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2013/5/29 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
岸信介に待った掛けた憲法学者の国会答弁
「まずは96条の改正に取り組む」「96条の改正は、国民の手に憲法を取り戻すことにつながっていく」――。
高い支持率に浮かれ、改憲手続きを定めた96条の見直しに突き進む安倍首相。国民栄誉賞の授与式という晴れの舞台にも、わざわざ背番号「96」のユニホーム姿で臨んだ。手始めに、改憲発議の条件を「衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成」から「2分の1以上の賛成」に引き下げる。その後は国防軍の創設という段取りだ。
憲法は本来、権力の暴走を食い止めるためのものだ。権力の側が自分たちの都合で勝手に変えるのは許されない。実際、安倍の改憲姿勢は、多くの識者から批判されているが、最近になって注目を集めているのが都立大教授だった憲法学者、戒能通孝の国会答弁である。
そもそも安倍の改憲は祖父・岸信介の受け売りだ。安保で退陣した岸は、亡くなるまで改憲に執着した。その敬愛するおじいさんは1957(昭和32)年8月、改憲のための「憲法調査会」を内閣に設置している。遡って1956年の3月16日、戒能は内閣委員会公聴会に公述人として出席し、こう話していた。
「憲法を批判し、憲法を検討して、そして憲法を変えるような提案をすることは、内閣には何らの権限がないのであります。この点は、内閣法の第5条におきましても、明確に認めているところでございます」
内閣法は第5条で総理大臣の任務について、法案や予算案を国会に提出して一般国務や外交を国会に報告する、と定めている。改憲の提案は任務とされていない。
さらに戒能は、「憲法の改正を論議するのは、本来国民であります。内閣が国民を指導して憲法改正を企図するということは、むしろ憲法が禁じているところであるというふうに私は感じております」「内閣総理大臣以下の各国務大臣は、いずれも憲法自身によって任命された行政官でありますから、従って憲法を擁護すべきところの法律上の義務が、憲法自身によって課せられているのでございます。こうした憲法擁護の義務を負っているものが憲法を非難する、あるいは批判するということは、論理から申しましてもむしろ矛盾であると言っていいと思います」と断じたのだ。
憲法96条の見直しに反対する「96条の会」発起人のひとりで元東大教授の桂敬一氏が言う。
「戒能は、民主主義を守る立場からいくつかの裁判で弁護士を務めた法学界の重鎮です。戒能が指摘した通り、96条は政府の手を縛るためのもの。戒能は公述人として、『政治体制を決定するような決定権の所在を移行させるような改憲は、革命や反革命というような観念』とも言っている。安倍首相が祖父と同じように改憲を目指すのは、許されない行為なのです」
安倍が本気で改憲を考えているのなら、もっと憲法について勉強すべきだ。
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