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東京弁護士会に質問状を送った市民団体の八木啓代代表
キーマンは小沢氏の同級生!ー検察審査会の怪
http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20130510-00024866/
2013年5月10日 12時51分 江川 紹子 | ジャーナリスト
陸山会事件の捜査で東京地検の検事が虚偽報告書を作成した事件。先月22日のエントリーで、検察審査会の不透明さや本件補助弁護士の問題点を報告したばかりだが、さらなる疑問点が明らかになった。
田代政弘元検事らを不起訴とした東京地検の処分に対し、東京第1検察審査会は厳しく批判をしながらも、強制起訴とはしない「不起訴不当」の議決をした。審査員にアドバイスをするキーマンとも言うべき審査補助員は、自身がかつて検察幹部であり、不祥事を起こして懲戒処分を受けて辞職した人物であることは、前回に詳述した。
ところが、それだけではなかった。審査補助員の澤新弁護士は、小沢一郎氏と小石川高校の同窓だったことを、9日の参議院法務委員会で有田芳生議員(民主)が明らかにした。それも、3年生の時に同じクラスだった。
陸山会事件は、小沢氏をターゲットに捜査が行われており、それに関連する手続きに、元同級生が関与するというのは、様々な憶測を生む。ましてや、法律には素人の審査員たちに大きな影響力を与える審査補助員に、そうした関係者がつくのは、実に不適切と言わざるをえない。
■結論は微妙な立場の現れ?
元同級生たちに尋ねてみると、高校時代の澤氏は頭脳明晰でしっかり主張をする秀才タイプ。小沢氏の方は、あまり自分を押し出さない、どちらかというと「普通の学生」だったらしい。仲がいいわけではないが、格別対立関係にあったわけでもなさそう。2人が最も近い関係にあったのは、高校時代より、小沢氏が自民党の幹事長を務めるなど政権与党の中枢にいた頃らしい。複数の証言によれば、検察で将来を嘱望されていた澤氏が政権与党幹部の小沢氏を接近していったものの、小沢氏が自民党を離れて以降、関係はまた遠のいたようだ。同級生が小沢氏の支援を始めた時も、澤氏は「元いた所(検察)に義理がある」と言って、加わらなかった、という。
検察に厳しい批判をしつつ、強制起訴は避ける、という判断は、澤氏の微妙な立場、複雑な心境の現れ、と見ることもできる。
「澤も、今回の捜査での検察の問題は分かっているはず。古巣に頼まれて手を挙げたのかもしれないが、やるべきじゃなかった。(検察に厳しくても甘くても)どちらでも、いろいろ憶測を招くのではないか」と、同級生たちは小沢氏と澤氏の双方を案じている。
■東京弁護士会は真相を明らかにせよ
様々な憶測を呼ぶのはわかりきっているはずなのに、なぜ彼が審査補助員の役に就いたのか。
今回は、第1東京検察審査会が東京弁護士会に審査補助員の推薦を依頼し、同弁護士会が澤氏1人を推薦してきた、ということのようだ。小沢氏と同級生だったことまでは分からずとも、検察幹部だった経歴や、不祥事で処分を受けた後に退職していることは分からないはずがない。
田代元検事らを告発し、検察審査会への申し立てを行った「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」(八木啓代代表)は、同弁護士会宛てに、検察審査会から審査補助員の推薦依頼があった場合の、選任基準や選定の方法、不適任者を忌避する事由等についての基準などを明らかにするよう、公開質問状を送った。
東京弁護士会は、速やかに、そして誠実にこれに答えるべきだ。合わせて、今回、澤弁護士を推薦した経緯についても、明らかにすべきだろう。そうでなければ、検察の問題をうやむやにするのに、弁護士会まで手を貸したのではないか、と国民の不信感は拡大するばかりだ。
■何の検証もできない不透明さ
それにしても、この検察審査会の制度は、本当に分からないことだらけだ。
そもそも、どういう場合に審査補助員がつくのかもよく分からない。検察審査会法によれば「審査を行うに当たり、法律に関する専門的な知見を補う必要があると認めるとき」とあるが、あまりにも漠然としている。第1東京検察審査会に問い合わせても、「法律的に判断が難しく、法解釈の説明が必要な場合」というだけ。
申し立てのあった事件の中で、審査補助員が付くケースはどれくらいあるのかも、判然としない。問い合わせても、「そのような統計は取っていません」と言う。ならば、最近1年間の議決を見て調べようと思っても、議決書は1週間裁判所前に張り出すだけで、後は一切見せられない、という。被疑者の名前などのプライバシーに関わる部分はいらないので、せめて罪名と補助審査員の名前だけでも見せて欲しいと頼んだが、「ダメです」とけんもほろろ。議決書は情報公開請求の対象にもならない、という。
つまり、検察審査会の議決は、検察官の説明、検察官と審査員の間にやり取り、審査員の議論、補助審査員のがあったのかなど、審査の内容が秘密になっているだけでなく、その結果である議決書すら後から検証することが全く不可能なのだ。
強制起訴をするような強い権限を持つ制度が、こんなにも不透明でいいわけがない。
だが、法務当局の腰は重い。
有田議員が制度の改善について問うたのに、谷垣法相は、次のように答えた。
「制度が始まって、まだ時間が短い。何が本当の問題点か十分分かっていない。もう少し事例を見て考えたい」
制度が始まって、「もう」4年が経つ。最高裁の統計によれば、毎年2000件以上の申し立てがあり、2010年と11年の2年だけでも、「起訴相当」と「不起訴不当」は合わせて290件も出ている。
事例として、決して少ないとは思えないが…。
江川 紹子
ジャーナリスト
早稲田大学政治経済学部卒。神奈川新聞社会部記者を経てフリーランス。司法、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々。著書『人を助ける仕事』(小学館文庫)、『勇気ってなんだろう』(岩波ジュニア新書)など。
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