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2013年5月 4日 神州の泉
衆院選の結果が出て、第二次安倍政権が始動する直前の2012年12月19日に、林芳正氏、大田弘子氏、中島厚志氏、佐藤ゆかり氏、金子洋一氏、松田公太氏などが出て、政権運営や政策などを語り合っている動画を見た。
林芳正氏は短い時間で退席したが、実に冷静で知的レベルの高い人物だと思った。さすがにCSISが目を付けた重要人物であることが頷けた。この林氏を除けば、この討論会で唯一まともなことを述べていたのは佐藤ゆかり氏だけであった。あとの論客は、ほとんど新自由主義礼賛的な論旨が目立ち、論理レベルが低いと感じた。
特に太田弘子氏の言説はひどいの一言に尽きた。この人物は本当に経済学者で大学教授なのだろうか。竹中平蔵氏はよくこの人物を重用したものである。小泉内閣では内閣府の経済、財政、政策等に関する参事官など重職を務めていたし、第二次安倍内閣では内閣府規制改革会議議長代理に就いている。
太田弘子氏や金子洋一氏らの、有識者らしからぬ稚拙な説明によって、佐藤ゆかり氏だけがひと際精彩を放っていた。佐藤ゆかり氏が展開する緒論をじっくり聞きたかったが、他の連中が愚にも付かない茶々を入れて、せっかくの時間が台無しの場面ばかりがあり、女性司会者も太田弘子氏らに同調して、そっちへ誘導するような知的退廃が見られた。
とくに佐藤ゆかり氏が、TPPのメリット・デメリットをIMFのGTAP(ジータップ)モデルで、日本のGDP押し上げ効果を試算した結果を引用して、日本にメリットはほとんどなく、一番高い経済効果を持つ協定がASEAN+6でありFTAAP(自由貿易地域)近づくという説明をし始めたとたん、周囲の連中は感情的に妨害している。
最も妨害言辞が激しかったのは、TPPではアメリカ一国だけが利益を受けるIMF試算結果が出ていると言ったときだった。全く度し難い対米隷属連中である。
この討論会は、下らない連中に妨害されながらも訥々と語る佐藤ゆかり氏のわずかな言説に千金の価値があった。というか、討論会の体を為していなかったので、岩上安身氏のような優秀な人に、佐藤ゆかり氏個人のインタビューをやってもらった方が、はるかに優れた動画になったことだろう。
話題は政権運営、経済、規制改革、エネルギー政策、TPP等多岐に及んだが、神州の泉は佐藤ゆかり氏のTPPや規制緩和に関する意見に注目した。佐藤ゆかり氏は、野田佳彦前首相がAPECに出かける2011年11月11日当日に開かれた参議院予算委員会で、ISDS条項の質問で野田首相の不見識を暴き、悪名高かった小泉チルドレンの汚名を返上しているが、今回も実に的確な説明が行われた。
ISDS条項(外国企業が内国民待遇と同等な扱いではないと思ったら、その国を訴えることができる条約)の話題になったとき、金子洋一氏は、今まで日本とASEAN諸国にもISDS条項があり、日本に対して発動していないことを楯にとって、いかにも心配は要らない、大丈夫だというような言い方をした。
これに対し佐藤ゆかり氏は、それは役所の論理であり、日本はASEAN諸国と補完関係にあり、かなり日本が援助している国々だから日本を訴えるわけはない、しかしアメリカとカナダという対等先進国同士はかなり訴訟沙汰になっていると反撃した。
太田弘子氏は佐藤ゆかり氏に対し、自由貿易派ならよくお分かりだと思うが、自由貿易でよいのは、単にGDPが増えるということ以上に経済の構造が変わることが重要であり、たとえば投資が自由化される、知的所有権が守られる、そうゆうことが大切。TPPが重要なのは、アメリカやオーストラリアなどの先進国が入っている自由貿易協定で、先進国とのFTAは、まだ日本はできていない。そこから新しい技術、新しい発想が出てきて、刺激を受け合って経済を活性化していくのだという言い方をしている。
また、太田氏は、オーストラリアは少なくとも交渉には入っているわけで、これが多国間交渉のいいところで、オーストラリアとアメリカの利益が違うところもある。だからこそみんな苦労して多国間交渉をまとめているわけです。だからこそ日本は早く交渉に入るべきでなんですと言った。
このように意味不明で説得力のない喋り方で太田氏は佐藤ゆかり氏が論述できないように邪魔をしていたが、佐藤氏はこれに対し笑みを浮かべて聞いていた。この討論で気になったことは、TPPがバイ(Bilateral)ではなく多国間交渉だから価値があるかのような熱弁が推進派から出ていたが、いわゆる事前協議(日米二国間協議)の話はいっさい出ていない。
この時期に、日米事前協議のことは知られていなかったのだろうか。IWJのサイトをみると、USTRは2012年2月から事前協議が始まったと言っているが、最近報道された事前協議まで1年もの間、複数の事前協議があったのか、なかったのかということが気になる。
この部分は、2005年6月の郵政民営化特別委員会で、城内みのる議員が竹中平蔵大臣から、過去一年間に何回アメリカの官民関係者と会談したかについて質問した際、竹中氏から“17回”という言質を取ったことを思い起こす。売国政府は重要なことを国民から隠すことが常套手段となっている。
衆院選SP動画
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19617500
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