を見るだけでわかる。
鶏と卵のどちらが先かといった神学論争に陥ることなく、余力のある企業が先陣を切って賃金を増加させていくことでしか、デフレ状況から抜け出す道はない。
変動相場制における国際競争力は、投資と智恵による生産性上昇でのみ強化できる。賃金水準の切り下げは、一時的には国際競争力のアップに資するとしても結局のところ、為替レートの上昇(円高)で無効になるのである。
積極的な投資で生産性の上昇をはかり、その成果を勤労者の所得増加につなげる(デフレを防止)ことこそが、唯一持続的な経済成長の道である。
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