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2013年4月10日
[公開書簡]
国・地域:日本トピック:取調べの可視化
2013年4月10日
法務大臣
谷垣 禎一 様
法制審議会
新時代の刑事司法制度特別部会
委員各位
法制審議会特別部会「基本構想」を受けて
取調べの全過程録画の早期実現を求める要請書
去る1月29日、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会は、「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」(以下、基本構想)を採択しました。今後、作業部会において基本構想の具体的な検討を進めることになっています。
取調べの可視化を求める市民団体連絡会は、今回の基本構想において、全過程の録画(可視化)の導入に向けて極めて消極的であることに強い懸念を表明します。
法制審議会特別部会は、法務大臣の諮問を受けて設置されましたが、そもそも大臣の諮問は、相次いで明らかになった冤罪事件において、取調官による被疑者への違法・不当な取り扱いや自白の強要が深刻な問題として社会的に認識されたことに端を発しています。2012年にも、いわゆる「PC遠隔操作」事件において虚偽自白が明らかになり、密室による不当な取調べの問題が改善されているとは言い難い状況です。
ところが、基本構想では、「一定の例外事由を認めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付ける」案と、「録音・録画の対象とする範囲は、取調官の一定の裁量に委ねるものとする」案が併記されており、これまでの数多くの冤罪事件の教訓がまったく生かされていない内容と言わざるを得ません。
録音・録画の対象範囲を取調官の裁量に委ねる「一部録画」は、被疑者が虚偽自白を強要されるに至った過程や、取調官による被疑者への威嚇、脅迫や暴力的な行為、取調官による誘導を監視することができません。したがって、取調べへの過度の依存を改めることにも、取調べの適正化にも資するとは考えられず、新たな冤罪の原因となる危険性すらあり、冤罪の再発防止に向けた制度改革とは到底言えません。私たちはこの制度案に強く反対します。
「一定の例外事由を認めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付ける」案については、裁判員裁判制度対象事件の身柄事件を念頭に置いて検討することとなっています。私たちは同案について、例外事由を認める範囲が拡大し、結果として全過程の録音・録画の対象事件が限定的になる危険があることを懸念します。さらに、裁判員制度対象事件の限定することは、現在の検察庁・警察庁の試行の範囲より狭く、後退と言わざるを得ません。PC遠隔操作事件、厚生労働省元局長事件、志布志事件、多数の痴漢冤罪事件など裁判員制度事件以外でも冤罪が多発している状況に鑑みれば、それ以外の事件をも念頭に置いた検討がなされるべきです。私たちは、今後の作業部会において、すべての事件の被疑者および参考人の取調べにおける全過程の録音・録画の義務付けを制度設計の明確な基本原則とするよう、強く求めます。
取調べの可視化を求める市民団体連絡会はその発足以来、日本の刑事司法改革は、取調べ過程における被疑者の権利保障を国際人権基準に合致させることを第一の目的とするべきであると、繰り返し主張してきました。私たちは、法務大臣ならびに法制審議会に対し、通信傍受の拡大や会話傍受の導入など、プライバシーの権利などを保障する国際人権基準に違反する疑いのある、捜査当局の権限拡大を目指す制度案との抱き合わせを止め、取調べの全過程の録画の導入を早期に実現するための検討を作業部会において進めるよう、強く要請いたします。
また、基本構想においては、国際的な人権機関から繰り返し勧告を受けていた、代用監獄制度の廃止や証拠の全面開示についても、極めて不十分な内容です。代用監獄制度については、基本構想の中でまったく触れられておらず、証拠開示についても、検察官の持つ証拠の一覧表を開示する案を検討するという内容にとどまっています。代用監獄は自白強要の温床と言われており、取調べの適正化に向けて同制度の廃止は早急に検討されるべきです。全過程の録画導入と合わせ、同制度の廃止や証拠の全面開示についても具体的検討を進めるよう、要請いたします。
取調べの可視化を求める市民団体連絡会
【呼びかけ団体】
アムネスティ・インターナショナル日本
監獄人権センター
日本国民救援会
ヒューマンライツ・ナウ
【構成団体】
国際人権活動日本委員会/志布志の住民の人権を考える会/社団法人自由人権協会/人権と報道・連絡会/菅家さんを支える会・栃木/フォーラム平和・人権・環境/富山(氷見)冤罪国賠を支える会/名張毒ぶどう酒事件全国ネットワーク/袴田巖さんの再審を求める会/袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会/「冤罪・布川事件の国家賠償請求訴訟を支援する会」/無実のゴビンダさんを支える会/無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会
http://www.amnesty.or.jp/news/2013/0410_3899.html
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