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2013年4月 8日 神州の泉
最近、約一年前に出たカレル・ヴァン・ウォルフレン氏の『日本を追い込む5つの罠』(角川書店)を読んでみてびっくりした。ウォルフレン氏はTPPは経済協定ではなく、政治的な“罠”であると、神州の泉が感じている“TPPトラバサミ論”と同様な捉え方をしていた。驚くべきことに著者はTPPには先行的な雛型(ひながた)があると言っている。
そもそもアメリカ主導の経済協定は押しなべてグローバル資本の意向が反映しているが、OECD(経済協力開発機構)もIMF(国際通貨基金)と同様にそういう怪しげな世界機構敷設の一環である。ウォルフレン氏によれば、今から18年前の1995年、その経済協力開発機構(OECD)は、突然、多国間投資協定MAI(Multilateral Agreement on Investment)という構想を打ち出し交渉を始めたそうである。
だが、この胡散臭い構想に対し、グローバリゼーションで辛酸を舐めてきた数々のグループは異議を唱え、インターネットを通じて大衆反対運動を起こし成功したという。ウォルフレン氏によれば、MAIは経済協定の名を借りた投資家オンリーの独善的な政治協定だそうである。著者が強調したことは、これが政治的な協定なのであって経済的な協定ではないということである。
MAIにおいては、政府は自国企業に有利な扱いをしてはならないという取り決めがあり、開発途上国家は開発政策を推進できなくなる事態に追い込まれる強制性があるという。そうなれば、海外投資家によって国内の市場関係者たちはたちまち壊滅状態に追い込まれる。MAIの目的は強力な条約的威力を嵩(かさ)に着て、アメリカの多国籍企業が進出先の国で、競争力という点で最大級の特権、恩典を受けるという構造になっていた。
なぜなら、このMAI協定には、企業が外国政府に対し、直接、“平等な扱い”を要求し訴えることができるという条項が含まれているという。ウォルフレン氏は、MAIは新植民地主義的なやり方に法的基盤を与える構想であると断言している。これを構想した連中は、これまでの国際協約の経験則から、厳格な強制措置なしに自分たちの要求を通すことはできない観念し、海外の政府にも企業にも極めて不利になりかねない条項が満載されていたという。
MAIとはそもそも経済発展とは何の関係もない、世界におけるグローバル資本権力の拡大シフトを狙った構想であった。これが反グローバリズム運動の盛り上がりに火をつけ、1999年にピークに達したという。MAI構想は1998年にフランスが交渉参加を取りやめることで完全に頓挫した。MAIはWTOのドーハ・ラウンド(貿易障壁の除去を目的とする多角的貿易交渉)に姿を変えて再び登場したが、暗礁に乗り上げた。
以上のウォルフレン氏の説明を見ると、18年前にいきなり登場したMAI(多国間投資協定)とは、TPPとまったく同じ連中が同じ目的で編み出した理不尽な暴力条約であることが分かる。つまり、グローバル資本家は、交渉事というまだるっこしい手間を掛けても、望むような収奪効率を実現する術は得られないと判断し、貿易交渉という偽りの仮面をかぶった“罠”を堂々と国際舞台に打ち出してきたことになる。
MAIは1995年に打ち出され、その3年後に頓挫した。それから12年後の2010年に突然、日本の前にTPP(環太平洋経済連携協定)という平和な名前で表れた。これはMAIの進化形であるから貿易条約ではなく、全ての参加国を多国籍企業が打ち出す企業ルールによる法制下に組み込む目論見がある。
TPPは、貿易条約の名を借りたグローバル資本のための治外法権体制の構築であり、参加国から眺めれば治外法権を受け入れろということに他ならない。昔、中国が華夷秩序という周辺国に対する冊封体制を築いたが、TPPは多国籍企業群が先進諸国に対して行う“冊封体制”の強制である。この冊封体制を可能する武器がISDS条項であることは言うまでもないだろう。さしあたって、最大のターゲットは日本である。
われわれは、TPPにはMAI(多国間投資協定)という先行モデルがあったことを自覚し、どういう反対経緯でそれを挫折させたか、知った方がいいと思う。
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