http://www.asyura2.com/13/senkyo147/msg/795.html
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昨日夕方行われた橋下氏のぶら下がり取材の映像を見て驚いた。
「従軍慰安婦」問題についてあれだけ発言している橋下氏なのに、「従軍慰安婦」問題の本質を理解していないからである。
橋下氏は、米国(国務省)とタイマンを張るようなカッコウをみせ、米国だって戦争中や占領中に「男性の性的欲求の解消に女性を活用」してきたじゃないかと指摘し、日本だけが「従軍慰安婦」問題で責められるのはフェアじゃないと主張している。
※ 本日のぶら下がり取材映像全編の添付先
「橋下氏「もういい、やめます」声荒らげ会見打ち切り(スポニチ) 「朝日新聞なんか最低だ」」
http://www.asyura2.com/13/senkyo147/msg/786.html
そうそうたるメディアに属する記者が相当数いながら、誰も橋下氏に“間違い”を指摘しないことに驚くが、「従軍慰安婦」は、戦争中に「男性の性的欲求の解消に女性を活用」する売春を行ったことで問題視されているのではない。
売春婦(慰安婦)=性奴隷(セックススレーブ)というわけではない。
売春そのものが女性の人権を犯すものというのなら、売春防止法が施行されている日本は、売春を取り締まる法律が施行されていない国々に較べて“人権尊重先進国”と胸を張ることができる。
ところが、「男性の性的欲求の解消に女性を活用」するというのか、「女性がお金を稼ぐために男性の性的欲求を活用」するといってもいい売春取引は、飾り窓で有名なオランダに限らず、年齢や商売の仕方などで規制はあるとしても、フランス・スイス・英国・ノルウェー・デンマーク・豪州・NZなどのいわゆる“人権尊重国”と思われている欧州系の国々で合法化されており取り締まりの対象にはなっていない。米国についても、ご存じのように、ラスベガスがあるネバダ州では地域限定で合法化されている。
(以前書いたことがあるが、職業は、事務職・作業職・売春職・家事など従事可能な職種のなかから好みや稼ぎの効率などを考慮して選択すればいいと思っている。自由意志による売春は、年齢規制を除き、取り締まりの対象から除外した方がいいと考えている)
橋下氏は、無知なのか、わざと知らないふりをしているのかわからないが、「従軍慰安婦」問題が、戦争中に国家が「男性の性的欲求の解消に女性を活用」したことに起因しているかのように思っているために、「日本だけではない。多くの国が戦争で男性の性的欲求の解消に女性を活用した。アメリカはとりわけ占領中の沖縄でそうだった。それなのに、日本だけが責められるのはおかしい。フェアじゃない」とあらぬ主張を声高に叫んでしまっている。
私に言わせれば、大阪市長で野党第2党共同代表である橋下氏は、「従軍慰安婦」の何が問題なのかということについて“無知”を晒すことで、日本をひどく貶めたことになる。
米国国務省のサキ報道官(女性)が、記者会見で、売春が別に悪いわけではないとは言わなかったので、橋下氏は、自分の誤認識に気づかなかったのかもしれない。
戦争中や占領中に自国の将兵が売春に“応じた”からといって、道徳的宗教的非難は別として、日本の「従軍慰安婦」問題のように、その政府や軍組織が国際的非難を公式に浴びることはないのである。だから、売春施設を利用したことをもって、同類視し同じ責任の場に引きずり込もうという論は成立しないのである。
橋下氏や安倍氏だけではないが、「従軍慰安婦」問題に関して、国家としての責任を回避したり、諸外国を同類視して同じ責任の場に引き込むような発言が、日本の名誉や国際的地位の向上に資すると本気で考えている“愛国者”は、うすらバカだと断言する。
「従軍慰安婦」に関わる“最大”の問題は、橋下氏が“勘違い”している「男性の性的欲求の解消に女性を活用」したことにあるのではなく、その運営に関与した日本政府が、強制連行を含む悪質な事実を明確に認定し、被害を与えた方々や彼女らが属する国家にきちんと謝罪し、被害者の取り替えられない人生を恐縮ながら金銭で補償するという行為を現在なお行っていないことである。
(戦地で将兵のために売春を行うことを承知で業者(女衒)と契約した人は、勤務地での処遇がどうだったかが被害有無の基準になる。爆撃などで殺された人もおり、そのような危険性が募集時に告知されていたのか、慰安所を先に撤退させるなど適切な危険回避措置がとられたのかなどかが問題になる)
