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インタビューに応じる堀潤さん=東京都新宿区で2013年4月13日、岡本同世撮影
堀潤さんインタビュー:NHK辞めた理由、ネットメディアへの思い、政界進出 すべてを語った
http://mainichi.jp/select/news/20130421mog00m040003000c.html
2013年04月21日 毎日新聞
◇市民の情報発信力の強化をやっていきたい
NHKキャスターとして、ツイッターを活用して福島第1原発の問題を積極的に発信し続け、3月に退職したアナウンサーの堀潤さん(35)が毎日新聞の取材に応じた。
NHK時代、堀さんのツイッターは10万人以上のフォロワーがおり、福島第1原発事故の報道について、「国民の生命財産を守る公共放送の役割を果たさなかった」などの報道批判も投稿。マスメディア不信を抱いたネット利用者から人気を博した。その一方で、堀さんが米国留学中の昨年に製作した原発ドキュメンタリー映画の上映をNHKが許可しなかったなど、組織内でのあつれきも伝えられた。堀さんは現在、ニュースサイト「8bitnews」の活動に力を入れている。思いのすべてを語った。【聞き手・柴沼均】
−−NHKを辞めた理由は。
堀さん 1年半以上前から局と話を続けてきた。もともと、NHKに入った理由の一つに、テレビメディアが視聴者との双方向の関係を築けていないということがあった。テレビは一方通行の情報しか流していない。就職活動のころには、デジタル放送になれば双方向のやりとりができるようになる双方向時代の幕開けだといわれていた。ところが10年以上たっても、テレビに双方向性が求められていても、本当にやりとりしなければならないことはリスクがあるから制限をかけて見せましょうねとアリバイ的な使い方だけ。ツイッターも画面の飾りみたいなアリバイ的な使い方しかなしえていない。
なぜ、双方向のやり取りが必要かというと、今、メディア不信が起きているのは、国民がちゃんと知りたいとか、疑問に思っていることとか、不安に思っていることに対して、メディアが答えていないから。メディアからするとネットに出ている情報って玉石混交で信頼性に欠ける、信用ならないもの。一方、ネットは、マスメディアは自分たちの都合のいいことしか言わないんじゃないか、という不信感があり、対立がずっと続いてきた。
東日本大震災、福島第1原発事故があって、マスメディアが出す情報と、インターネットで1次情報を持つ人が直接発信して、専門家的な高度な情報も出回るようになり、乖離(かいり)が非常に進んでいった。その乖離が進むほど疑心暗鬼が進む。我々ジャーナリストは疑心暗鬼を生むような社会を改善しないとならない。そのためには、インターネット上の市民の発信というものをもっと的確に捉えて、それを自分たちの中に取り込んで、直接的に疑問を解決するとか、裏を取り直すとか、そういうことをやりながら、市民といっしょにニュースを作っていけば、一つのギャップが縮まるんじゃないかと思っている。
ところが、自分が組織の中でインターネットの発信の重要性を上司に説明したり、それを体現するために積極的にツイッターをしたのだけど、そういう活動というのは、既存のマスコミのなかではコンプライアンス違反に近いものになっていく。自分が目指すべきものが体現できないのではということを強く感じていった。特に原発の報道というのはメディア側にとってみても、扱いがセンシティブだった。
−−NHKは、震災を契機に堀さんのツイッターなど、ネットとの関係は進んだようにみえるが。
堀さん メディア側がブログやっているとか、動画ニュース配信が進んできているとか、番組でツイッターとの融合を図るとかあるが、インターネットコミュニケーションの本質を捉えきれていない。メディア側が持っている情報にもっとたくさん皆がアクセスできるようにならないといけないと思う。今はブログも、ツイッターも一方的な発信。NHKでニュースの完成形を作ってそれを視聴者に投げるやり方。僕はそれだと足りないと思う。全部作る前の段階からもっと市民が参画すればいい。
