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20130502参議院予算委員会公聴会〜外交・安全保障〜公述人孫崎享氏の冒頭発言部分と田中直紀議員質疑と森ゆうこ議員質疑部分もあわせて、以下文字起こし。
http://threechords.blog134.fc2.com/blog-entry-1941.html
05/02 21:25 Sekilala&Zowie
20130502参議院予算委員会公聴会〜外交・安全保障〜公述人孫崎享氏
石井一「それでは、外交安全保障について、まず孫崎公述人にお願い致します。孫崎公述人」
孫崎享氏「孫崎享です。よろしくお願いいたします。本日、お招き頂きまして大変に光栄に存じております。
まず最初にTPPの問題に言及いたしたいと思っております。
TPPは日本の将来を決める大きな岐路です。今日の外交問題で最も重要な課題であると言えます。TPPにはさまざまな問題があるがISD条項は国家の主権を揺るがす重大課題です。これまでの経済交渉は国家対国家でした。ISD条項によって、企業が国家を直接訴える。裁判では企業は巨額の資金を投入します。 裁判の基本理念は経済活動で、受け入れ国の法律や制度で期待する利益が得られなかった時に訴えることが出来るというものです。健康、土地活用、政府調達、知的財産権、規制、税等広範な分野が対象になるとみられています。
皆さんに質問します。次のケースをどう考えるか。
(↓続く)
政府が企業に廃棄物処理施設許可を与えたが、有毒物資による近隣の村の飲料水汚染等で癌患者が多数発生する等、危険性が提訴され地方自治体が施設利用の不許可処分にした。有害毒性の指摘がある添加物を持つガソリンの輸入を禁止した。薬品は副作用があり、その調査を十分しなければならないが、新薬の特許申請に対して、臨床実験が十分でないとして、許可を与えなかった。和歌山県の講演では皆当然であるとの反応でした。
ではTPPになるとどうなるか。
NAFTAの例でみてみたいと思います。
(1) Metalclad社がメキシコ連邦政府から、廃棄物処理施設許可をうけて投資、有毒物資による近隣の村の飲料水汚染等で癌患者が多数発生。地方自治体が、施設設立不許可処分、これを企業が提訴。約1,700万ドルの賠償の判決が出ました。
(2)カナダ政府が人体有害毒性の指摘があるガソリン添加物MMTの輸出を禁止すると、同製品生産企業である米Ethyl社は確実な証拠もなくこれを規制しようとしているという主張し、結局。カナダ政府は1,300万ドルを支払い和解。
(3)カナダ政府は米国製薬会社イーライリリー社社して注意欠陥多動性障害治療剤の臨床実験数が不十分であるとして特許を与えず。会社はこれをカナダの最高裁判所に持ち込んだが、カナダの最高裁判所はこれを却下。今度はイーライリリー社はISD条項でカナダ政府を訴え、その額は約一億ドルです。
憲法は国会が最高機関としていますが、ISD条項はこの法律を裁くのです。日本では最高裁の判決が最上位です。ISD条項はこの判決を裁くのです。
次に尖閣問題について、言及いたしたいと思います。
日本にとって棚上げが最も望ましい方向であると思います。日中双方が主権を主張しているなか、日本の管轄を認める。軍事力を行使しないとの暗黙の了解。そして、管轄継続であれば、領有権主張に将来有利に展開いたします。
このなか、最も重要な点は、紛争を回避することにあります。中国は領有権主張を強めていますが、紛争解決策としての棚上げは依然主張しております。1979年の読売新聞社説は、次を述べています。
『日中双方とも領土主権を主張し、現実に論争が存在することを認めながら、この問題を留保し、将来の解決を待つことで日中政府間の了解がついた。それは、共同声明や条約上の文章にはなっていないが、政府対政府のれっきとした“約束ごと”であることは間違いない。約束した以上は、これを順守するのが筋道である』
今日の日本政府の立場は、棚上げの合意はないという見解である。しかし、栗山元外務次官は昨年、アジア時報に次を記述致しました。
『筆者(栗山)は、このような経緯を踏まえると、国交正常化に際し、日中間において、尖閣問題は「棚上げ」するとの暗黙の了解が成立したと理解している』
78年の経緯に触れたのち
『72年の国交正常化の時の尖閣問題棚上げの暗黙の了解は、78年の平和友好条約締結に際して再確認されたと考えるべきであろう』
ちなみに栗山元次官は、日中国交回復の時、条約課長の任に当たっております。
次に尖閣諸島で、武力衝突で日本側が有利に展開することはない。中国は従来より台湾を正面に添え、軍隊を配備してきた。ここでの戦闘機の配備を見れば、尖閣諸島周辺の制空権は中国が握ると考えられる。中国は短距離、中距離弾道ミサイルを配備し、さらにクルーズミサイルを有している。
戦闘になれば、飛行場の滑走路破壊ぐらいは容易であり、軍事的に日本が有利に立てることはないと考えるべきである。在日米軍基地も同じ危険の中にある。このなか、日本がとるべき道は、平和的手段を模索することである。
第一に、相手の主張を知り、自分の言い分とのあいだで、各々がどれだけ客観的に言い分があるかを理解し、不要な摩擦は避ける。今日、日本人で、中国がいかなる法的根拠で尖閣諸島を主張しているかを知っている人は殆どいない。
