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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130604-00000005-pseven-soci
週刊ポスト2013年6月14日号
官僚、秘書、地方議員……政治家の“前職”は多種多様だ。その中で、40人という大勢力と化しているのが、「弁護士(法曹)出身」政治家である。彼らが拠って立つ論理は、「現行法を絶対的に守り、法の下で行動する」というもの。一見正しいように思えるが、立法府に身を置く政治家としては齟齬を生じることも多々ある。弁護士政治家たちによってこの国の政治は歪められてはいないか──。
現在、国会には衆参約40人の弁護士議員がいる。出身職業別では国会議員の3大供給源と呼ばれる官僚、秘書、地方議員出身者に次ぐ“大派閥”だ。自民党は谷垣禎一・前総裁(法相)を筆頭に高村正彦・副総裁も弁護士出身。閣内には谷垣氏のほか、稲田朋美・行革相、森雅子・少子化担当相の2人がいる。
自民党と連立する公明党の山口那津男・代表、野党では民主党の江田五月・元参院議長や枝野幸男・元官房長官、さらに福島瑞穂・社民党党首など大物がズラリと並ぶ。
「法律に強くて演説も上手だから、政治家にふさわしいと有権者に受け入れられやすい」
自民党ベテラン議員はそう説明するが、こんな“本音の理由”を付け加えた。
「本業があるから、落選時に生活の面倒を見なくて済むし、何度も選挙に挑戦できるだけの余裕がある」
そうした弁護士政治家の増加が日本の政治に歪みをもたらしたことを見落とすわけにはいかない。
仙谷由人氏(落選中)、枝野氏が官房長官として政権中枢を担った菅内閣では、まさに「弁護士政治」でこの国は深刻な事態に陥った。
2010年9月に尖閣諸島で発生した中国漁船による海上保安庁巡視船への体当たり事件は、いまに続く日中緊張のきっかけとなった政府の弱腰対応として記憶に新しい。当時、海保は中国人船長を公務執行妨害で逮捕し、中国側は報復としてゼネコンの日本人駐在員を拘束、日中関係は一気に緊張した。船長を裁判にかけるか釈放するか、菅内閣の政治判断が問われた。
ところが、事件対応の指揮を執った弁護士の仙谷官房長官は、「国内法に基づいて粛々と対応する」といって那覇地検に対応を任せ、同地検は船長を処分保留で釈放し、中国に強制送還した。首相と官房長官が政治家の役割を放棄し、検察という行政機関に政治的、外交的判断まで委ねたことはこの国の統治能力を根底から揺るがす失態だった。
仙谷氏が「弁護士政治家」の真骨頂を発揮したのはここからだ。国会で野党から政府の対応を批判されると、
「谷垣さんは、逮捕した段階で釈放する手もあったということをおっしゃいます。これは、捜査に対する政治の介入、(中略)次の段階で、法務大臣が検察庁法14条を行使して刑事司法にもっと厳しく捜査をやれというのも、あるいはやるなというのも、これは指揮権の発動です」
と、法律論を振りかざして論点をすり替えたのだ。この事件はそれでは終わらなかった。政府の対応に義憤を感じた海保の主任航海士が、国民に真実を知らせるために中国漁船が巡視船に突撃する映像をネットにアップし、自ら名乗り出たのだ。
仙谷官房長官は、「公務員が故意に流出させたとすれば明らかに罰則付きの国家公務員法違反になる」とあくまで法的処分を主張し、航海士は書類送検され、国家公務員法の処分を受けて退職を余儀なくされた。
巡視船に体当たりした中国人船長は釈放、非を訴えた航海士は処分──国民には到底納得できないアベコベの結末だった。
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