「従軍慰安婦」問題について責任があるようなないような鵺(ヌエ)的態度を日本政府がとり続けてきたからこそ、戦後67年も経った現在において、「従軍慰安婦」問題がなお世界のメディアを賑わせてしまっているのである。
不道徳的な言い方になるが、世界で日本の「従軍慰安婦」問題を追い続ける人はそれほどいるわけではないのに、安倍氏や橋下氏など「従軍慰安婦」問題での日本政府の責任を軽く考える政治家が“なぜか”わざわざ発言することにより、忘れていた人が「従軍慰安婦」問題を思い出し、新たに「従軍慰安婦」問題に関心を持つ人が増えてしまっている。
それなのに、安倍氏や橋下氏のような政治家を“愛国者”として尊重する人さえいるのだから、唖然としてしまう。
とりわけ、内実は92年の「河野談話」を認めているのに、「河野談話」が間違っているかのように主張する安倍氏が、政治家として延命できているだけでなく、二度も内閣総理大臣の地位に就いていることに驚く。
「従軍慰安婦」問題に関する経緯を簡単に説明する。
日本政府が、「従軍慰安婦」に関して政府や旧日本軍が深く関与していたことを示す資料を“初めて確認”したのは1992年である。
日本は、アジア太平洋戦争で敗北し連合国軍による占領を受けたが、統治機構の一新があったわけではなく、国家統治機構及びその構成員は基本的に継承された。
そのような経緯を考えれば、戦後日本の国家統治機構のなかには「従軍慰安所」に関わった官僚(軍を含む)が残っていたはずで、シナ事変以降の戦線拡大のなかで「従軍慰安婦」施設が増強されていった経緯を詳らかに知っている役人や軍幹部も数多くいたことがわかる。
戦後の日本政府は、軍の慰安所にまつわる問題を知りながら、嵐が起きないよう頬被りしていたと言えるだろう。
性が絡むうっとうしい問題であり、日本政府が、外部から指弾されてもいないのに、軍の「慰安所」にまつわる犯罪的事実をわざわざ晒すという選択をしなかったということは理解できる。
意に反して慰安婦になり生き残った内外の方々も、思い出したくもない事実で忘れたいくらいだっただろうから、日本政府に問題を提起することはほぼなかった。
「従軍慰安婦」問題に関するそのような奇妙なバランスが崩れたきっかけは、韓国の“民主化”である。韓国で、「従軍慰安婦」問題が取り上げられるようになり、日本の国会でも取り上げられるになった。
その時点でも、日本政府の態度は、恥ずべきことに、軍の慰安所は民間業者がやっていたことで政府は無関係だったというものである。
ご存じのように、今でもご存命の大勲位中曽根氏はご自身も慰安所設営に尽力した経験をお持ちである。だから、中曽根氏が首相を辞めて3年ほど経った90年時点で、なにせ昔のことで誰も知らなかったというようなふざけた言い訳は通用しない。
この時点で秘匿されている資料を急ぎ探し出し、政府及び軍の関与やたぶらかしや徴発的割り当てなど、慰安婦になった女性の意にそぐわない募集があったことを認め、政府がきっちり謝罪し、然るべき補償をしていれば、今この時点で、「従軍慰安婦」の問題が日本のみならず世界中を駆け巡るというようなことはなかったであろう。
しかし、往生際が悪いというか、国家の名誉がどういうことに支えられているかを理解していないらしい日本政府(宮沢内閣)は、調査を始めたものの、薬害エイズ問題と同様、省庁がなかなか資料の提出に動かなかった。
資料を調査した結果としてようやくまとめられたのが、「加藤談話(朝鮮半島出身者のいわゆる従軍慰安婦問題に関する)」である。
日本政府の姑息さというか、その場しのぎ的態度がよくわかるのが、談話のタイトルが“朝鮮半島出身者”と地域限定になっていることである。
「加藤談話」では、それまで政府は無関係としてきたものを、「慰安所の設置、慰安婦の募集に当たる者の取締り、慰安施設の築造・増強、慰安所の経営・監督、慰安所・慰安婦の街生管理、慰安所関係者への身分証明書等の発給等につき、政府の関与があったことが認められた」へと変更した。
慰安所は、中国戦線のみならず、フィリピンやインドネシアなど日本軍が存在するところいずこにもあったで、“朝鮮半島出身者”は主に中国大陸に送られ、フィリピンやインドネシアなどでは現地にいた女性が慰安婦として徴発された。