第二に、領土紛争を避けるための具体的な取り決めを行なう。
第三に、国際司法裁判所に提訴するなど、解決に第三者をできるだけ介入させる。
第四に、緊密な多角的相互依存関係を構築する。
第五に、国連の原則、武力の不行使を全面に出していく。
第六に、日中間で軍事力を使わないことを共通の原則とする。主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵。
第七に、現在の世代で解決できないものは、実施的に棚上げし、対立を避ける事である。あわせて棚上げ期間は双方がこの問題の解決のために、武力を利用しないことを約束する。
第八に、係争地の周辺で紛争を招きやすい事業につき、紛争を未然に防ぐメカニズムを作る。漁業、資源開発。
次に、集団的自衛権の問題。
集団的自衛権は、柳井元駐米大使を座長とする有識者会議の事例を中心になろう。重要なポイントは、日本で討議されている集団的自衛権は、国連の集団的自衛権を想起させるが、これは国連の理念と対立する理念である。
国連の理念は、次を基軸としている。
第二条第四項。すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇、または武力の行使をいかなる国の領土保全、または政治的独立に対するものも国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
第五十一条。この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して、武力行使が発生した場合には、個別的または集団的自衛権の権利を害するものではない。
つまり、各国は、武力行使を慎む。万一、武力行使をされたら、集団的自衛権が発生するというものである。しかし、今日、米国が行なっている戦略は、国際的安全保障環境の改善のためという名目であって、このとき、相手国の攻撃が実在することを必ずしも必須とはしていないということです。
実は、この戦略は1948年のウェストファリア条約から、今日の国連憲章に繋がる西側の思想の対極にあるものである。この戦略に従って、日本の軍事的参加を求める集団的自衛権の行動が付随的に出てくる。
あくまでも、攻撃は米国及びその同盟国側がスタートすることを前提としている。こうした戦略がいかに間違ったものであるかは、イラク戦争、アフガニスタン戦争が明確に示している。かつ、イラク戦争では、各国がその是非につき、公的機関で検証を行なっているが、日本は、国会を含め、十分な検証を行なうことなく、同じ過ちを課す集団的自衛権に突入しようとしているのは、極めて遺憾な現象であると見られます。
少なくとも、集団的自衛権の推進者は、イラク戦争につき、なぜ間違ったか。明確な答えを示すべきであります。
この関係で、北朝鮮に言及しておきたい。北朝鮮は、日本向けとなりうるノドンを200発から300発、実戦配備しているといわれる。国民を守るという意味で、ミサイル防衛の実効性はまったくない。北朝鮮については、かつてキッシンジャーが述べた外交を展開すべきである。
イ) 核保有国の戦争は、中小国家であっても、核兵器の使用に繋がる。
ロ) 核兵器を有する国は、それを用いずして全面降伏を受け入れることはないだろう。一方で、その生存が直接脅かされていると信ずるとき以外は、戦争の危惧を、危険を犯す国もないと見られる。
無条件降伏を求めないことを明らかにし、どんな紛争でも国家の生存の問題を含まない枠組みを作ることが米国外交の仕事である。今日の日本外交を見るに、中国、韓国、北朝鮮の立場に配慮することなく、いたずらに強硬論をぶつ傾向があるのは、大変危険である。
欧州であれ東南アジアであれ、武力を使わず、平和的解決を行うメカニズムを構築している。相互依存を高めることが武力衝突を避ける最善の策である。
ご静聴、どうもありがとうございました」
(冒頭から15:00まで)
<一部質疑:孫崎氏部分>
・民主党・田中直紀氏
:米中関係について
「二点ご説明させていただきたいと思います。まず第一点、米国は1975年からずっと東アジアでは日本を一番大事だと思って来ました。しかし、2010年ぐらいから、指導者層および国民、両方とも中国を一番重要であると、このような意識の変化があるということが1つであります。
それからもう一つ、アメリカの政策決定の中では、いわゆる軍事派、中国を脅威と見て、これにどう対応しようかというグループ。そして、そのなかで日本の軍事力を使おうとするグループ。これが1つ。
それからもう一つ、G2構想を主張していますけれども、世界が米中という2つで決定していくという方向になるのではないかと、これは金融、それから産業グループだと思います。この2つのせめぎあいがあって、アメリカの対中政策は厳しい路線と柔らかい路線が入り乱れてくると。
しかし、最終的に現状でオバマ政権が、オバマ大統領がどちらを取るかと言いますと、私は軍事対決ではなくて、中国都の関係を持つということだと思います。その意味で、安倍首相が今、いろんな強硬路線を出している。それに対してアメリカ政府が待ったをかけている。これは、アメリカオバマ政権の対中配慮が影響してるものだと思ってます」
:TPPについて(日本に外交力があるか?)
