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2013年04月16日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆「犯罪空間」と化している全国の小中高校で多発している「いじめ事件」は、教育委員会制度を改めれば、完全に撲滅できるのか。できると考えているとすれば、「見当違い」も甚だしい。「いじめ事件」とは、「児童・生徒に対する侮辱、名誉毀損をはじめとする基本的人権侵害事件」を含めて、「暴行、傷害、傷害致死、殺人など」の刑事事件のことだ。これは、もはや教育委員会制度の範疇の問題ではない。警察・検察の事件捜査にかかわる問題である。何か考え違いをしていないか。
「いじめ事件」を完全に撲滅しようとするならば、戦前、各学校に軍事教練のために「配属将校=軍人」を配置したように、「配属警察官」(退職者でもよい)を常時配置して、事件の予防、防圧、捜査、被疑者の司直への引き渡しなどの業務に当たらせるしかない。加えて、児童・生徒の基本的人権を守るために、「弁護士」の配置も不可欠である。
◆にもかかわらず、政府の教育再生実行会議は、教育委員会制度の改革に向けて、地方自治体の教育長を教育行政の責任者と位置づけ、自治体の長が議会の同意を得て任命と罷免ができるようにするなどとした提言を取りまとめ、15日、安倍晋三首相に提出したという。NHKNEWSwebが4月15日午前11時44分、報じていた。
教育長を教育行政の責任者と位置づけて、自治体の長が議会の同意を得て任命と罷免ができるようにすれば、本当に、「いじめ事件」は、完全に撲滅できるのか。これは、かなりおかしい。
まず、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(1956年<昭和31年>6月30日公布、教育委員会の設置関係規定施行)は、それまで地方教育行政に関する制度の中核を定めていた教育委員会法を廃止した上で施行された。教育委員会法は、教育委員会の委員を住民による公選としていたが、この法律では、地方公共団体の首長が地方議会の同意を経て任命することに改められた。
教育委員は、議会の承認により首長によって任命され、委員の互選により教育委員会代表者であり教育委員会会議主宰者である教育委員長が選出される。教育公務員であり教育委員会事務執行責任者である教育長が、教育委員会から1人任命される。教育委員長と教育長は、兼任することができない。
政府の教育再生実行会議は、この教育長を「自治体の長が議会の同意を得て任命と罷免ができるようにする」というのだ。つまり、教育長の任命権を一般行政から独立している「教育委員会」から奪おうということだ。これは、「文部科学省の教育委員会に対するコントロールも強くすることを意味している。
文部省は戦前、内務省の下請け機関として全国の学校の思想統制の任を務めてきた。戦後は、米国流の教育委員会制度の導入により、文部省は、「支配地」を失い、単なる「指導助言機関」にされてきた。「いじめ事件」多発を奇貨として、このドサクサに紛れて、「失地回復」を図ろうとしている。政府の教育再生実行会議は、この文部科学官僚の姑息な術中にスッポリと嵌められているのである。従って、「いじめ事件」の完全撲滅には、何の効果も生まない。
政府の教育再生実行会議は、「いじめ事件」の完全撲滅にどの程度効果があるのかを証明する必要がある。
それとともに、むしろ、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(1956年<昭和31年>6月30日公布)に伴い廃止された教育委員会法の復活、すなわち、教育委員を地域住民による選挙で選ぶ、いわゆる「教育委員公選制度」を復活させて、教育の民主的コントロールを強化するよう提言することが、先決ではないのか。形骸化しているいまの教育委員会制度を根本的に改めるのだ。
【参考引用】NHKNEWSwebが4月15日午前11時44分、「再生会議『教育長を責任者に』というタイトルをつけて、以下のように報じた。
「政府の教育再生実行会議は、教育委員会制度の改革に向けて、地方自治体の教育長を教育行政の責任者と位置づけ、自治体の長が議会の同意を得て任命と罷免ができるようにするなどとした提言を取りまとめ、15日、安倍総理大臣に提出しました。政府の教育再生実行会議は、15日、総理大臣官邸で会合を開き、学校でのいじめを巡る問題が全国で相次いだことなどを受けて、教育委員会制度の改革に向けた提言を取りまとめ、座長を務める早稲田大学の鎌田薫総長が安倍総理大臣に提出しました。提言では、現在の教育委員会制度について、『責任の所在の不明確さ、審議などの形骸化といった課題がある』と指摘したうえで、地方自治体の教育長を教育行政の責任者と位置づけ、教育委員会に代わって自治体の長が、議会の同意を得て任命と罷免ができるようにするとしています。
一方、教育委員会は、教育行政の方向性を示し、教育長をチェックする機関に改めるなどとしています。安倍総理大臣は『教育委員会は、今の制度になってからすでに半世紀が過ぎ、問題が指摘されながらも抜本的な改革には至らなかった。提言は、教育行政の基本構造を大きく転換するもので教育再生の基盤が築かれると確信している』と述べました。
下村文部科学大臣は、来週にも中教審=中央教育審議会に提言の内容を諮問し、来年の通常国会に必要な法案を提出したいとしています」
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