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2013年04月22日 世相を斬る あいば達也
現在、国内を二分して侃々諤々な議論が展開される「TPP論争」は、交渉に参加することで、批准までは既成事実として扱われているのも不思議だ。批准もさることながら、脱退も不可のような解説が多いが、そんな馬鹿な国際協定など存在する筈もない。日米同盟同様のトラウマから生まれている言説に過ぎないのだろう。尚且つ、これらの議論は、筆者を含め協定の中身すら見ないで推定議論しているのだから滑稽だ。開けてから、更に度肝を抜かれるものなのか、骨抜きの自由貿易協定なのか、その実体は判るのだろう。
いずれにせよ、このような自由貿易の看板を掲げながら12か国による囲い込み貿易協定は、閉鎖的な経済ブロックの構築でもあるわけで、参加していない国から見れば、「ブロック鎖国経済」に映ることも念頭においておくべきだ。また、このようなブロック鎖国経済(TPP)が軍事同盟の色彩が強いものだと、他の近隣諸国に見られてしまえば、TPP枠内の国家との外交以外には、益よりも害の方が勝ってしまう事実も覚悟しなければならない。問題は、なぜ、米国オバマ政権がTPPに横入りしてまで、この協定のイニシアチブを取ろうと考えたのかという問題である。
本来の資本主義の成長原動力を失った、唯一の覇権国アメリカは、その原動力を金融工学に託した。その効果はたしかに享受したが、その詐欺のような原動力は、リーマンショックによって見事に破綻し、その後大統領に就任したオバマは、本来の資本主義回帰を試みた。当然、本来の資本主義における成長の原動力は、あらゆる金銭に置き換えられる需給のバランスで成り立つ。しかし、ふり返って自分の国の需要の貧弱さ、供給力の欠如と云う現実に直面した。つまり、金融資本主義と云う速攻性の強い麻薬を飲み続けた米国の経済は、まさにスカスカの状態だったのである。
所謂、米国経済は「骨粗しょう症」の状態だった。そこで、製造業の復活を夢見たのだが、骨の髄までスカスカな空洞化は、今さら治療のしようがない事に気がついた。自力で、アメリカの経済を復活させることが不可能となった以上、どこかの他国の経済成長の原動力を拝借してでも、成し遂げなければならないと思うのは、一国のリーダーとして当然の思考の結果である。日本の市場に成長の原動力があるかもしれないと考えたのか、居直り強盗になってでも、属国でありながら覇権国並みの一人当たりGDPで、富を浪費する日本と云う国家から富を収奪するシステムを構築するのは、米国流の正義でもある。おそらく、オバマ政権の行き着いた先がTPPと云う収奪システムなのだろう。
幸か不幸か、都合良く日中は尖閣問題で睨みあっているし、北朝鮮の核実験やミサイル問題が起き、日本政府としては、米軍に加勢して貰う気持ちが強く作用した状態が続いている。09年の鳩山・小沢民主党政権が誕生した時は、相当焦ったが、日本の司法行政とマスコミが、米国への忖度的態度で、自発的に自浄作用を発揮してくれたのでことなきを得た。その民主党の惨状に学習機能を発揮した、現在の自民党政権は、従前以上に恭順の意を示し、もはや逆らおうという気力すら見せない。
しかし、このように米国の思い通りが続くことは、世界の潮流が許さない時代が来ているので、一過性の現象に過ぎないのだろう。安倍自民政権である方がオバマ政権には都合が良いわけだから、G20財務相・中央銀行総裁会議共同声明でも、日本の金融政策や為替操作的政策を口汚く罵ることもなかった。欧米にとって、日本のバブル醸成は当面の間は好都合と云う、渡りに船な出来事なのだ。しかし、彼らの思惑に反して、日本国内でアベノミクスの副作用が先行的に表面化し、秋口には安倍政権が行き詰まるリスクがないわけではない。
そのような、綱渡りのような経済運営を取らざるを得ないオバマ政権の足元には火がついている事実も存在する。クリントン政権でさえ成立させられた、銃規制に関わる、僅かな規制関連法が、議会によって粉々に粉砕され、オバマに「恥ずべき日」と言わしめたのである。この米国の銃規制問題は、米国の建国の精神とも深く関わっているのは周知の事実である。もう少し深く考えると、ボストンはアメリカの独立戦争における歴史的重要地点(ボストン虐殺事件、ボストン茶会事件など)であり、マサチューセッツ州でみれば、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学などもあり、学生数が25万人以上とも言われ、歴史の町であり、学都である。
このアメリカの象徴的都市で起きたボストンマラソン爆破事件、ウェイコ近郊肥料工場爆発事件、オバマと議員に送りつけられた毒物事件には、何ら関連性がないように見えるのだが、そこにオバマの銃規制法案が絡むと、相当のキナ臭さが生まれてくるのである。リアリストで狡賢いオバマであるが、彼には、相互扶助世界の構築という遠大なビジョンもあるので、彼自身米国に多くの敵を抱えている現状も見逃せない。米国内では、銃規制に苛立ちを募らせる勢力の自作自演が、今回の一連の事件なのではないか?という疑問が多く投げかけられている。たしかに、マラソンゴール付近で、極めて非現代的圧力釜を利用した爆破装置が登場したり、その二人の犯人が、その後コンビニ強盗をすると云う、頭を捻るような出来事が起きている。
たしか、93年にウェイコで起きたブランチダビディアン事件の強引な連邦政府の弾圧に対し、米国内右翼勢力が宗教の自由や、米国民の武装の権利を主張し、オクラホマ連邦政府ビル爆破事件が起きた。このオクラホマ連邦政府ビル爆破による死者は168人で、あの911が起きるまで、米国最大のテロ事件として歴史に刻まれている。この時使用された爆弾は肥料の製造に使用される化学薬品で作られていたもので、何やらデジャブナものを連想させる。
今回の一連の事件に関連性はないと云う方向の報道が主体だが、現在の米国は、オバマに象徴される経済至上主義と極めて保守的な国民層が睨みあっている、或いは憎み合っているような情勢で、アメリカの足元は大きく揺らいでいる。ゆえに弱いと言うのではない、ゆえに危険なのだ。どちらも強気に出るのが米国流の暴力付きデモクラシーなのだから、こんな状況の国を相手に“やらずぼったくり”のような協定を締結することで、日本国民は財政赤字以上の負債を背負わされたことになる。
TPPの包括協議とは別に、この協定では“二国間協議”と云う罠まで仕掛けてあり、日本のシステムや文化が何処まで壊されるか、想像もつかない。中には、当然改革した方が良いものもあるが、筆者などが改革を強く思う、行政改革や司法制度改革、マスメディア改革などは、要求に入っていない。つまり、経済界、霞が関官僚、マスメディアは治外法権にして貰える密約でも存在するような協定の中身になっている。
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