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独立の思考 posted with amazlet at 13.05.29 孫崎 享 カレル・ヴァン・ウォルフレン 角川学芸出版
孫崎&ウォルフレン対談本『独立の思想』第二弾:「TPPの本質」「ナショナリズムと愛国者」「憲法に戦争放棄を入れた理由」etc
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2013年05月30日 日々坦々
孫崎&ウォルフレン対談本『独立の思想』は、読めば読むほど新たに気づかされることがある。
この本を3回通り読んで、益々、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の世界を俯瞰した見方に驚き、と同時に自分の考えが整理できた。是非、一人でも多くの人に読んでほしい本である!
その辺を、第二弾のツイートをした。
■「メディア&陰謀論」
閉塞感の打破ということでは私は「市民とメディア」の力に期待しています。これまで日本では新聞などの既存のメディアに対して市民が反メディア・キャンペーンを起こしたことはありません。しかし、そうした運動が起きれば日本の改革の大きな原動力となるでしょう。ウォルフレン『独立の思考』P158
既存メディアは閉鎖的な日本を生み出す片棒を担いできた。イメージだけで政治家を批判し本来論じるべき政策には触れず政局ばかり報じてきた。社会の問題の本質を見抜き、国民を導く役割を放棄し続けている。そんな既存メディアの問題に対してキャンペーンを起こしていくのです。ウォフフレン
「陰謀論」について:世の中には陰謀は確かに存在します。日本を含め、あらゆる国に陰謀はあり国家間で陰謀が図られることはある。ただし「陰謀論」という言い方がされるのは、それを唱える人に対して「頭がおかしい」と指摘するためです。カレル・ヴァン・ウォルフレン『独立の思考』P181
孫崎享氏:私に対して一部「陰謀論者」というレッテルを貼られている。私は国家間の関係や政財界などである出来事が起きた場合に、それが自然に起きたわけでなく誰かの関与があって起きている、それを引き起こした人物の動機は何かに着目し、いかに実行されたかを検証する。それが私の方法論です。
孫崎:「陰謀論」というのは、特定のグループが全ての出来事の背後に存在し、世界を支配しているといった考えです。私の場合は、そうした見方はせず、起こった出来事に対し、それぞれ個別に検証を加えている。ウォルフレン:あなたの分析に対し読者が勝手に「それは陰謀に違いない」と判断している。
「トリガー・インシデント」つまり「引き金となる事件」についての例:ベトナム戦争における「トンキン湾事件」。イラク戦争における「9.11」。ベトナム戦争撤退における「ケネディ暗殺」。太平洋戦争における「真珠湾攻撃」。米国のアジアにおけるプレゼンス維持における「日中・日韓の対立扇動」
ペンタゴン関係者やネオコンたちにすれば「日中間衝突」は望むところかもしれない。一方、オバマ政権を牛耳るもう一つの勢力であるウォール街は「衝突」までは望んでない。日中間で本当に戦争がおきればアメリカへの経済的打撃は計り知れないからです。孫崎享氏『独立の思考』P188
■TPP
菅直人はTPPを「第三の開国」と言った。では「第一」と「第二」は何だったのか?「第一の開国」は、江戸末期、日本は米国との間で不平等条約を強要されました。「第二の開国」は第二次世界大戦の敗戦時で、「第一」よりもさらにひどいアメリカ占領体制を受け入れた。孫崎氏『独立の思考』P189
ウォルフレン:TPPについては多くの人が「市場」に関する協定だと考えています。しかし、それは全く違う。実は「権力」に関する取り決めがなされようとしているわけです。もっと簡単にいえば、アメリカの巨大企業の権力を強化しようとしているだけですよ。『独立の思考』P189
孫崎氏:TPPにおけるIDS条項は企業が国家を訴えられる仕組みのことです。例えば、アメリカの企業が日本で利益を上げられなければ日本の制度に問題があるとして、日本政府を訴えることが可能になる。しかも裁判は、誰が担当し誰が裁くのかも知れない。日本人が決めた法律よりも優先される。
TPPとは、明らかにアメリカが仕組んだ罠なのです。そもそも多国間協定においては、参加国が対等な立場で話し合うことは有り得ません。必ず支配的な地位に就く国が存在し、その国が利益のほとんどを奪ってしまうものなのです。ウォルフレン『独立の思考』P190
ウォルフレン氏:アメリカにはTPPを通じて中国を経済的に孤立させようとの思惑がある。日本が参加すれば中国と他のアジア諸国を隔てる壁が完成することになる。その意味ではアメリカは何としても日本を引き込みたいわけですね。『独立の思考』P190
