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2013年4月 5日 神州の泉
何回か指摘したが、TPPは戦後世界に出現した既存の国際条約、協定とは全く違うものである。『環太平洋経済連携協定』という名前から受ける印象で言うなら、いかにも国際的で平和な経済協定という感じを持つ。しかし「条約内容の秘密主義」、「ISDS条項」「ラチェット規定」「条約締結後の4年間の守秘義務」などの属性がセットになっているところを見ると、これが通常概念の国際協定とは違って、存在そのものに強い悪意が秘められていることが分かる。
近代資本主義の発生史にはいくつかの概説があるが、大まかに分けて言うならフランス革命前後やイギリス産業革命辺り、18〜19世紀辺りに生まれた近代的な産業化システムに起源を置いているという説や、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーが著した有名な『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で言うように、16世紀の宗教改革時代に資本主義の萌芽的概念が西ヨーロッパに広がったという説があるようである。
神州の泉は、イギリス産業革命前後に現代資本主義の原型ができたと思っている。そう考えた根拠は、ピューリタン革命からヴィクトリア朝初期までに“囲い込み(エンクロージャー)”という見逃せない動きがあったからである。“囲い込み”こそ現代資本主義の原型的エートスなのだ。唐突だが、森林生態学には“遷移(せんい)”と“極相(きょくそう)”という重要な概念がある。森林の植物群には様々な種類があり、気象や動物相などの影響で、その条件に適応した樹種などが優勢になって、植物種がある割合を形成したまま安定状態となるが、これを“極相”と言い、極相に至るまでの移り変わりや変化を“遷移”と言う。
つまり、近代資本主義の草創期はイギリス産業革命前後にあるが、それは国情によって多少は違ったが、発展史という変化を遂げ20世紀型の西欧型資本主義にたどり着いた。これを遷移と極相になぞらえることもできるだろう。20世紀型の資本主義とは資本の暴走を制御するために社会主義的な福祉要素を制度に混合させ、国家がその福祉の部分を担当した。これが混合資本主義、あるいは修正資本主義と言われる。小泉政権以前の日本も混合資本主義だった。
アメリカがワシントンコンセンサス思想を土台にし、新自由主義経済をグローバル・スタンダードとして世界展開し始めてから、一旦は極相点に到達して、しばらくは安定していた混合資本主義は、再び別の極相点に向かって進み始めたのである。それがTPPによる国家主権の殲滅である。この極相点が今、世界にとっては大問題になっていて、それはとくに南米各国に著しい。
資本主義の進展史を眺めると、イギリス産業革命前後の“囲い込み”が農民を農地k差から追放し、彼らを新たな市場労働者(農業労働者あるいは工業労働者)に変えたが、これが農村経済から市場経済への急速な移行をもたらした。当時の“囲い込み”とは、ヨーロッパ、特にイギリスで、領主・大地主が牧羊業や集約農業を営むため、共同用益権を排して私的所有を主張し、示談や議会立法によって、開放耕地や共同放牧場などを囲い込んだ動きだった。このときの領主や大地主の突然変異体が、現代グローバル資本家の先祖なのではないだろうか。
資本主義は領主・地主による“囲い込み”から、混合資本主義に修正され、20世紀後半から21世紀幕開けには、グローバル資本によって、再びイギリスで起きた“囲い込み”が始まった。これをグローバリゼーションと言う。資本主義は囲い込みに始まって、修正資本主義に至り、現代になって、再び囲い込みという先祖がえりになっている。しかし、今の囲い込みはスケールがまったく違っていて、海を越えて狙った国家ごと囲い込むのである。その手段がTPPなのである。
現代国家の囲い込みを狙う連中(グローバル資本家たち)にとっては、各国の慣習や制度が邪魔なのであり、最も邪魔だと思っているのは民主主義である。欲望資本主義は民主主義を徹底して嫌うのである。したがって、ワシントンコンセンサスが行きつく理想は必ず言論統制がセットになっているのである。TPP参加を表明した安倍政権が参院選でまた勝った場合、必ず強力な言論統制体制を築くことになる。
最後に、TPPが狙う現代のエンクロージャーは、国家の自主権をことごとく取り払うから、これを国家解体とも言う。
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