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2013-06-08 陽光堂主人の読書日記
現在、フランスのオランド大統領が来日中で、日仏で原発輸出拡大を確認し合っている最中ですが、米国からこれに水を差す情報がもたらされました。米国で原子炉2基を廃炉にするというのです。
ロイターは、本日付で次のように報じています。
(http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTJE95601Q20130607)
米SCE、三菱重工製蒸気発生器の不具合で停止中の原子炉2基を廃炉に
[7日 ロイター] - 米カリフォルニア州サンオノフレ原発を運営する米電力会社サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)は、蒸気発生器の配管の問題で運転を停止している原子炉2基を廃炉にすることを決定した。
両原子炉は、蒸気発生器の配管の問題を受け2012年1月以降、運転を停止していた。破損した蒸気発生器は三菱重工が製造した。
両原子炉はそれぞれ1983年と1984年に稼働開始。米国で今年に入ってから廃炉が決まった原子炉の数はこれで4基となる。
このタイミングでの発表は明らかに意図的ですが、問題は破損した蒸気発生器が三菱重工製であることです。こうした場合、米国は必ず賠償金を求めてきます。この原発を運営するエジソン社は、三菱重工に損害賠償を請求するそうです。
朝日新聞は、本日付でこう報じています。
(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130608-00000008-asahi-int)
三菱重工製配管破損で米原発廃炉 電力会社、賠償請求へ
【ロサンゼルス=藤えりか】三菱重工業製の蒸気発生器の配管破損で昨年から停止中の米カリフォルニア州南部のサンオノフレ原発について、運営する南カリフォルニア・エジソン社は7日、全2基を廃炉にすると発表した。住民の反対を受け、再稼働をめぐる米原子力規制委員会(NRC)の判断が長引き、コスト面から「維持は不経済」と判断した。同社は三菱重工に損害賠償を請求する。
エジソン社は昨年10月、2基のうち1基を7割の出力で稼働する計画をNRCに出していたが、市民団体や一部議員が反対、NRCも公聴会を重ねるなどして判断に時間をかけてきた。エジソン社は「再稼働できるかどうか、できたとしてもいつになるか不安定な状態がこれ以上続くのは、利用者や投資家にとってよくないとの結論に至った」とコメントを出した。廃炉は長年かけて完了させる。
エジソン社は廃炉に伴い、約1100人のレイオフを発表。NRCは昨年、三菱重工の「不十分なコンピューター分析が設計ミスを招いた」との調査結果を明らかに。一方、両社が設計に問題があることを把握しながら安全上の改良をしなかった、とする内部文書を米上院議員が明らかにしており、責任の所在をめぐって紛糾する可能性もある。
エジソン社は余りたちの良くない会社のようですが、製品を納入した以上、三菱重工の責任も免れません。この動きは、トルコに対する原発輸出にも影響してきます。
周知の如く、安倍内閣は原発輸出を促進する構えで、先月3日に行われた安倍とトルコのエルドアン首相との首脳会談では、黒海沿岸のシノップ地区に4基の原発を建設すべく協力することで合意に至りました。この原発には、三菱重工とフランス原発プラント大手、アレバの合弁会社ATMEAが開発した最新の炉型「ATMEA1」が採用される予定です。
アレバは、福島第一原発事故の際、法外な値段で汚染水処理を引き受けています。当時の大統領サルコジが駆け付けて来て話を決めましたが、今回も同様で、トルコ原発建設に向けて話し合いが持たれたはずです。
しかし、トルコに納入予定の最新の炉型製造に関わっている三菱重工が損害賠償請求を受けるとなると、この商談も暗雲が漂って来ます。米国が嫌がらせをしたわけです。
原発製造は核開発に繋がりますから、トルコを介しての核開発拡散を懸念したためと見られますが、日本企業の原発関連技術の核心部分は米国が握っていますから、日本が原発建設してもコントロール出来ます。しかし、フランスのアレバと組んだとなると、そういうわけには行きません。このため水面下で暗闘が繰り広げられているようです。
日本のエスタブリッシュメントは必ずしも米国に従っているわけではなく、独自の動きをすることもあります。フランスと組んだこともその表れの一つと見られます。(日本政府は、米国の支配層と日本のエスタブリッシュメントによって動かされています)
米国には、シェールガスの売り込みを図りたいという側面もあります。4月に天然ガス開発会社のGMXリソーシズが破綻したことから判るように、シェールガスは生産過剰で価格が値崩れし、採算が合わなくなっています。この現状をなんとかする必要があるのです。
福島第一原発で大事故が起きたのに原発を輸出するなんて烏滸(おこ)の沙汰ですが、この時事故を起こしたのは沸騰水型で、三菱重工の原子炉は加圧水型ですから、安全性に問題はないということなのでしょう。しかし今回、米国によって三菱の方式も味噌をつけられた形となりました。
原発はなくすべきだと思うので話が潰れることは悪いことではありませんが、米国の覇権主義や強欲資本主義が幅を利かせている現状は到底容認できません。政府は、日本の原発技術は世界一だと言っていますが、そんなことを真に受けているのは日本人ぐらいです。
核心部分はブラックボックスのままで米国企業から教えてもらえず、我国の原子炉メーカーは周辺技術で潤っているに過ぎません。そして事故が起きると、責任を取らされるのは日本のメーカーで、悲しいことにこれが現実の姿なのです。
こんなバカな構造は早急に改めるべきですが、金に目が眩んだ連中は止めるつもりなどありません。誇りを失った金の亡者ほど始末の悪いものはありません。日本人の劣化は急速に進んでおり、目を覆わしめるものがあります。
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