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2013-05-31 07:00:11 生き生き箕面通信
「国家と司法、国家と人権、国家と私たち――それは100年経った今も重い問いとして私たちの胸に谺(こだま)し続けている」と、前書がありました。ドキュメンタリー映画「100年の谺」のチラシの前書です。
「幸徳秋水の大逆事件」とは100年以上前の1910年(明治43年)に当時の検察が、明治天皇爆殺を企てたとする事件の容疑者として幸徳秋水らを逮捕、秘密裏の裁判で絞首刑12名、無期懲役12名などの有罪判決を下し、あっという間に処刑してしまったものです。
3年前にNHKがETVで、この事件を国家のフレームアップ(でっち上げ)として関係者の名誉回復を現在も粘り強く続けている人たちの動きを伝えた映像を流したので、ご覧になった方もおいででしょう。
この事件を手始めに大衆運動の捜査・検挙を主導したのは、山形有朋、桂太郎、平沼騏一郎らです。その後、社会主義者らを根絶やしにする逮捕、暴行が徹底的に行われ、日本の民主主義・人権擁護運動は長い「冬の時代」に置かれました。そして、軍国主義がまかり通る時代を招き、太平洋戦争へ突入していったのでした。
戦後、「大逆事件の真実をあきらかにする会」を中心に再審請求運動が進められています。最高裁は1997年以降、再審請求棄却および免訴の判決を下しました。免訴とは、有罪とも無罪ともしない、途半端な判決です。
フランスでは、日本のでっち上げ事件に先立つ1894年(明治27年)に、やはり国家によるでっち上げで有名なドレフュス事件が起こりました。フランス陸軍大尉のユダヤ人ドレフュスがスパイだったとする事件です。
これがでっち上げだったということが判明したあと、人々の批判が高まり、自由と民主主義擁護・共和制擁護派が大勢を決しました。以後、フランス政治の主導権を握ることにつながり、現在のオランド・仏大統領は社会党第一書記(党首)を経て、現職のサルコジ氏を破り大統領に選出されました。
日本の国家権力は、フランスとは対照的に民主主義・人権擁護派を抑え込む遺伝子を継承することに執念を燃やし続け、その後もさまざまな手法をも駆使して民主主義・平和・人権運動を抑え込んできました。
最近では、小沢一郎氏の政治資金にからむ「陸山会事件」が、国家権力が暴走した典型的なえん罪事件です。陸山会事件は「無罪」判決が確定しましたが、検察の人権無視の遺伝子は今も生き続けています。
問題は、日本のジャーナリズムが機能不全なことです。幸徳事件でも、当時の新聞は沈黙を守り、権力を監視知る役割を果たせませんでした。現在もまた、「無罪判決」によって小沢氏のえん罪が確定してからも、主要メディアは「灰色だ」と、あたかも有罪を逃げ切った”犯人”であるかのような扱いです。
そして多くの国民も、「小沢は終わった」というメディアの世論操作に踊らされています。フランスと日本の大きな違いは、人々の中に培われている人権に対する意識といえないでしょうか。日本では、私たち庶民の中の人権意識がきわめて「ゆるい」といえそうです。どうしましょうか。
映画「100年の谺」は6月6日まで、十三の第七藝術劇場で上映中です。
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