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TPP参加の旗振りに精を出し、そのために「韓国の成功例」をあれこれ持ち出して唆してきた日経新聞の記事である。
記事でいちばんのポイントは、「韓国にとってTPP加入は易しくない。15年かけて関税を撤廃する牛肉に関する米韓合意をTPPで見直すことになれば、それだけで大問題になる」という部分である。
この記者(日経新聞ソウル支局長 内山清行氏)は、TPPが米韓FTAより“過酷”な経済連携である内実を知っていると思われる。
米韓FTAでは15年かけて牛肉の関税を撤廃することになっているが、TPPで見直すことになればそれだけで大問題になるということなら、安倍政権が聖域とするコメや牛肉などの品目も、15年も経たないうちに関税が撤廃されるということになる。
「朴槿恵(パク・クネ)政権の新たなFTA行程表では、中国との交渉を最優先する一方、環太平洋経済連携協定(TPP)には距離を置く姿勢を決め込んだ」背景に、中国との関係があるとは思う。朝鮮半島は中国の勢力下で、日本など海洋諸国家は米国のままという“密約”があるような気がする。
韓国政府高官は、「米韓FTAまではいいがTPPは駄目、というのが中国からのシグナル」と言ったり、「アジア覇権を狙う中国にとって韓国は自らの勢力圏内にいるべき存在。中国包囲網といわれるTPPへの韓国加入が面白いはずがない」と解説したりしたそうだが、中国がそのレベルで注文を付けるとは思えない。
中国は、日本ともFTAの交渉を進めている。中国としては、日韓がTPPに参加したなら、そこで提示した“最恵国待遇”を自分へも適用するよう求めれば済むことである。
「韓国の対中貿易は今や対米、対日の合計を上回る」ことからも対中関係の強化に乗り出すのは理解できるが、「北朝鮮の暴発を防ぐ安全弁としての役割も重要。中国の意向は無視しにくい」ということについては、対北朝鮮政策における中国は、調整役のレベルであり、米国の存在に較べれば“軽い”ものである。
なにより、中国自体が、韓国とは無関係に、東北部で起こりうる混乱北を回避するため、朝鮮の暴発を防ぎたいと思っている。
日経新聞の記者も、直接の利害関係が発生する日本ではなく韓国についてなら冷静な事実報道ができるようで、「韓国は2003年に「同時多発FTA」という攻撃的な戦略を掲げて以降、FTA網づくりにまい進してきた。今では締結国・地域と自国の国内総生産(GDP)の総額は世界の56%になった。チリ、メキシコに次ぐ第3位だ。ところが、今は反省が先に立つ。「潤ったのは財閥系の輸出企業だけ」「国内の利害調整を軽視してきた」。経済格差への不満が、FTA戦略への批判と共振している」と韓国経済社会の厳しい実状を示している。
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[地球回覧]FTA大国韓国の憂鬱
米中綱引きに身構える
韓国の自由貿易協定(FTA)戦略が曲がり角を迎えている。14日に発表した朴槿恵(パク・クネ)政権の新たなFTA行程表では、中国との交渉を最優先する一方、環太平洋経済連携協定(TPP)には距離を置く姿勢を決め込んだ。米欧との大型交渉をまとめたかつての勢いが影を潜めたのは、一体なぜなのか。
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朴大統領の初外遊となった5月上旬の米国訪問。北朝鮮政策でオバマ米大統領からお墨付きをもらい、議会での英語での演説も好評だった。満点に近い出来栄えの訪米で、韓国側が気に病んでいたテーマがあった。TPPだ。
「ついに米国が本気でTPPへの参加を求めてきた」。韓国政府関係者が身構えたのは今春。4月には米通商代表部(USTR)のカトラー代表補が韓国の参加に期待を表明。表舞台で決断を促した。
TPPはオバマ政権の「アジア回帰戦略」の中核をなす。同盟国の韓国を組み入れようとするのは当然だ。ところが、韓国側は煮えきらない。オバマ氏は結局、TPPを持ち出さなかったが、用意された朴氏の応答要領は「慎重に検討する」。14日発表の新戦略でも、「注意深く検討する」と、様子見とも取れる表現にとどまった。
「米国とのFTAを締結済み。慌てる必要はない」。韓国政府はこう説明するが、もうひとつの理由は対中配慮。「米韓FTAまではいいがTPPは駄目、というのが中国からのシグナル」と、政府高官は言う。中国も関心があるとはいえ、高度な通商ルールを目指すTPPのハードルは高い。
代わりに中国は日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を重視する。「アジア覇権を狙う中国にとって韓国は自らの勢力圏内にいるべき存在。中国包囲網といわれるTPPへの韓国加入が面白いはずがない」。先の政府高官の解説だ。
韓国の対中貿易は今や対米、対日の合計を上回る。北朝鮮の暴発を防ぐ安全弁としての役割も重要。中国の意向は無視しにくい。とはいえ広域FTAは世界の流れで、ずっと先送りにもできない。
交渉中の2国間FTAを仕上げながら、タイミングをみてTPPに加入する――。韓国はそんなシナリオを想定する。中韓FTAを締結すれば、中国への義理を果たせる。問題はその後だ。「米国とのFTAにこぎ着けたのだから、TPP参加は難しくない」。韓国政府筋はこう言うが、本当だろうか。
韓国は2003年に「同時多発FTA」という攻撃的な戦略を掲げて以降、FTA網づくりにまい進してきた。今では締結国・地域と自国の国内総生産(GDP)の総額は世界の56%になった。チリ、メキシコに次ぐ第3位だ。
ところが、今は反省が先に立つ。「潤ったのは財閥系の輸出企業だけ」「国内の利害調整を軽視してきた」。経済格差への不満が、FTA戦略への批判と共振している。
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朴大統領は就任後、FTAを担当する通商部門を外務省から切り離し、新設の産業通商資源省と統合した。産業政策との調和を進める狙いで、今後の交渉では中小企業や農業分野の意見を反映させると公約している。
そう考えると、韓国にとってTPP加入は易しくない。15年かけて関税を撤廃する牛肉に関する米韓合意をTPPで見直すことになれば、それだけで大問題になる。反米感情がくすぶる中、米主導のTPPにはアレルギーも強い。
達成感と疲労感――。大統領が強力な指導力でFTAを主導する韓国の姿はもう想起できないのかもしれない。それは歴史問題などで停滞する日韓FTAにも跳ね返る。
(ソウル支局長 内山清行)
[日経新聞6月16日朝刊P.]
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