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ニュースにならない「1ドル100円突破」の裏側
All About2013年05月18日09時30分
すでに日本は貿易(輸出)で稼ぐ国ではない。これは、このブログでも、自著のなかでも書いてきたが、どうしてメディアはこの現実を見ないのだろうか?
今回、円安が進んで1ドル100円をあっさり突破したが、これを歓迎する論調ばかりだ。
たとえば、5月11日付けの「読売新聞」の社説は次のように書いている。
「円安をテコに、自動車など日本の輸出企業は国際競争力が向上し、収益が拡大している。外需主導で生産や設備投資が活発化すれば、雇用は改善し、消費など内需にも恩恵が波及しよう。こうした好循環による、本格的な景気回復に期待したい。」
この論調はまったくの時代錯誤だ。いまや日本の輸出企業は、日本で最終製品を生産していない。もうほとんどが国外に出ている。中国や東南アジアなどに生産拠点を移してしまった。それが、円安で日本に戻って来るとでもいうのだろうか?
戻ってくるとしても、それは工場ではなく、海外で稼いだマネーだけだ。つまり、日本はいまや「貿易立国」ではなく「投資立国」なのである。
したがって、いくら円安になろうと、国内の雇用は改善せず、消費などの内需にも恩恵は波及しない。むしろ、円安が進めば進むほど、輸入コストが増大し、電気料金も上昇するので、日本でモノをつくるのが難しくなる。つまり、残っていた企業も、今後はさらに国を出ていくだけだ。
円が1ドル100円を突破するのと前後して、日本の2012年度の経常収支が発表された。その額は4兆2931億円と2011年度に比べて、なんと43.6%も減少している。この額はピークだった2007年度の5分の1以下だ。
それでも黒字だからまだいいが、貿易収支にいたっては6兆8947億円の赤字だ。これは2011年度の2倍以上というとんでもない額である。かつての日本は大幅な貿易黒字を計上していたが、いまや慢性の貿易赤字国に成り下がっているのだ。
なのに、資源や食糧、生活物質の値上がりをもたらす「円安」を歓迎する理由は、いったいどこにあるのだろうか?
なぜか、メディアは「円安になれば日本経済は復活する」と思い込んでいる。同じく、今回のアベノミクスを歓迎する学者や専門家も、この時代錯誤の理屈を信じ込んでいる。本当に不思議だ。
ところで、円安が進行しても、メディアがいっさい書かないことがある。それは、日本のGDPが大幅に落ち込むことだ。世界経済の指標はすべて、基軸通貨のドルベースである。また、世界にあるモノとサービスの価値は、ドルによって測られる。
そこで、ドルベースで日本のGDPを見ると、今回の円安で日本のGDPは大幅に減ってしまう。
以下に示すように、2011年1ドル約80円のときの日本のGDPは約473兆円であり、これをドル換算すると5.87兆ドルだった。
しかし、いまや1ドルは100円になり、これは2008年当時に戻ったことと同じになる。とすると、GDPの473兆円が今年も変わらないとすれば、1ドル100円換算なら、日本のGDPは4.73兆ドルになる。つまり、ドルベースでは、今回の円安で約1兆ドルがすっ飛んだことになるのだ。
もし、さらに円安が進み1ドル150円などということになれば、どうなるだろうか?すでに中国に抜かれて世界第3位に転落した日本だが、じきに「経済大国」の看板を降ろすときが来てしまうだろう。
(山田 順)
http://news.livedoor.com/article/detail/7685765/
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