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2013/5/17 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
日銀の量的緩和による円安株高のバブルと決定的打撃となるTPP参加が日本社会の米国化の総仕上げという見方は本当なのか
◆重大な疑問が渦巻いている
1―3月期の実質GDPが年率3・5%増と高い伸びを記録した。甘利経済再生相はきのう(16日)の記者会見で、「異次元の政策投入による異次元の景気回復の歩みが始まった」と強調。黒田日銀総裁が得意とする「異次元の金融緩和」の表現を借り、アベノミクスの成果だとアピールしたのだ。
これを受けて、大マスコミも「円安で輸出が伸びた」「消費者心理が改善し、個人消費が増えた」とはやし立てている。どの社も社長が安倍首相とメシを食い、杯を重ねた。批判はタブーなのだろう。思い切りヨイショしている。
だが、シビアな専門筋の見方は違う。まったく楽観視していない。東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏が言う。
「GDP成長率の寄与度を見ると、0・4%が外需です。でも、一般的な輸出入統計からすれば、これほど高い数字が出るのはおかしい。実際、事前の民間予想(平均2・8%増)は、政府発表よりかなり低かった。それだけに奇異に感じます。あまりに良すぎる。机上の計算方法の違いでズレが生じているようで、実態を反映しているのか疑わしいのです。0・9%増となった個人消費も怪しい。日本では株を持っているのは少数派です。株高による資産効果は米国ほど高くありません。しかも、この間の雇用者報酬は名目で前年同期比0・1%減。消費が増えたといっても、所得の裏付けがないのです。右肩上がりで拡大を持続するとは考えられません」
◆個人消費を押し上げた公務員家庭の特殊事情
GDPの個人消費は、家計調査を基に算出されている。ただ、普通の家庭は面倒な調査に協力したがらない。どうしても、3月に期末ボーナスが出るような公務員家庭のサンプルばかりになってしまう。これは公然の秘密で、家計調査を基にした個人消費の統計は実態を映していない可能性が高いのだ。
「補正予算で5兆円を投じながら、公共事業の伸びは0・8%増と低い。復興が必要な東北地方の現場では、建設労働者が集まらず、資材費も高騰している。そのため、思うように工事が進んでいないのです。その上、設備投資は5四半期連続でマイナス。アベノミクスといわれても、投資の拡大を決断するほど、企業は景気回復に確信が持てていないのです。株価や土地の値段が上がっても、実体経済は依然として弱い。4―6月期以降もプラス成長が続くのか、心配になります」(斎藤満氏=前出)
実体経済が動き出さないと、雇用は改善されないし、所得も増えない。このまま株高、不動産高のバブルで終わる公算は大だ。アベノミクスや黒田バズーカで庶民の暮らしが上向くわけではない。恩恵に浴しているのは、株や不動産を持っている富裕層だけである。
2年前、米国では「ウォール街占拠運動」が盛んになった。巨大な富が上位1%の人たちに流れている。そんな現状への不満が高まったのだ。
日本も同じである。庶民は一日も早く目を覚ました方がいい。
◆米国の「旧満州国」となった日本
それでも儲けているのが日本に住んでいる人たちなら、国内にカネが落ちる。日本の景気にプラスとなるかも知れないが、東京証券取引所の売買状況を見ると、外国人投資家が半分近くだ。日産自動車やドン・キホーテ、アデランス、大東建託、HOYA、オリックス、ファナックなどは外国人持ち株比率が5割を超える。
日本株の上昇で大儲けしているのは、1%の米国の富裕層なのである。
筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)が言う。
「米国からすると、今の日本は、かつての日本にとっての旧満州です。傀儡政権が宗主国の富を増やす政策を採用し、国民大衆を犠牲にする。その傾向はハッキリと出ています。アベノミクスや黒田金融政策によって、国債の投げ売りが始まり、長期金利が上昇している。堅いと評判だった日本国債の信用はガタ落ちです。それによって日本が誇る流動資産は、株式や外国の債券に流れ、米国債や米株式に向かった。日本が守ってきた巨額の富が米国に移転し始めているわけです。日本でも、1%の富裕層は株や不動産で儲け、銀座に出掛けたり、買い物を増やしたりしている。それよりもメリットを受けているのが米国の財政であり、米国の富裕層です。日本の経済は米国の下請けのようなものです」
神戸女学院大名誉教授の内田樹氏(フランス現代思想)も、朝日新聞のオピニオン欄でこう書いていた。
〈私たちの国で今行われていることは、つづめて言えば「日本の富を各国(特に米国)の超富裕層の個人資産へ移し替えるプロセス」なのである〉〈おそらく安倍政権は「戦後最も親米的な政権」としてアメリカの超富裕層からこれからもつよい支持を受け続けることだろう〉
これがアベノミクスの正体なのである。
◆アベノミクスは賃下げ政策
総仕上げはTPP参加だ。日本を1%の金持ちと99%の貧民で構成される社会に変えた上で、日本のカネも市場も米国に差し上げ、ウォール街の超富裕層を喜ばせるわけである。
「日本の国民大衆にとっては、アベノミクスは賃金引き下げ政策でもあります。当初の触れ込みでは、円安で輸出が増え、雇用が上向き、賃金はアップして、企業も活発に投資するとのことでした。でも、そんな方向に行く可能性は薄れている。2%の物価目標でインフレが起きても、健全な経済再生は図られず、給与も上がらない。実質賃下げとなり、生活は苦しくなるのです。しかも、国債が売れなくなれば、財政はさらに逼迫する。ギリシャのような社会保障費のカットは避けられないでしょう。米国の富裕層が高笑いする一方で、日本の大衆はババをつかまされるのです。アベノミクスは麻薬にほかならない。株価上昇に浮かれ、意識がもうろうとした先に、待っているのは死です。国家も国民も死滅に向かっている」(小林弥六氏=前出)
今の円安・株高は異常な姿なのだ。
それを喜び、安倍を支持している人たちは、奈落に落とされることに気づくべきだ。
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