http://www.asyura2.com/13/senkyo148/msg/231.html
Tweet |
http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2013/05/post-5c47.html
2013年5月23日 神州の泉
海外企業がアメリカで経済活動をする際、企業の買収(支配)や国家安全保障上、重大な影響を及ぼすと判断される投資活動を制限する法律がアメリカにある。包括通商法に盛り込まれている「エクソン・フロリオ条項」と呼ばれているものである。
対米外国投資委員会(CFIUS)が条項に触れると判断した企業買収や土地取得などの活動に対し、最終的には大統領が阻止する権限を持つ。この法律はアメリカ議会が1988年に日本資本によるアメリカ企業の敵対的買収を阻むために導入された。
皮肉なものである。このエクソンフロリオ条項はバブル景気の熱に浮かされた日本がお祭り頭になって宗主国アメリカの資産に手を出し、手痛いしっぺ返しを食らったという構図が見えてくる。アメリカが日本の投資活動に対して危機感を抱いたということは、成り行きから言って当然であった。
一般的に見ても、日本に限らずアメリカ企業に対し、アメリカ経済を混迷に落とすか、国家的な安全にかかわるリスクを背負った海外投資を防衛しようとする姿勢が出てくるのは至極当然なことである。
ましてや、日米関係の深奥は戦後一貫してかなり深刻な主従関係にあったが、アメリカの冷戦時代は国際政治闘争や軍事的ヘゲモニーに心血を注いでおり、日本のことは言うことを聞く極東の防波堤くらいにしか考えていなかった。
ところが、東西冷戦が終わった後からは、日本を最大の敵性経済国家と見なすようになり宗主国らしい締め付けを強めた。そもそも今では神話的な存在と化した日本のバブル経済は1985年のプラザ合意を起点にしている。
貿易と財政という双子の赤字を抱えていたアメリカは、日本からの借金を減らすために、日・米・独・仏・英(G5諸国)と協調介入する旨の共同声明を発表した。ドル安にするために各国が為替レートを調整するという合意だった。
しかし、プラザ合意で米国が望んだドル安は米国に新たな問題を突きつけた。行き過ぎたドル安は貿易赤字を解消しなかったばかりか、他国への資金流出を招いた。これを修正するために米国はG5各国に金利の引き下げを要求した。これが1987年の「ルーブル合意」であった。
プラザ合意で急激な円高が起こり、240円/ドルが上下に搖動しながら1年後には120円/ドルになった。慌てた政府はルーブル合意もあって金利引き下げに急速に舵を切った。これによって土地神話の幻想的な独り歩きが始まった。
金利の引き下げ(超低金利)はどういうわけか固定化され、これによって不動産、小売業、住宅などの融資が急拡大し過剰流動性が発生した。日本人の土地信仰は凄まじく、土地価格は絶対に下がらないという前提は何があっても不動だった。
これに日銀の金融緩和が加速されたことにより、大量のマネーが株式市場と不動産市場へ流れ込み、日本は史上空前の金融バブルに突入した。特に不動産関連はこの世の天国になった。阿部寛や広末涼子が出ている『バブルへGO!!』という邦画はその辺を面白く描いている。
2008年の11月に紺谷典子氏(経済評論家)は『平成経済20年史』(GS幻冬舎新書)という、実に有用な平成の経済評論書を出された。何度読んでも平成経済の実態がよくつかめる書である。ご本人からサイン入りの該当書を送っていただいたから言うわけではないが、この人は数少ない愛国派のエコノミストである。
紺谷女史はこの書の冒頭で、1987年のルーブル合意以降、熱狂的なバブルに突入した日本は、10月に米国発の株価大暴落(ブラックマンデー)の煽りを受け、完全にノックアウトされたかのように見えたが、欧米の期待を大きく裏切って、この世界同時暴落からいち早く立ち直ってしまった。
紺谷女史はここで重大な示唆をしている。欧米は日本経済のダメージ回復力に驚嘆するとともに、日本の底力に心底脅威を感じたと指摘している。もちろん日本に最も警戒心を抱き、世界最大の敵性経済国家だと位置付けたのは米国であった。
以上述べたことをプラザ合意から時系列で俯瞰すると何が見えてくるか説明ができる。米国ほど狡猾な国もない。プラザ合意からルーブル合意、日米構造協議へと日米関係が進む中にあって、米国は日本を経済脅威としての位置づけから、“金の卵を産む鶏”と位置付けたものと思われる。
そこで対日政策を、日本の経済力を何としても叩き潰すことから、逆に日本を温存し、米国に流れる資産を無限に生み出してくれる都合の良い『財布国家』としたほうが合理的だと考え、経済戦略を切り替えた。
これが1993年に宮沢―クリントン会談で合意された『年次改革要望書』だった。年次改革要望書は日米構造協議のメタモルフォーゼとして静かに潜行し、洗脳された対米隷属官僚などを使役しながら、全部ではないが着実に米国の要望を内政干渉的に実現させていった。
メタモルフォーゼとは生物学でいう“変態”だが、これはチョウで言えば卵、幼虫、蛹、成虫(チョウ)へと形態変化を遂げて行くことである。平面(二次元)を這いまわる幼虫が最終的には大気(3次元空間)を飛び回る成虫に変化しているから、これはある種の価値の止揚(アウフヘーベン)である。
ところが、日本で起きた“日米構造協議から年次改革要望書へのメタモルフォーゼ”は、特性的にはチョウから幼虫への逆転換であった。日本の発展的な飛躍どころか餌としての芋虫へ逆変態したことになる。その理由はお分かりだろう。アメリカの狙いは日本国富の合法的な収奪だからである。
属国国民の反感を買わないように双方向の無難な『協議体系』の化粧を施したまま、小泉政権の構造路線で露骨に表面化した。これが後の日米経済調和対話に繋がるわけだが、これらの最終形態として米国(グローバル資本)はTPP(環太平洋パートナーシップ)を仕掛けている。
日本は経済防衛の思想を置いてきぼりにして、米国の対日戦略部隊にいいように内国制度を変えられている。日本が喫緊に樹立しなければならないものは、日本版のエクソン・フロリオ条項であることが、以上の歴史的推移から見えてくるのだ。
今わが国は建国以来の自主独立精神が試されている。TPPを撥ね付けることができなければ滅亡しかない。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK148掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。