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フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。 (翻訳・加藤祐子)
http://news.goo.ne.jp/article/ft/politics/ft-20130528-01.html
Shinzo Abe will not revive Japan by rewriting history
日本は戻ってきたとニュースの見出しは叫んでいる。日本は10年以上も舞台脇で控えていたが、安倍晋三首相のおかげで舞台中央に戻ってきた。最近の市場の混乱は別にして、株式市場はおおむね活況を呈し、市民の消費行動は旺盛だ。経済成長も上向いている。海外では、日本が注目を集めている。今までと逆を行くこの流れについて、言うべきことが3点ある。ふたつはもっぱらポジティブで、ひとつは非常にネガティブな内容だ。
安倍氏が来月の主要8カ国(G8)首脳会議に顔を出せば、他国の首脳たちはおそらく、安倍氏と知り合いになろうとするだろう。ここ数年の日本の総理大臣たちとはそこが違う。首相官邸の玄関はくるくる回る高速回転ドア状態だった。2006年から安倍氏が選挙で勝った2012年までの6年間、総理大臣の顔は1年ごとに変わり続けた。ほかの国の首脳たちは、今ここでこの人と握手しても次の大きな会合前にはもういなくなっているとほぼ確信しながら、日本の総理大臣と握手を交わしていた。中でもとりわけアメリカのバラク・オバマ大統領は、日本首相と過ごすその場限りの時間が無駄だと苛立っていたという。
安倍氏ももちろん、回転ドアを通った1人だ。06年〜07年にかけて機能不全の政権を率いたのは安倍氏だった。けれどもその政治的展望は今、今世紀初頭の小泉政権以来と言えるほど明るい。
7月には参院選が控えているが、世論調査を目安にするなら、安倍氏率いる与党・自民党には安定多数を獲得するだろう。ということは不測の事態がなければ、安倍氏は17年に予定される次の衆院選まで続投できるということになる。
日本の総理大臣は当面続投するだろうと思われていなかったせいで、国際舞台での日本の存在感はここ数年、ひどく損なわれてきた。一転して、今の首相は長続きするだろうというシンプルな事実があれば、日本は国際舞台での存在感を得られる。日本の国際舞台復帰とたまたま時を同じくして、中国の台頭によって東アジアは緊迫し、関係性が再構築されている状況だ。そして安倍氏は、国外で日本の国益を守るには国内の経済的な強さが不可欠だというメッセージを明らかに発している。
安倍氏はそのために、自分の政治力を駆使するつもりのようだ。党内の反発を乗り越えて、環太平洋経済連携協定(TPP)を創る米国主導の貿易交渉に日本を参加させたいと思っている。自民党は農業保護主義に激しく執着している党なだけに、これはまだ先行き不透明だが、貿易協定というのは経済的な意味合いのものであると同じくらい地政学的なものだと、安倍氏は理解している。国内の内輪もめより戦略上の利益を優先させる日本の指導者は、実に久しぶりだ。
安倍氏は国内経済の分野で最も大胆な手を打って出た。これが私の言う、2つめのポジティブな点だ。安倍氏は大規模な財政刺激策と日銀のトップ交代を手始めに、停滞脱却のため「3本の矢」計画に乗り出した。前代未聞の金融刺激策と政府支出の拡大、そして約束済みの構造改革の実施だ。これでも世界第3の経済大国が息を吹き返さないなら、ほかに打つ手はない。
リスクはたくさんある。5月23日の株価急落は、アベノミクスも市場心理の変化と無縁ではないことを示した。日本の近隣諸国の間には、円の急落に対する根深い不安感がある。国内経済に弾みを付けるための正当な行為と、「隣近所を貧乏にしても構わない」的な通貨切り下げの差は、紙一重だ。昨今の中央銀行はどの国でも、前人未踏の領域で動いているものだが、それにしても日銀の黒田東彦総裁は単独で独自の道を行っている。
失われた20年を経て、停滞パターンを打破するためには何らかの策が必要だった。消費者信頼感と支出の回復に続き、輸出と投資も回復する可能性は十分ある。日本が陥った悪循環にとって代わる好循環が生まれる可能性さえ、どこかにあるかもしれない。
しかし安倍氏は経済政策だけの人ではない。プレーヤーとしての日本の地位を取り戻す、とりわけ近隣地域においていっぱしの大国として日本を復活させるという確固たる決意が、安倍氏を突き動かしているのだ。この総理大臣は、中国にいいように振り回されることなどあってはならないと思っている。もっと言えば、日本には欠かせない同盟国のアメリカにさえ、振り回されるつもりもない。安倍氏は既に国防費を増額しているし、集団的自衛権の行使に参加できる軍隊を創設するために改憲する意向だ。
そしてここで大きなネガティブにたどりつく。安倍氏は国民の愛国心や国民意識に訴えかけるが、それは危険な歴史修正主義の色を帯びている。日本が前世紀前半に朝鮮半島と中国で行った残酷行為について問われた時、首相は口を濁した。安倍内閣の重鎮たちは、十数人のA級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社を参拝する。アジア各地を占領した日本兵用の売春婦として、戦時中に朝鮮半島の女性たちを奴隷扱いしたことについても、疑問符がついたままだ。全体として今の日本にBGMのように流れているのは、もう謝るのはうんざりだという空気だ。
影響はすぐに現れ、韓国との関係は悪化し、米国は警戒した。そして、アジア地域の緊張を高めているのは中国の拡張主義ではなく日本のナショナリズムではないかと中国政府に言わせる、口実を与えてしまった。東シナ海でのにらみ合いが続く状況下で、安倍氏は日米安保条約を都合のいい盾として使っていないか、アメリカ政府は懸念している。日米安保の後ろに隠れて、安倍氏は気ままに中国の目をつつこうとしているのではないかと。
日本には、苛立つだけの理由がある。日本の施政下にある尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡る領有権紛争が激化したのは、中国がたびたび侵入したからだ。とはいえ、臆面もない日本の国家主義復活が、問題解決の道ではない。安倍氏は、東アジア各地に残る過去の対立や憎しみの残り火を煽り立てている。安倍氏が力強い日本を復活させたいのなら、経済再生によって実現するべきだ。過去を書き換えようとしたところで、得るものは何もなく、失うものは大きい。
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