TPPが本当に日本の利益になるのか?日本にとって最大の貿易相手国は中国です。にもかかわらず、なぜアメリカの方ばかりを向いているのか。日本が米国と接近することで米国経済は順調に成長を遂げてきたが、日本は不況続き。いい加減、日本人は米国に騙され続けていることに気付くべき。孫崎享氏
TPPに関して日本のメディアは「いかにして農業を守るか」という程度の議論しかなされていない。米国の巨大な農業ビジネスには米国政府に加え強力な弁護士の軍団まで後ろについている。日本の農業が米国の餌食になることなど誰も望んでないが日本の報道には全く抜け落ちている重要なポイントがある。
TPPとは米国資本主義の申し子である資金力豊かな大企業に対し、日本政府すら上回る大きな権限を与えるための協定。「貿易拡大」「新しいビジネスチャンスの創出」「発展」といった聞こえの良い言葉で覆われているが、TPPを通じた米国の意図とは新たな植民地政策の実現なのである。ウォルフレン
■憲法問題
ウォルフレン氏:憲法問題について語ろうとすると、どうしても私は旧社会党の罪を考えてしまします。自民党の一党支配が続いていた時代、野党第一党の地位にあった社会党は、まるで夢のような話しかしていなかった。「自衛隊をなくそう」という主張がその典型です。…そういえば「非武装中立」もあった
旧社会党の罪:確かに、日本が太平洋戦争を始めたのは過ちだったかもしれない。しかし、それが現行憲法の維持を主張する理由になるとは思えません。ウォルフレン『独立の思考』P191
冷戦期に米国は「ドミノ理論」(ある一国が共産主義化すればドミノ倒しのように近隣諸国が次々と共産主義化する)を主張していた。確かに今の「テロとの戦い」よりも説得力がある。しかし日本はベトナム戦争に派兵せずに済んだ。これは憲法、そして憲法を擁護する左翼が存在したおかげだった。孫崎氏
憲法九条には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあります。しかし、世界中の誰もが自衛隊を軍隊だとみなしています。外国人の目には、日本人は憲法を真面目に考えていないのかと映ってしまうのです。名称が「軍」かどうかといった問題は、少なくとも外国人には通用しません。ウォルフレン
「戦争放棄」という条項がなぜ憲法に入ったのかを考える必要がある。現行憲法をつくったのはダグラス・マッカーサーで、職業軍人で平和主義者でもない彼が日本の憲法に「戦争放棄」を加えた理由は簡単です。彼は歴史に名を残すために明らかな「戦争犯罪人」である天皇を擁護した。ウォルフレン
マッカーサーは、歴史に自分の名を残す「日本の天皇制維持」を通すためにはアメリカ議会の承認が必要で、議会を説得させるために日本で新しく制定される憲法に「戦争放棄」を盛り込ませた。これが日本の「平和憲法」がつくられた実態。ウォルフレン『独立の思考』P193
孫崎氏:確かに現行憲法はアメリカがつくったものであることは間違いない。アメリカには様々な思惑もあったでしょう。とはいえ、「平和」や「人権」といった理想を体現した憲法になっている。その意味で、現在まで存在意義は失っていないと私は思います。『独立の思考』P193
ウォルフレン氏:あらゆる国家には戦争を始める権利がある。その権利がなくては、国を守ることなどできない。つまりマッカーサーは右手で日本に主権を与えたように振る舞いながら、同時に左手では日本から主権を奪っていったわけです。『独立の思考』P194
ウォルフレン氏の憲法九条私案:「日本は主権国家として他国と同様に交戦権を有する。しかし、過去の歴史の反省に立ち、自らの領土がおびやかされた場合を除き、武力に訴える行為は取らない」これだけで十分だと思います。真の意味での「平和憲法」として、世界の人にも理解を得られるに違いない。
ウォルフレン氏:私に言わせれば、今の憲法は偽の「平和憲法」です。憲法問題に対して日本人は敏感で、私のような主張には反対意見も多いことは承知しています。しかし、日本人は目を覚まし、一刻も早く現在の違憲状態い終止符を打ってもらいたいと思います。『独立の思考』P194
憲法について論じるだけで日本が悪い方向へ行ってしまうと考えている左翼の人たちは、まるでアルコール依存症の患者に対し、アルコールを触らないよう心配しているのと同じです。とにかく憲法には指一本でも触れてはダメだという。日本という国を成熟した大人としてみなしていないから。ウォルフレン
日本の左翼の人たちは、リチャード・アーミテージやジョセフ・ナイといったアメリカのジャパン・ハンドラーと変わらない。私から見れば、左翼を名乗る連中など「偽アメリカ人」でしかありません。一方で改憲を叫んでいるのは右翼勢力で、日本ではナショナリズムが台頭しつつある。ウォルフレン
■ナショナリズムと愛国者
ナショナリズムが盛り上がるとき議論は常に「主権」の問題へと向かう。植民地支配を受けていた国が独立を目指す時、ナショナリズムは国民の拠り所となります。ナショナリズムを通じ国として存在意義や正当性が強調される。つまりナショナリズムと主権とは表裏一体の関係にあるわけです。ウォルフレン
