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2013年06月01日 世相を斬る あいば達也
先ずは、以下の朝日新聞の記事を読んでいただこう。
≪ 中国報道官、TPP加入「可能性を検討」 日米は否定的
中国商務省の沈丹陽報道官は、「環太平洋経済連携協定(TPP)に加入する利害と可能性を検討している」と一部中国メディアとの会見で語っていたことがわかった。複数の中国メディアが報じた。中国はこれまで貿易や投資の自由化をめざすTPPには慎重な姿勢だったが、自国抜きの枠組みづくりが進むのを警戒して態度を変えつつある。
沈報道官は30日の会見で「中国は常にTPP交渉の行方に注目しており、国内の関連部署や産業界にも聞き取りを続けている」とも語った。中国では、貿易ルールが米主導で進み、TPPが「中国包囲網」となることへの警戒が高まっている。7日からの習近平(シーチンピン)国家主席とオバマ米大統領との首脳会談を前に、貿易自由化について柔軟さを示した、との見方もある。
ただ、TPP交渉は10月までに大筋合意をめざしている。それまでに中国が、日本を含む交渉参加12カ国の「了解」を取り付けるのは難しいとみられる。
米政府は「中国がTPPに入りたいなら、拒むものではない」(米通商代表部高官)との立場だ。TPP参加国が増えて輸出が伸び、国内経済の回復につながることを期待する。ただ、いまのところは周辺国とTPP交渉を進め、中国に関税引き下げや、貿易や投資の規制の緩和を迫る戦略だ。
日本にとって最大の輸出先の中国がTPPに加われば、中国が輸出品の7割にかける関税が撤廃され、日本の工業製品の輸出が増えるが、逆に中国から安い農産物が大量に入りかねない。とはいえ、中国はこれまでもTPPへ「関心」を示したことがあるため、日本政府内では今回の発言で「参加の現実味が高まったとは思えない」(経済産業省幹部)との見方が強い。(北京=斎藤徳彦、ワシントン=山川一基)≫(朝日新聞)
このニュースを聞いて、一番腰を抜かしたのは長谷川幸洋だろう(笑)。なにせ、彼の意見は“TPPは日米同盟の一環だ”なのだから、もう論理が目茶苦茶になってしまう。長谷川氏はさておくとして、日本人のTPPに関する認識から行くと、中国のTPP参加は寝耳に水だろう。日米同盟強化と読んだ者もいる、中国包囲網と読んだ者もいる、WTOに変わる自由貿易枠組みと読んだ者もいる、EUユーロ圏に対抗する枠組みと云う見方もあった。しかし、最も真実に接近した考えは、パックスアメリカーナの堅持であり、米国の利益枠囲い込みだと解釈していただろう。安倍晋三は、参議院選前のTPP参加表明を控える予定を早めたのは、オバマとの会談の際である。
米国政府が、中国にTPP参加を打診していたとなると、TPPそのものの性格を、もう一度考え直しておく必要はありそうだ。勿論、米国政府が愚図愚図しえいる日本政府の尻を叩くために、日本の替わりに中国も悪くない、と云う姿勢を外交テクニックとして利用した可能性もあるのだろう。現に、安倍はその後、オバマと会って参加を表明した。しかし、外交テクニックに過ぎない筈の“中国さん、お入んなさい”の言葉を、今度は中国が対米外交テクニックとして引っ張り出してきたとも解釈できる。
中国が現在の70%前後の関税や国営企業群の整理縮小など容易だとは思えないし、ISD条項なんてのは笑止の規定であり、飲むわけがないと云うのが常識的理解だ。しかし、あり得ない想定を突きつけられたオバマ政権は、それなりの厄介さを抱えることになる。TPP年内妥結の行方も左右する。どうせ参加の意志もないのに、“入ろうかな”と言い続けるだけでも、かなりの圧力である。少なくとも隷米傾向が顕著な日本に比べれば、簡単に御せる相手ではないのだから、面白い展開も予想される。TPP反対派が懸念している問題を中国が蹴散らしてくれるかもしれない(笑)。
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