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2013/4/22 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
冬に逆戻りしたような寒さの先週末、新宿御苑で安倍首相主催の「桜を見る会」が開かれた。一輪の花もなくなった葉桜を前に、安倍はこう言って笑顔を見せた。
「大切なのは、葉桜でもまた咲くということだ。私もおかげさまで、もう一度花を咲かせることができました!」
観桜会には数多くのタレントが招待されたが、安倍は人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」と一緒に手で「Z」を描くポーズまで決めて、記念撮影をしていた。わが世の春といった感じで大ハシャギだったのだが、もちろん、安倍が首相になって、日本に花が咲いたわけじゃない。それじゃあ、安倍は何に高揚していたのかというと、一度は失敗したけれど、返り咲いた自分に酔っていたわけだ。
「俺は桜だ」とでも言いたいのだろうが、この無邪気さというか、子供っぽさに呆れてしまう。
マトモな人間であれば、一度失敗したことを恥じる。「返り咲いたぞ!」なんて、声高に自慢しない。それが“節度”というものだ。まして、安倍の場合、前回は政権ブン投げなのである。
「アベノミクスだって、株価が先行しているだけで、実体経済を見れば、まだまだ成果は出ていません。日本全体が冷え込んでいるのに、首相だけが“返り咲き”で浮かれている。そんな印象ですね。最近の安倍首相はやたらとテレビに出たり、話題づくりに奔走している。過去のトラウマというか、不安の裏返しにも見える。いずれにしても、アイドルとチャラチャラして喜んでいる最高指導者なんて、欧米にはいません。一国のトップとしては軽すぎますよ」(政治評論家・野上忠興氏)
これがテレビを見た国民の実感ではないか。
◆軽すぎるトップの姿に国民はドン引き
安倍は「自分のおかげで日本が明るくなった」なんて、自画自讃しているが、よくもまあ、イケシャーシャーと言えるものだ。期待先行で株が上がっているだけで、これを実体経済の上昇に結び付けられるかどうかは、これからが勝負なのである。しかし、安倍は「返り咲いた」ことで浮かれている。それが目的だからだろう。政治ジャーナリストの山田厚俊氏はこう言った。
「国民への仕事ぶりで再登板の意義をアピールするならともかく、マスコミの前で『返り咲いた』と無邪気にハシャいでいるようでは、自己満足に過ぎません。いかにも苦労知らずのボンボン政治家という感じがしますね」
そもそも、それなりの能力があれば、1回目だって失敗しない。経験の問題ではなく、資質、器、オツムの問題だし、まして、国政で失敗など許されるわけがない。だから、失敗すれば、黙って身を引く。どこの国の指導者でも当たり前のことだ。それなのに、リベンジとかいってノコノコ出てきて、首相に返り咲いた途端、「桜を見る会」でハシャぐ安倍。おそらく、権力掌握をひけらかしたいのだろうが、こういう姿を見ると、この男の本性がわかる。国家、国民のことよりも、自分の虚栄心を満たすことしか考えちゃいないのだ。
◆アベノミクスもTPPも本質は同じ売国政策
「国より自分」といえば、安倍が敬愛する自慢の祖父、岸信介もそうだった。
A級戦犯の岸が巣鴨プリズンから釈放されたのは、米国と取引したからとされる。20年にわたってCIAを取材してきたニューヨーク・タイムズの記者が“噂、伝聞一切なし”で書いた本「CIA秘録」には、こう記されている。
〈東条英機ら死刑判決を受けた7名のA級戦犯の刑が執行されたその翌日、岸は児玉らとともに釈放される。釈放後、岸はCIAの援助とともに、支配政党のトップに座り、日本の首相の座までのぼりつめるのである〉
自分の保身のため、米国の協力者になった岸には、CIAから資金が供給された。首相になった岸は日米安保条約改定を強行。以後、米国従属の歴史が積み重ねられていく。
安倍がやっていることも同じだ。沖縄県民の怒りを無視してオスプレイを配備し、地方が壊滅するTPP参加を勝手に決めて、原発再稼働もなし崩しで進めようとしている。
筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)が言う。
「安倍首相は、国民の安全・安心を守るとか口では言いますが、出まかせの大ウソです。公約違反のTPP参加など、国益とは正反対のことばかりやろうとしている。TPPで日本は生体解剖されてしまいます。経済構造、ルールを米国標準に変え、日本の富を米国に差し出そうというのです。喜ぶのは財界など、わずか1%の富裕層だけ。庶民にとって、いいことなんて何もありません。そういうことをなぜ、やるのか。米国の機嫌を損ねたくないからでしょう」
◆名誉を挽回することだけが目的の政治
安倍が自画自讃するアベノミクスだって、「国より自分」という発想から出てきている。一時的に株価を押し上げて、見せかけの好景気を演出し、バブルを膨らませる。後は野となれ山となれ。ハジけようが、知ったことじゃない。参院選さえ乗り切れば、安倍長期政権が見えてくる。今だけ、国民をだませればいい。そんな発想なのである。
「アベノミクスは、つまるところアメ(リカ)ノミクスという側面もあります。3本目の矢とされる成長戦略の正体は、日本を米国型の効率重視経済に変えるということで、TPPと表裏一体なのです。医療は営利産業にする。効率の悪い農家はなくす。こんな調子で規制緩和だけを推し進めれば膨大な数の失業者が生まれてしまう。喜ぶのは日本市場に進出できる米国企業ということになります」(小林弥六氏=前出)
しかし、安倍にとっては、再登板したことが大事なのであって、それが「花を咲かせること」なのだ。
安倍を見ていると、前回の名誉挽回のためだけに政治をやっているんじゃないかと感じることもある。つまり、私利私欲というか、個人の事情だ。
今月20日、参院山口補選の応援で地元入りした安倍はこう言った。
「6年前に参院選で惨敗した。親の敵のようなものだ。取り戻さなければ、私は死んでも死に切れない」
この感覚にはゾッとするではないか。厳粛な国民の審判も、安倍にかかると「親の敵」になってしまうのだ。
「国政選挙は仇討ちの場ではありませんよ。どうしてそんな表現が出てくるのか、本当に驚きました」(野上忠興氏=前出)
私怨と名誉欲で国を動かされてはたまらない。
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