「ないと思います。これは極めて明確であって、これまで合意されている事項について、新たに交渉することはないという原則は成立しております。そして、TPPはもはや最終段階に入り、7月の会議、9月の会議、ここで基本的な合意をするということですから、今まで合意されたことを覆すということはありませんし、したがって、新たにISD条項というような基本原則について、日本が変えられるはずがありません。
このような問題について、あたかも日本が交渉力で変えられるというようなイメージを作ってるというのは極めて危険なことだと思っております」
:尖閣問題について(今後の国家間の関係進展について)
「私は1972年の田中角栄、あるいは1978年の園田外務大臣、この人たちがなぜ棚上げに合意したか、この点についてもう少し現在の日本人は考えてみるべきであろうかと思っております。それは利点があるから。その利点は、紛争をしない。これが一番重要なことだと思っております。その意味で、棚上げをもう一度、真剣に日本国民、そして国会の先生方、ご検討いただければありがたいと思いますし、この問題で、非常に重要なポイントは、棚上げの合意があったにもかかわらず、その当時の関係者があったと言っているにもかかわらず、現在の政府はないと言ってる。歴史を改ざんして行動しようとしている。これは非常に危険なことだと思ってます」
:集団的自衛権について(東アジアの平和と安定に対する影響は?)
「まず重要なことは、日本の領域に対して、外国が攻撃をした時には、日本およびアメリカは各々自国の憲法に従って行動を取るということが日米安保条約で決定されております。したがって、集団的自衛権というのは、イラク戦争、あるいはアフガニスタン戦争、このような問題に日本の自衛隊を派遣すると。このような問題であると思います。
もう一つ、東アジアの状況に関しては、例えば北朝鮮のテポドン、これを準備している段階で先制攻撃をすると、このような考え方に結びつき、反撃ではノドンで日本が反撃される可能性がありますから、この集団的自衛権を東アジアで適用していこうとすることは、日本の安全にとって極めて危険な状況を作り出すと思っております」
生活の党・森ゆうこ氏
森「生活の党の森ゆうこでございます。今日は三人の公述人の先生方、たいへん有意義なお話ありがとうございました。それぞれの先生方のご主張、色々と立場が違い、また視点も違うんですけれども、たいへん興味深く聞き入っておりました。
まず孫崎公述人に質問させていただきたいと思います。先般、主権回復の日ということで式典が開催されました。非常に、これはシンプルな疑問なんですけれども、いわゆる保守論客と言われる人たち。
それから特に、安倍政権、安倍総理をはじめ、日本の独立だ、自立だと声高に言う方たちは、なぜか、これは印象としてなんですけれども、米国に対しては、特にこの間の日米首脳会談も、ここまでおみやげを持っていくのかとか、あまり戦略的に、我が国の国益をできるだけ確保するような主張をされていないのではないかというふうに、何故か保守であるというふうに自らおっしゃっている方に限って、対米追従ではないかというふうな印象を持つような言動というふうに思うんですけれども、なぜそういうふうになるのか。
そうでないと言うならそうでないというふうにおっしゃっていただきたいと思いますし、なぜそのようなことになるのかということについて、先生、もしご見解があれば、お聞かせいただきたいと思います」
孫崎「はい。主権回復の日。これは2つのものがありました。1つはサンフランシスコ条約で、日本が独立するということ。もう一つは、日米安保条約です。そして、日米安保条約とともに、地位協定があった。
この日米安保条約を作るときに、ダレスがどのような事を言ったのか。アメリカの交渉。「我々が望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ持つ」これが今日まで続いているんですよね。
ですから、世界を見渡していただければ、外国の軍隊が、自分たちの思うような条件で居続ける。こんな国はほとんどないですよ。ということで、政治家、役人も含め、日本の国に対して奉仕する者。それは、少なくとも外国の軍隊が不必要に、そして一方的な条件でいるという状況は、少なくとも直していかなくてはいけない。
これが、主権回復の日の、かけている論点だったと思っています」
森「はい。ありがとうございます。いまのご指摘、私も共感をさせていただきたいと思います。まず我が国がどのように自らの主権を守っていくのか。どう考えていくのかということについて、まずは虚心坦懐に米国と話をするというところからスタートしなければならないのかなというふうに思っているところです」
(中略)
森「孫崎公述人、最後に、一言で結構ですけれども、TPPその他、我が国の進むべき外交、一言でと言うのは大変ですけども、これだけは、というのが一言ありましたら、よろしくお願い致します」
孫崎「恐縮です。TPPを含め、実態をしっかり見極める。これが一番重要なことだと思ってます」
森「はい。ありがとうございました」
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