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2013年4月19日 植草一秀の『知られざる真実』
4月18日、安倍政権が発足して初めての党首討論が行われた。
民主党の海江田万里党首はアベノミクスと呼ばれる経済政策のなかの金融政策について、懸念されるリスクについて安倍晋三氏に質問した。
安倍氏は質問にはほとんど答えずに、安倍政権の実績を滔々と自慢した。
党首討論は国会論戦のなかでは国民の関心の高いテレビ放映プログラムであるから、政党代表者が国民へのアピールを意識するのは無理もない。
安倍氏が実績を自慢することも分からないではないが、
「及ばざるは過ぎたるに勝れり」
という。
質問もされていないのに、「実績をあげているんです」を馬鹿の一つ覚えのように繰り返すと、テレビを見ている国民の側も白けてくる。
海江田氏が質問した「金融政策のリスク」の指摘は極めて重要で、この重要な質問に対して何も答えなかった安倍氏は、政策を推進する為政者としての責任感を欠いている。
安倍氏が安倍政権の実績についての自慢は抑制的に語り、海江田氏の質問に対して真摯な姿勢で誠実な答弁を示すなら、安倍氏に対する評価は上がるだろう。
しかし、海江田氏の正鵠を射た質問に対してまともに答えようともせずに、過去の民主党政権時代の経済実績の悪さだけを攻撃して、それに比べて、昨年11月以降の経済金融市場の動向はいかに素晴らしいものであるのかだけが吹聴されても、多くの冷静な国民は鼻白む思いを強めるだけだ。
安倍政権の実績と言うが、成果と言えるのは、安倍政権誕生予想が生まれ、そして実際に安倍政権が誕生して、円安と株高が生じたことだけである。
これまでも指摘してきたが、最近数年間の金融市場では、為替レートと日本の株価との間に強い連動関係が観察されている。
円高が株安を、円安が株高をもたらすとの連動関係が観察されている。
昨年11月14日に、野田佳彦氏が衆院解散を宣言してから、円安が進行し、連動して株高が生まれた。円ドルレートは1ドル=79円から1ドル=99円まで変化し、日経平均株価は昨年11月13日の8661円から本年4月11日の13549円まで上昇した。
株価が上昇すれば経済全体には明るさが増す。逆もまた真実だ。株価が暴落すれば経済全体は一気に暗くなる。
政権運営において株価動向は重要な監視対象になる。
この意味で安倍政権の発足とともに株高が生じたことが安倍政権に有利に作用していることは事実であるが、株高が生じたもうひとつの要因として、前政権の反動があることは見落とせない。
野田政権が大増税まっしぐらの経済政策を推進していたため、経済心理が委縮し、株価が著しく割安な水準に引き寄せられていた。前任の政権の失政が安倍政権には幸運に作用したのである。
株価上昇のきっかけになった円安は金融政策の方針転換の予想によって生まれた。
安倍氏が金融政策の運営転換を主張したのである。
具体的には「伝統的金融政策手段」から「非伝統的金融政策手段」に手法が切り替えられた。同時に、日銀総裁が財務省OBに交代された。
このことで円安が進行したが、その評価を定めるのは時期尚早である。
海江田氏の質問はこの点にかかるものであり、アベノミクスと呼ばれる経済政策のなかでは、最重要の懸念事項である。
安倍氏が真摯な態度を示さず、この重要な問題に対してまともな考察をまったくしていないことは明らかにされたが、海江田氏はこのような安倍氏の不誠実な対応をあらかじめ見越して、具体的にどのような懸念があるのかを国民に分かりやすく示してアベノミクスの問題点を明らかにするべきだった。
この意味では、質問者の側の戦術ミスも否定できない。
安倍晋三氏は、賃金が上がった、雇用が増大した、などの言葉を自慢げに話していたが、まったく意味不明である。
株価が上昇して高額消費が盛り上がったとか、経済心理が好転したことは観察されているが、賃金の上昇や雇用の改善などはまったく生じていない。
安倍政権の歓心を買おうとした数社の企業がボーナスを増やすことを表明したかも知れないが、それと日本経済における賃金上昇とはほとんど関係がない。
労働力調査を見ても12月から2月までの3ヵ月間で、就業者数は5万人減少している。失業率は0.1%ポイント上昇した。
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出典:労働力調査(2013年2月、厚生労働省)
安倍晋三氏は雇用が4万人増えたと声を張り上げていたが、数字をあげるなら統計の名称などを明示するべきだ。怪しい発言だ。
昨年11月から本年4月までに生じたことは、円安が進行したこと、それに連動して株価が反発したこと。これだけなのだ。
しかも、その円安をもたらしてきた金融政策の変化については、その是非が長期的な視点から十分に検証されなければならない。評価を下すには時期尚早である。
問題は、今後の経済政策の方針だ。
安倍氏は「3本の矢」と言うが、金融政策、財政政策、成長政策の三つともに重大な問題を含んでいる。
金融政策については新機軸の政策運営そのものの正当性が問われる。
財政政策については、社会保障支出が切りこまれ、利権支出だけが突出して拡大された。
成長政策は実体上、TPPと結びついて、日本の国益を著しく損ねる内容が盛り込まれようとしている。
この三つの論点について、明確に、そして、分かりやすく問題点を指摘する。これが党首討論に求められた討議内容だった。
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