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2013年5月19日 植草一秀の『知られざる真実』
NHK(日本偏向協会)の看板偏向番組である「日曜討論」が今日もまた、偏向全開の番組を放送した。
アベノミクスに対する評価で積極肯定派の高橋進氏、非肯定派の野口悠紀雄氏、一見中立に見えるジャーナリストの和泉昭子氏と、政府代表の甘利明氏が出演した。
この構成は中立を装うものだが、実体はまったく違う。
討論のテーマは、
「甘利大臣に問う“円安・株高”“成長戦略”」
となっているが、討論内容は違う。
主要な論点は、四つあった。
第一は経済政策の基本。
番組テーマは「成長」だが、もうひとつの経済政策上の主題は「分配」である。
政府は「成長政策」を論議する一方で、生活保護費受給手続き厳格化などの措置を進めている。
経済政策の主たる目標を、
1.分配の格差を度外視しても、成長を優先する
2.成長追求よりも公正な分配実現を優先する
のいずれに置くかが問われている。
「成長」を論じるなら、必ず、もう一方の価値である「分配の公正」を論じる必要がある。
第二はTPP
第三は消費税増税
第四は医療、介護の自由化
である。
実際に、討論で論じられた主要テーマは上記の四項目である。
この場合、公正な討論にするためには、4つのテーマについて、異なる意見を適正に番組に反映させることが求められる。
放送法第四条に以下の条文がある。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
つまり、
1.成長追求論に対して分配公正論の立場からの主張の論点を明らかにすること
2.TPP参加賛成論に対して、TPP参加反対論の論点を明らかにすること
3.消費税増税容認・肯定論に対して、消費税増税反対・否定論の論点を明らかにすること
4.医療・介護の自由化論に対して、自由化反対論の論点を明らかにすること
が必要である。
ところが、NHKの日曜討論では、この主要四点に対して、一方の主張を示す人物しか登場させていない。
野口悠紀雄氏は、安倍政権が推進するインフレ誘導・金融緩和強制論に否定的で、アベノミクスを評価しない立場を示しているが、上記の四点については、
1.規制改革=成長政策推進
2.TPPによる規制改革賛成
3.財政健全化重視=消費税増税容認
4.医療・介護の自由化推進
の主張を示している。
つまり、上記主要四項目について、NHKを代表する偏向司会者である島田敏男氏を含めて、出演者の5名全員が同じ方向の主張を展開したのである。
これを「偏向放送」と言わずして、どのように表現できるというのか。
放送法違反の偏向放送である。
経済政策による「利害の調整」の視点に立つときに、結局重要になるのは、「資本」と「労働」の利害対立である。
経済政策論の根源的な課題のひとつは、「資本」と「労働」の利害対立に対して、どう向き合うかということである。
いま安倍政権が推進している政策は、単純化すれば、資本のリターンを高めることでしかない。
成長政策とは突き詰めて言えば、資本のリターンを高めることで、労働への分配は時間の経過に従い、若干の増加を見込めるものの、自由化を軸とする経済政策が分配の不平等を拡大させてきたことは、歴史が証明している。
つまり、成長偏重の経済政策とは、格差拡大容認の経済政策と表裏一体をなすものなのだ。
したがって、成長重視の主張が提示されるなら、この主張に対する反対意見として、「成長よりも分配の公正重視」の主張を提示する論者を登場させる必要がある。
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