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2013/4/4 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
なにが「守るべきものは守る姿勢で交渉していく」だ。安倍首相はTPP交渉参加を表明する際、「食の安全」を守ると強調した。その舌の根も乾かぬうちに放棄である。2月に米国産牛肉の輸入規制を緩和したのに続き、7月にもBSE全頭検査を廃止するというのだ。
◆「和牛ブランド」地に落ちる
BSEの全頭検査は01年に国内初の感染牛が発見された直後から続いてきた。05年に21カ月未満の牛が検査対象から外された後も、ブランドを守りたい自治体は独自に予算をつけ、全頭検査を継続してきた。ところが厚労省は「もはや日本はBSEを克服した。“非科学的”な全頭検査は税金の無駄遣いだ」と、完全廃止を各自治体に要請するという。トンデモない話だ。
「世界で全頭検査を続けているのは日本だけです。しかし、そのおかげで23カ月の若い牛のBSE感染を水際で発見し、和牛ブランドを守った実績がある。BSEにはまだ解明できていない部分があります。予防原則の立場に立てば、簡単に規制を緩めるべきではないのです。そもそも、自治体がそれぞれ独自の判断と予算で続けている検査を、中央官庁の指示でやめさせるなんて傲慢ですよ」(ジャーナリストの横田一氏)
厚労省が全頭検査を“非科学的”と言い出したのは、「日本は不透明で科学的根拠に基づかない検疫措置を是正すべき」(USTRのマランティス次席代表)という米国の主張に呼応したものだ。米国にとって不都合なことは“非科学的”と断罪する。安倍政権はいったいどこを向いているのか。米国のためならエンヤコラで国民の健康と食の安全を犠牲にする。こんな政治が許されていいわけがない。
立教大教授の郭洋春氏(経済学)がこう言う。
「突然のBSE全頭検査の廃止は、オバマ政権へのプレゼントとしか考えられません。今年7月にTPP交渉に正式参加するには今月中に米国と事前協議で大筋合意する必要がある。それもあって、米国の言いなりになって譲歩したのでしょう。すでに米牛肉の輸入緩和が決定していますが、日本が厳しい全頭検査を続ければ、和牛ブランドの優位性は変わりません。それをみすみす捨てるとは、自殺行為です」
米国産牛肉が輸入緩和されたことで牛丼各社の割引キャンペーンが間もなく始まるが、手放しでは喜べない。日本の国益よりも米国の国益を優先する人物に首相は任せられないのだ。
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