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環太平洋連携協定(TPP)参加による貿易自由化の影響が懸念される日本の農業。安倍晋三首相は「攻めの農業への転換を図る」と意気込むが、生産や輸出のデータからは、成長軌道に乗る方向性は見えてこない。3日開かれた自民党農林部会でも輸出を拡大して農業を成長させるとする政府の方針への批判が相次いだ。TPPに参加した場合の農業の未来像を、政府は描き切れていない。(中根政人、清水俊介)
◆楽観シナリオ
首相は「農林水産業の競争力を高め、輸出拡大を進めたい」とする。だが、漁業などを含めた農林水産業が名目の国内総生産(GDP)に占める割合は1.2%と極めて低い。産業としての農業の基盤は非常に脆弱な状態に置かれている。TPPを契機に成長産業に転換する、とのシナリオは、あまりに楽観的だ。
農林水産省によると、2011年内の国内の農業の総産出額は約8兆2400「億円。一方、農産物の海外輸出額は2652億円。単純に計算すると、国内生産に占める輸出の割合はわずか3.2%にすぎない。
同省は、20年までに農林水産物・食品の輸出を1兆円に増やす目標を掲げる。だが漁業などの製品を合わせた農林水産物の輸出額は過去5年間、5000億円前後で停滞しており、農業団体からは「輸出を2倍に伸ばすのは極めて困難。販路が拡大できるなら、すでにやっている」との疑問が出ている。
首相は「おいしくて安全な日本の農産物の人気が世界で高まるのは間違いない」 「大きなチャンス」と強調する。関税の撤廃を原則とするTPP加盟は、安い農産品が海外から入ってくることばかり強調されるが、質の高い日本の農産品を海外に輸出する好機でもある、という理屈だ。
だが現在、日本が農産品を輸出するのは、TPP交渉とは無関係な国・地域が大半だ。11年の輸出先ベスト5のうち、3位の米国以外はすべてTPP交渉に参加していない香港や中国、韓国など東アジアの国・地域。TPP関係国への輸出は、農産品の輸出全体の27.7%にとどまり、農業の総産出額に占める割合は0.9%しかない。この部分が伸びても農業全体への好影響は期待できない。政府は農林水産業の強化に向けて関係閣僚会議を設置することも検討しているが、簡単に妙案が出るとは限らない。
◆絵に描いたもち
政府は、首相のTPP交渉参加表明に合わせて、農林水産物の生産額が3兆円減少するとの試算も発表した。コメだけで1兆100億円も下がるという関係者には極めて厳しくみえる数字が並ぶが与党内からは「損失の想定が少なすぎる」との声もあがる。
農水省は10年秋に農林水産物の生産が4兆5000億円減少するとの試算を出した。この時は、350万人の就業機会が失われるとしていたが、今回の試算は、失業者数や関連産業への影響には触れていない。
このため、自民党内には「生産額が3兆円減少すれば、雇用も200万人以上失われるはずだ」と試算の内容を疑問視する意見がある。
3日の農林部会では「輸出拡大が日本の農業を救うというのは幻想にすぎない」(宮路和明衆院議員)、「絵に描いた餅で終わらないように」(上杉光弘元自治相)と試算や政府方針に厳しい意見が飛び交った。
名古屋大の生源寺真一教授(農業経済学)は「TPPで引き起こされる問題が、農産物の輸出促進で打開できるかのような説明は、一種の詭弁だ」と批判。「守るべき農産物の生産や販売の情勢、地域的特性を理解した上で戦略的に交渉に臨まない限り、農業の経済的損失を軽減することは不可能だ」と訴える。
2013年4月4日 東京新聞 朝刊 [核心]より
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2013040402000127.html
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