ウォルフレン氏:国民の多くに「何かおかしい」と、アメリカとの関係において日本の主権は守られていないのではないか、と考え始めている。日本の政治エリートたちが長らく見て見ぬふりをしてきた問題に対し国民が目覚め始めているわけです。そうしたこともナショナリズムに火がつきかけている要因。
右翼は戦後の体制に不満を持ち続け憲法はアメリカに押し付けられたものだと考えている。しかし今の日本の状況は「改憲」によってアメリカへの依存がさらに助長されようとしている。本来、右翼はアメリカとの関係強化に繋がる改憲に対し反対の立場をとるべきで右翼も左翼も間違っている。ウォルフレン
ナショナリズムを声高に叫んでいる人たちは、うわべだけのナショナリストなのです。彼らが「反米」にならない理由は簡単です。「反米」では日本の政治システムと対決することになる。しかし、彼らはそこまで望んでいない。覚悟を決めて政治システムと対決するつもりもないのです。ウォルフレン
ナショナリズムは植民地支配を受けていた国が宗主国から独立を勝ち取るためのツールには最適です。独立運動の核となる思想となり人々をひとつにまとめることができる。オランダに支配されていたインドネシアやイギリスから独立したインドもナショナリズムを盛り上げて独立を勝ち取った。ウォルフレン
すでに独立した国の人々に必要なのは「愛国心(patriotism)」です。ナショナリズムと愛国心は区別しなければなりません。ナショナリズムは「自分の国が他の国よりも優れている」という主張ですが、愛国心は「自分の国を愛し、国土や国民を愛する」という考えに基づいている。ウォルフレン
ナショナリズムはイデオロギーの一種です。しかし愛国心は違います。左翼の人たちは「愛国」と聞くだけで「危険な発想」とみなす傾向がありますが、全く勘違いしている。「愛国心」を持つことは極めて健全なことなのです。ウォルフレン『独立の思考』P199
ナショナリズムは「驕り」だと思います。自分の国の方が優れていて、他の国には何をしても構わない、という不遜な態度に繋がってしまう。一方、愛国心は「プライド」です。簡単に言えば、オリンピックで日本の代表選手が金メダルを取れば日本人は喜びます。これは愛国心です。ウォルフレン独立の思考
■日本政治の改革の火種は残っている
日本の政治エリートたちは、揃って「日米同盟を強化せよ」と主張しています。新聞をはじめとする大手メディアも皆、同様のスタンスです。しかしそれが日本の国益に本当に適うのかどうか、もう一度、考えてもらいたい。ウォルフレン『独立の思考』P202
アメリカの外交はネオコン勢力の強い影響下にあります。大統領がブッシュからオバマに変わっても外交方針は全く変わってない。さらにアメリカの外交には戦略らしきものが全くなく、常に行き当たりばったりの政策が続けられている。今後もアメリカは帝国主義的政策をいっそう強めてくる。ウォルフレン
アメリカは世界中で様々な「冒険」に打って出てくる。「日米同盟」重視を唱えれば、日本がアメリカの犯す冒険に巻き込まれていく可能性が非常に高い。それは日本にとって決して好ましい事態だとは思えない。ウォルフレン『独立の思考』P203
日本の政界では1990年代前半に始まった改革を求めるムーブメントが今も脈々と息づいています。民主党政権は倒れても、改革の火種は残っている。改革派の政治家たちが求めてきたのは、真の意味での日本の独立です。アメリカの庇護から脱却し、独自性のある外交を世界で展開する。そのためには官僚主導のシステムを排して、内閣主導の政府を実現する必要があるのです。そうすれば、日本は世界のいかなる国とも堂々と渡り合え、また尊敬も受ける国となれるでしょう。ウォルフレン『独立の思考』P203
日本の政治に対しては絶望感が増しているようです。しかし日本には才能に溢れまたビジョンを持った政治家もたくさんいる。改革に向けた政策を実行sる機会が与えられてないだけなのです。日本人には高い意識を持って誰が改革を成し遂げてくれるのか改めてしっかりと見極めてもらいたい。ウォルフレン
50年前、私が初めて見た日本という国には、明日への希望が溢れていました。そんな日本に私は惹かれ、この国に人生を捧げようと決めたのです。今からでも決して遅くありません。私が愛する日本には、勇気を持って、もう一度、国家としての誇りを取り戻してもらいたいのです。ウォルフレン独立の思考
ナショナリストと愛国者について、孫崎氏は「そういう観点では考えてこなかった」と言った。孫崎氏ですらそうなら、多くの日本人は一緒くたにしているだろうことがよくわかる。
日本が戦後、アメリカから真に独立するためにも、この二つの概念をしっかりと位置付けておく必要がある。ど同時に必要に迫られる時が必ず来るような気がする。
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