−−欧米メディアはネットの活用が進んでいるが、日本では進んでいない。それはメディアの方に問題があるのか、情報を発信しようという市民がの動きがないのか。
堀さん 双方に改善の余地がある。まずマスメディア側の話で言うと、イギリスの新聞ガーディアンは「オープンジャーナリズムを実現します」と高らかに宣言して、編集長が「ジャーナリストは世界で唯一の専門家でない」と明言している。これだけ多様で複雑な世の中を迅速に報道するにはあらゆる人々の専門的な知見をニュースルームに結集させる必要があり、ジャーナリストだけでなく科学者、弁護士、1次情報をもった市民など、いろんな人が一つのニュースに参画して検証しあうような報道をめざそうとやっている。たぶんこれはインターネット後の社会ではもっとも理想に近い形のジャーナリズムのあり方だと思う。
たしかに福島第1原発事故でも、ジャーナリスト一人がすべての状況を検証したりは難しい。それよりスピード感をもってやるにはニュースの製作段階から科学者や専門家と一緒に情報を検証しあうことがスムーズにできればいい。CNNも、一般視聴者からの映像やニュースを一回サイトに集めて、CNN側でこれはすごいと思ったものをどんどん放送にとりいれている。普通の記者のあとに、一般の人が現場から中継したりする、そういう試みを非常に重要だと思う。
ただ、日本は情報を発信したい市民は多くなかった。最近やっとツイッターとかフェイスブック、ユーチューブを使った発信が広まったが、そのきっかけになったのは震災と、スマートフォンの普及。だから、まだここ数年の出来事で、まだまだ私たちが自分で情報発信するときに、あやうい伝聞情報を本当のようにツイッターに流したり、デマ情報をどんどんリツイートする。そういう環境の底上げが絶対に必要なので、僕は8bitnewsで教育啓蒙(けいもう)的活動を軸に据えて、市民の情報発信力の強化をやっていきたい。
マスメディア側の開放は僕がいわなくても時代とともに必然的に行われていくと思う。しかし市民の発信力強化はだれかが積極的にやっていかないと、うまくいかない。今まで市民メディアがなかなか成功しなかったのは全部自前主義にこだわっていたからで、インターネットで集めた情報をインターネットで出すことだけを考えていた。そのため、扱う情報が限られたり、参加者が特定の人に偏ってしまった。そうでなくマスメディアの人間は情報の選定をする技術や取材力、情報の発信インフラを持っている。マスメディアと市民が協業することで、発信力をどんどん強化していく。
−−8bitnewsでその受け皿を考えているのか。
堀さん 市民記者やフリージャーナリストをサポートするために、取材費と取材技能の伝授を積極的にやっていく。取材費はクラウドファンディングを検討しており、ある取材をしたい人に賛同した人がお金を投げ銭のように出す。それに対して取材者は取材過程をオープンにしたりとか、もっとこういう取材をしてほしいといった提言を受け入れながら、ニュースを作る、という仕組み。新聞社、出版社がこういう企画を考え、こういう展開をしたいから皆で一緒に作らないかと、呼びかけをするのもいい。出し口でマスメディアと協力して、みんなが一生懸命取材したことを、世の中に出していく。
ビジネスとしては難しいが、そういう場があることが大事だと思う。アライアンスを広げて、インフラ、技能をつなぎあわせて一つのものを作ることをやってきたい。例えば自前でシステム開発するとコストがかかる。でも、動画はユーチューブが使えるじゃないか。じゃあユーチューブと一緒にやろうとか。日本のネットもマスメディアも、これまで自前主義にこだわり、NHKはNHKのものだけという状況だった。いろんな協業みたいなものをやっていけば可能性が広がる。日本のマスコミ全体が前進するきっかけになるという期待がある。
−−8bitnewsを動画メインにしたのは。
