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2013年04月03日 世相を斬る あいば達也
最近マスメディアや学者は“成熟産業”と“成長産業”云う言葉を連発している。成熟と云う言葉を遣うなら、成熟国家と成長国家と云う表現が増えても良さそうなものだが、一部の社会・経済学者以外あまり遣わない。おそらく、その言葉には“つまり…”と云う含みがあるからだろう。成熟と云う言葉には、いい意味で“安定”した感じがあるが、成長は期待できないと云う意味があり、最終的には衰退が待っている事まで含んだ言葉と云うことなのだろう。
つまり、成熟とは、その次に衰退が待ち受けているという方向性を明示している。その所為か、成熟経済とか成熟国家と云う概念を認めたくないと云うことなのだろう。殆どの政治家も、成熟経済とか成熟国家と云う言葉を忌避する傾向がある。成熟が老兵のような感じで、投票行動に結びつかない言葉に思えているのだろう。本来であれば、小沢一郎くらいの政治家であれば、そのネガティブと受けとめられそうな言葉を遣ってでも、国民を説得する馬力を見せて貰いものである。その為にはこそ、「続・日本改造計画」の上梓が必要なのである。言質で突かれない防御の為にも、一貫した主張が、今の小沢一郎「生活の党」に求められているのだ。
竹中平蔵ら学者や経団連勢力が、「労働市場の流動化」を日本企業が産業競争力をつける為には“必要だ論”を展開している事は周知の事実だ。小泉構造改革で頓挫した竹中は、名誉挽回とばかり、墓をひっくり返して「労働市場の流動化」を掘り出してきた。安倍晋三は、この産業競争力会議の「労働市場の流動化」の意味がよく理解出来ていないらしく、「解雇を自由化する考えはない。金銭によって解決していく考えはない」と28日に断言した。(注:安倍の人の好さから出た発言)しかし、昨日の衆院予算委員会の答弁で、官僚が書き上げた、霞が関強弁文学をしどろもどろになりながら、漸く読み切る事が出来た。毎日は以下のように報じている。
≪ <安倍首相>「金銭解雇しない」発言修正 「事後」は容認
安倍晋三首相は2日の衆院予算委員会で、政府の産業競争力会議で提起されている解雇の規制緩和について、解雇を無効とする判決が出た後の事後的な金銭解決のルール化は同会議の検討対象として容認する考えを示した。3月28日の同委では「解雇を自由化する考えはない。金銭によって解決していく考えはない」と答弁していた。
首相は「(判決で)解雇無効となった場合、事後的に金銭支払いにより労働契約解消を申し立てる制度は(金銭解雇に)含めていない」と指摘。28日の答弁で否定したのは「事前型」の金銭解雇だったと説明した。そのうえで、事後型については「産業競争力会議や規制改革会議で自由闊達(かったつ)に議論をしており、さまざまな視点を含めて検討していく」と説明。検討対象として残っていることを明らかにした。
解雇規制の緩和をめぐっては、規制改革会議、産業競争力会議で民間議員が「日本の解雇は硬直的だ」などとして、金銭解決を労働契約法に盛り込むなどの ルール化を提案している。ただ、政府・与党側には労働者側の反発を懸念して、夏の参院選前の抜本改革には慎重な意見もある。【光田宗義】≫(毎日新聞)
安倍晋三の2日の答弁内容は、事前とか事後とかの問題ではなく、実はトンデモナイ事を言っているのだ。安倍自身、この答弁書の意味がよく判らずに、読んでいた感も否めない。なぜなら、前もっての金銭解雇は駄目だが、事後の金銭解雇はオッケーと言っている。この前後を別ける分岐点が「解雇無効判決」である事が決定的にトンデモナイ不当労働行為に該当するのである。つまり、安倍の答弁を素直に受け取ると、解雇された労働者は、不満があれば裁判をせよと言っている。しかも、裁判で無効が出ても、再雇用せずに金銭で解雇しても構わないと言っているわけだ。
判決が解雇の無効を決定しているのに、「労働市場の流動化」を日本企業が産業競争力をつける為には必要だから、判決が解雇無効でも雇用を回復せずに済むルールを作ろうと云うことになる。何か答弁書を間違って書いたか、読んだかでもない限り、幾らなんで無茶苦茶すぎる話のようだ。早い話が、選挙区割違憲判決で裁判所を蔑にし、ペナリティーを受けそうだと云うのに、此処でも、裁判所の判例を、立法の力でねじ伏せようとしている。本気なのだろうか?
マスメディアも、2日の金銭解雇に関わる安倍首相の答弁の趣旨が充分理解できないか、トンデモ発言だと思ったのか、毎日新聞以外は、スル―している。自分だけは解雇なんかされないと高を括っているサラリーマン中間層を狙い撃ちしている安倍の成長戦略だと云うのに、株価が上がったと嬉々として、安倍自民を支持しているらしい。なんとも不思議な人々だ。日本にはマゾヒストと云う人種が主流を占めているのかと頭を捻ってしまう(笑)。
逆の側面から観察すれば、そういう時代についていけないサラリーマンを淘汰する話が出る以上、その企業が属する産業自体も、時代についていけなくなっているわけで、その産業をバックアップするような手助けをする事も、産業競争力を弱めることになるはずだ。成長産業へ、成熟産業の労働力がスムーズに流動化するためには、成長産業側の雇用環境が、以前の環境に近いものである必要がある。その点を無視して、強者の論理だけで年収1000万から400万の産業に労働者を追い込むことを政治が後押ししている事実に気づかないのだろうか。
成長産業の創設や充実に、成熟産業へ温存の予算を移動させる政策がセットになっているのなら、一定の理解は可能だ。そのような理に適った流れで話が進むのなら、論理的矛盾はない。しかし、今までの話だと、単に労働者側にだけツケ回しをする産業競争力会議とは、弱い者いじめだけの胡散臭いものだと証明している。正社員のランク付けの限定社員にしても、「追い出し部屋」の話も、WE制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)にせよ、働く国民の人格を家畜同然に扱い、単に勤労者を”資本”の奴隷に貶めようとする政治を、安倍自民は行おうとしている。何と云う政治なのだろう。非正規雇用の蔓延で、これだけ中間層が激減していると云うのに、安倍自民は国民と云う人格を弄んでいる。
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