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2013年5月 2日 神州の泉
標題に「酸鼻(さんび)を極(きわ)める」とあるのは、見るに堪えないむごたらしいさまを言う。次に続く「ウィンブルドン現象」とは、ウィキペディアを参照すると、市場経済において自由競争が進んだため、市場そのものは隆盛を続ける一方で、元々その場にいて「本来は地元の利を得られるはずの者」が敗れ、退出する、あるいは買収されること。
競争によって活性化し望ましいという見方と、在来のものが除外されて望ましくないという二通りの見方がある。語源はテニスのウィンブルドン選手権。この選手権では世界中から強豪が集い、開催地イギリスの選手が勝ち残れなくなってしまったことから来ている。
ウインブルドン現象。いかにも仰々しい言葉だがなんのことはない。強い者が勝ち残り、弱いものが敗残者となって去っていく典型的な優勝劣敗のことである。今、TPPの説明にわざわざウインブルドン現象という言葉を使ったのは、日本がTPP体制に組み込まれると、上記説明にあるように、究極の自由競争原理が作動して、グローバル資本が優勢を極め、地元(日本)の企業が駆逐されるか買収され、日本市場は矢継ぎ早に外国資本の草刈り場になるからである。
アメリカがTPPという貿易交渉を凝らした経済爆弾を投下してきた背景は、1989年の日米構造協議(4年後には日米包括構造協議)に始まり、年次改革要望書、日米経済調和対話と続いた、一連の対日市場改変要求の最終帰結として出てきたものである。実はアメリカの露骨な内政干渉は小泉・竹中構造改革路線に具体的に反映されたが、その傀儡政策の一環として経済特区があった。
2002年(平成14年)の小泉政権時代から始まった経済特区(構造改革特区)は、グローバル資本にとって理想的な市場改変のモデルというか、パイロット版になっている。国立国会図書館のISSUE BRIEF「総合特区構想の概要と論点」を参照すると、構造改革特区や総合特区の位置づけは、それらを包括する概念である経済特区(Special Economic Zone: SEZ)である。
経済特区に一律の定まった見解はないようだが、ある研究では、「一定の地域を指定して、その地域において他地域とは異なる税制(優遇税制)、規制(規制緩和)等の定めを設けて、地域経済の発展、ひいては国民経済の発展に寄与しようとするもの」と定義されるらしい。
この特区の性格的な分類は、次の三つである。(上記ISSUE BRIEF 産業経済課 伊藤白氏の論述から)
@ 税の軽減・減免を用いる「保税特区(税制緩和特区)」
A 税制以外の規制緩和措置をとる「規制緩和特区」
B 両者の機能を併せ持つ「税制・規制緩和特区」
以上、経済特区の最も入口的なことを書いたが、難しい込み入ったことを言うつもりはさらさらない。小泉政権時代から始まった経済特区は、神州の泉の受けた印象から言えば、@の税金優遇は法人税の軽減であり、Aの規制緩和措置とは、あの悪名高い小泉・竹中構造改革路線の思想をそのまま特区にスライドしたものである。Bの場合は法人税優遇措置と小泉・竹中構造改革に則った規制緩和措置の合成特区であり、全体の性格は紛うことなき新自由主義特区である。
つまり、ここ十数年間、われわれがテレビや新聞などで日常的に目にする『経済特区』とは、大企業優遇と外資参入のための“地ならしエリア”に見えて仕方がないのだ。経済特区第1号の成り立ちと性格を考慮すると、これが地域産業や経済を振興するどころか、安定した日本の経済市場を破壊する方向性を持つことが分かる。
2002年6月、小泉純一郎内閣は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」、いわゆる「骨太の方針」を閣議決定しているが、この中に盛り込まれたのが「構造改革特区」であった。この創生過程を見れば、経済特区が、年次改革要望書の思想を日本に適用するに当たり、経済特区の名の下でグローバル資本の進出に都合の良いエリアがパイロット的に敷設されてきたことが分かる。
経済特区は、その出発点からして小泉構造改革のいかがわしさが凝縮されているのである。このようにアメリカグローバル資本の意図による経済特区構想が伏線的に敷かれていた中にあって東日本大震災が起き、グローバル資本は東北の震災跡地にショック・ドクトリンを応用して経済特区の進化形を敷設しようとしている。
これを裏付ける動きが宮城県の「漁業特区」であり、経団連の米倉弘昌経団連会長らが主導しようとしている耕作放棄地を強制集約する機構の設立など、漁業や農業に民間企業を参入させ、経済特区思想によって大企業優遇を行う意図がある。
これらに関する民間投資活動において、前政権の松本剛明(マツモト・タケアキ)外務大臣が改正PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)にちなみ、『被災地に「特区」を設け,内外無差別の下,資本や労働力の集約に資する税制上の措置や経済的誘因措置,規制緩和といった思い切った優遇措置を導入することも検討』と、実に驚くべきことを言っている。留意してもらいたいことは、松本大臣が経済特区の最終目的が外資参入であることをはっきりと示したことである。
こうしてみると、特区構想がTPPを展望した地ならしであったことが見えてくるが、グローバル資本に日本市場を更地のまま明け渡すと日本は徹底的に富を吸い尽くされ、日本人の餓死者が大量に出ることになりかねない。いずれにしても、ことごとく日本を収奪された後には飢えた国民が凄惨な死を迎えるという状況になりかねない。
森鴎外が存命だった当時、欧米白人種は日本人に対して黄禍論を楯に、東洋のサルは大人しく酒作りをして、できた酒をわれわれ白人に貢いでいればいいのだ、白人と同等になって出しゃばるとただじゃおかないぞという感じだったらしい。東インド会社で現地人を酷使したイギリス人と同じ感覚で日本人を見ていたようである。これに鴎外が激高していたという話がある(森鴎外 ナウマン論争外聞)。TPPは日本に原爆を投下した当時とあまり変わらない感覚で行われるだろう。だからこそ、日本を阿鼻叫喚の地獄にしないためにもTPPを脱退するべきだ。
最後に経済特区構想とは、日本市場全体を新自由主義体制(グローバル・スタンダード)に大転換するための引き金(パイロット)になっているだけではなく、日本列島分断構想としての道州制も睨んでいるような気がしてならない。
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