堀さん 動画は一般の人でも事実を伝えやすい発信力がある。文字にするのは精度が求められるが、映像は加工しない限り、写っているものは事実そのもの。最近スマートフォンや精度の良いコンパクトデジカメが普及しているので、メディアに参入しやすいと思った。市民にいきなり記事を書いてくださいといっても相当な労力だが、自分が見てニュースだと思ったものはどんな形でもいいから撮って、短くてもいいからアップロードしてください、きっと反応があるからというメッセージは、自分が情報受信者だけでなく発信者でもある意識のちょっとした底上げにつながると期待がある。
既に成果もあり、昨年、会社を辞めて原発作業員として入った人がいる。彼から「テレビ、新聞を見ていても福島第1原発の中の状況がよくわからないから、自分で見に行く」と相談を受けた。「どうやっていいかわからなかったら僕らがアドバイスする」というと「カメラを持ち込んで福島第1原発に行った。すると、雇用した企業が偽造した履歴書が出来上がっていて、その通りに履歴を書けといわれて、あたかも技能がある作業員のようにして元請けに派遣された。資料も映像もある」と連絡があった。僕らのチームで編集をして、動画をアップロードした。そのことが広まり、新聞社が取材にきたりとか、3月にテレビ番組で取り上げられたりした。僕らが最初に描いていた通りの成功例。
また、昨年6月、会社員の女性が首相官邸前の反原発デモの動画をアップした。その時はまだどこのメディアも取材していなかった。その女性がおっかなびっくり、コンパクトデジカメの動画で撮影をしたものが、一気に拡散され、15万回以上も再生された。場があってきっかけ作り、手伝いがあれば市民の発信力が強化されるということがわかった。
−−8bitとはどういう意味か。
堀さん 今は再び集合の時代だと思う。8bitというとファミリーコンピュータ。ファミコンのスーパーマリオブラザーズが誕生したのは1985年。この年はバブル経済がはじまるきっかけとなったプラザ合意があり、テレビでいうと、「8時だョ!全員集合」が終わった年。家族が一つの部屋に集まってご飯食べてテレビを見る、そういうことがこの年に終わる。分散の時代、個の時代がスタートした。
あれから30年たって、今インターネット上にすごく小さなコミュニティーの集合がはじまっている。オンライン上でいろんなところでつながりあう。再び集合を求める欲求が高まっている。発信者を育てるというのも個人の力で何かを完成させるのでなく、皆で発信を作っていこうという願いをこめて8bitnewsにした。情報の断片がbitだけど一人一人のかけらみたいなものが、これからまたどんどん集合していけばいいよねと。そして、8bitから16bit、32bit、どんどん増えていくような発信になればいい。
今フェイスブックでフォローしていいねを押している人は3500人ぐらいいて、実際に投稿している人が70人ぐらいなので、まだまだこれからだけど、9カ月でアップロードされた動画の数は1100本あるので、それを本格的に広げていきたい。
−−参院選出馬の報道もあったが、議員になると8bitの理念は達成しづらいのでは。
堀さん ジャーナリストとしての活動が制限されることは論外。ただ、メディアを変えるには放送法なり電波法なりどこかで法律、日本の仕組みにコミットしなければならない。そのときにはきちっと政治に参画していく必要があるというスタンス。今はどんどんアライアンスを広げて、草の根的な運動を育てていくのが優先課題。ただ、将来的にはそういうこともありうるでしょう。新しいリベラル勢力が生まれることが大事で、民主党はそれを目指したがうまくいかなかった。もっと生活実感のある実行力のある政治家を求めている。それが必要になったときは、僕とか僕たちの仲間がそういう形で政治に参加していけばいい。選挙をどう勝つかに明け暮れるのでない姿をみせてあげたい。それを徹底するには情報公開につきる。永田町をダダ漏れにしたいとつぶやいたが、そうすることで、みんなに社会を信じる心みたいなものを取り戻せたらいいと思う。
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