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2013/6/6 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
市場の反応は正直だ。
きのう(5日)、安倍首相が成長戦略の第3弾を発表。夕刊の締め切り時間とマーケットを意識して、わざわざ取引時間中に講演したのだが、安倍のスピーチの途中から、株価が見る見る下がり出した。あれよあれよで終値は1万3000円割れ目前まで下落、前日比で518円89銭安。今年3番目の下げ幅となった。
「もともとの期待も大きくなかったし、成長戦略の中身はすでに織り込み済み。とはいえ、まさか、ここまで売られるとは予想外でした」(銀行系エコノミスト)
薬のネット販売解禁や国家戦略特区など、事前に報道されていた内容で新鮮味に乏しかったのは確かだが、急落の理由は“鮮度”だけではない。中身の悪さ、具体性の乏しさ。要するにハッタリだらけなのだ。
安倍は「達成すべき目標を年限も含めて明確にする」と言って、「国民総所得(GNI)を10年後に150万円増やす」とブチ上げた。一瞬、景気がいい話に聞こえるが、この数字には裏がある。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
「報道では所得150万円増という部分ばかりが強調されたので勘違いしそうになりますが、決して皆さんの給料が150万円増えるわけではありません。日本が1年間に稼ぐお金が3%増えれば、それが1人当たり150万円というだけの単純計算です。GNIには、日本の企業や個人が海外に投資して得た配当収入や利子も含まれる。企業が儲けても、その分が社員に丸々還元されるわけではないし、成長戦略の中身を見るかぎり、3%の成長実現も難しいと思いますね」
第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏も「なぜ1人当たりの名目GDP増加ではなく、GNIなのか」と疑問を呈していたが、GDPでは都合が悪いのだろう。労働人口の減少で、今後はGDPベースでの成長は難しい。GNIならば、対外資産から得られる所得を増やすことで高い成長率を見積もれる。安倍の成長戦略は一事が万事、こんな調子で、ウソとゴマカシのオンパレードなのである。
◆派手な形容詞と数字を並べただけの空疎さ
「3年間で民間投資70兆円を回復します」
「2020年にインフラ輸出を30兆円に拡大します」
「2020年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円にします」
「10年間で世界大学ランキングトップ100に10校ランクインします」
こうした「宣言」も口からデマカセみたいなものだ。どうやって目標を達成するのかというと、とたんに怪しくなるからだ。大学ランキングなんて、外国人の職員を増やせば、グローバル化の評価が上がると踏んでいるらしいが、そんなことをしたら、日本人職員は失業してしまう。つまり、机上の空論なのだが、こうなると、疑いたくなるのが安倍の本気度だ。実現可能性なんてどうでもいいのではないか。派手な見出しを並べて、参院選までイケイケのムードを引っ張れればいい。その程度の軽いノリなのではないか。
だからこそ、安倍の口からは「世界一」「世界の真ん中」「世界最先端」「革新的」「最大限」なんて大仰な言葉がやたらと出てくるのだろう。中身が空疎だから、形容詞だけ派手になる。やたらと数字を並べて、具体的であるかのように装う。口先政治家の薄っぺらさがよく分かる。
「こんなスピーチを聞けば、誰だって株を売っ払いたくなりますよ。大風呂敷を広げているようでいて何ひとつ新しいことがないし、その中身がまたヒドイ。講演が始まった途端に株価が急落したという現実が、アベノミクスの失敗を物語っています。期待感だけで膨らんだアベノミクス相場ですが、最後の矢がこれでは目も当てられない。中身のしっかりした第4の矢を放たないと、株価は大暴落しますよ」(経済アナリスト・菊池英博氏)
これが専門家の声なのである。
◆日本に必要なのは成長より富の分配だ
アベノミクスは、成長戦略で経済が復活すれば日本が再生すると喧伝してきた。「第3の矢が本丸だ」とも言ってきた。それがこのザマ。安倍自身が「株価が下がれば、アベノミクスは終わりだと言う人がいる」と気にしていた株価はズッコケた。3本の矢はもう折れたも同然だ。
「そもそもアベノミクスの成長戦略は、ピントがズレているのです。今の日本の課題は経済成長を達成することではない。たしかに高度成長期から見れば、成長の軌道は緩やかになっていますが、マイナス成長を続けてきたわけではないのです。それより問題なのは、豊かさの中の貧困です。日本はこれだけの経済大国なのに、OECD加盟24カ国の中でメキシコ、アメリカ、トルコなどに次いで貧困率が高い。富は十分形成されているのに、どんどん格差が拡大する方向に進んでいる。これは明らかにおかしくて、富の分配が間違っているのです。今の日本に必要なのは、成長戦略ではなく分配です」(同志社大教授・浜矩子氏=国際経済学)
それなのに、安倍の成長戦略は「小泉構造改革の出がらしみたいなメニュー」(菊池英博氏=前出)で格差拡大を煽っている。柱に据えている規制改革は米国と大企業を喜ばせるだけだし、グローバリズムの名の下に首切り自由化のような弱者切り捨てを盛り込もうとしている。目指すべきベクトルが違うのである。
しかも、安倍がやろうとしている規制緩和はイカサマだ。既得権者のための規制緩和で、新規参入や活性化、価格競争につながらないのだ。元経産官僚の古賀茂明氏もこう指摘する。
「アベノミクスの3本目の矢は的外れで、距離も足りません。民間の活動を活性化させる規制改革にしても、口では『一丁目一番地』とか『官業を開放』などと言っていますが、本当に必要なところに切り込もうとしない。参院選でお世話になる業界団体の顔色をうかがっているから、エネルギーの発送電分離さえどうなるか分かりません。要するに、既得権と戦う勇気がないのです」
◆高度成長期を「取り戻す」という幻想
安倍は改革を気取っているが、その一方で公共事業バラマキを加速化させ、昔ながらの土建屋政治を復活させようとしていることも忘れちゃいけない。原発再稼働もなし崩し。既存の電力会社はみ〜んな温存させる気だ。早い話、安倍のやろうとしていることは支離滅裂なのである。
「安倍政権のメーンテーマが『日本を取り戻す』だから仕方ないのかもしれませんが、出てくるのは高度成長期のような時代錯誤な発想ばかりです。安倍首相は、成長戦略の基本は『企業が世界一活動しやすい国にすること』と言っています。その結果、何が起こるか。高度成長が見込めない以上、経済成長の役に立たない者は切り捨てられる。賃金は抑え込まれ、人材の選別が厳しくなる。脱落者が増え、格差はますます拡大します。つまり、経済社会を支える土台が狭くなっていくのです。労働機会を与えられた一握りの者もコキ使われてロボット化し、画一的で創造性の低い社会になっていくでしょう。そんな社会からは何も生まれません」(浜矩子氏=前出)
安倍は、きのうの講演の終盤、こんなことを言っていた。
「停滞の20年から再生の10年へ。チャレンジ、オープン、イノベーション、そしてアクション。成長戦略によって、日本経済を停滞から再生へと大きく転換していきます」
あれこれ横文字を並べてみたところで、この政策では再生など無理だ。理念も哲学もない場当たり首相が居座る限り、この先もまた「失われた10年」が続くことになる。
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