政府が自らの口で言うべきことだが、文字通りの「強制連行」や「軍組織あげての継続的輪姦(対価なしの強制的性行為)」は、“朝鮮半島出身者”に対してよりも、フィリピンやインドネシア(オランダ人を含む)などで現地にいた女性に対して多く行われたことがわかっている。
橋下氏は、政府は「(国を挙げての)強制連行があったかどうか」をはっきりさせるべきとも主張している。
(今日のぶら下がりでは、強制連行があったかどうかが大きな問題ではなく、戦争中に「男性の性的欲求の解消に女性を活用」したことが悪かったという奇妙な主張に変容している)
「強制連行」は、(国を挙げて)ではないが、軍の部隊単位で行われたことは政府も認めている。
「従軍慰安婦」問題でよく使われる「強制連行した直接の証拠は見つからなかった」という表現は、軍を含む政府機関による“強制的に慰安婦を集めろ”的な指示や命令を含む文書は見つからなかったということであって、現地の部隊や業者が、ある女性を強制的に慰安婦にしたり、ある女性を複数で継続的に犯したりしたケースがなかったことを意味しているわけではない。
(※ 『政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成@警察庁関係公表資料・外務省関係公表資料』の21頁には、「フィリピン、インドネシアなど占領地の女性やオランダ人女性が慰安所に集められました。この場合軍人が強制的手段もふくめ直接関与したケースも認められます」と書かれ、「日本軍が東南アジアで敗走しはじめると、慰安所の女性たちは現地に置き去りにされるか、敗走する軍と運命を共にすることになりました。」という記述もある)
92年に出された曖昧な「加藤談話」では収拾がつかず、翌93年に「河野談話」が発せられた。
「従軍慰安婦」問題では何かとその名が出てくる「河野談話」だが、「加藤談話」に加え、「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」ことを認め、「当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」という事実を認めている。
(※ 「当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり」という文言は、占領地ではなく、あくまでも国内で起きたことであるという“国際的主張”のために書かれていると思っている)
私は、戦時中の日本の統治者たちの名誉がそれほどひどく貶められているとは思えない「河野談話」で「従軍慰安婦問題」に決着を付けられるのなら、これほどありがたいことはないと考えている。
安倍氏は二度も日本の総理大臣になり、その都度最終的には「河野談話」を継承すると表明するのに、表明前に「河野談話」に対しウソの難癖を付けることで、「従軍慰安婦」問題を何度も蒸し返し、「河野談話」で解決できる条件を消し去るような動きをしてきた。
日本政府が、「河野談話」を踏まえ、アジア女性基金方式ではなく、内閣総理大臣による公式の謝罪と国家による補償を行わなかったことを深く悔やんでいる。
※参照投稿
「Xyzxyzさんへ:石原氏や橋下氏が標的にしている「河野談話」のどこが問題なのですか?」
http://www.asyura2.com/13/senkyo143/msg/870.html
橋下氏も、米国にパンチを振るっているフリはしているが、実際のパンチは向きが違っており、日本を貶めている。
「従軍慰安婦」問題に関する安倍氏や橋下氏の言動が、日本の名誉に資すると考えている人には、もっと冷静に事態を判断していただきたいと願っている。
※ 関連投稿リスト
「[資料]平成4年加藤談話・平成5年河野談話・平成7年村山談話など」
http://www.asyura2.com/13/senkyo143/msg/861.html
「橋下氏の問題は米国文化の認識欠如ではなくポン引き言動:「従軍慰安婦」ではなく「軍内慰安婦」制度を活用している米国」
http://www.asyura2.com/13/senkyo147/msg/737.html
「今日の橋下氏の主張は小利口な子どもやジコチュウのもの:「従軍慰安所」は「原発」と同じで“国策民営”施設」
http://www.asyura2.com/13/senkyo147/msg/706.html
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