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片山さんが公判での意見陳述を前に準備した自筆メモ
PCなりすまし事件 誤認逮捕の反省はゼロ 警察と検察「こんな捜査でいいんですか」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35315
2013年04月03日(水)週刊現代 :現代ビジネス
容疑の物証を示さずに逮捕する警察。脅迫的な取り調べを行う検察。それを追認する裁判所。今回で改めてわかった。日本の刑事司法は何も変わっていない。
■可視化に絶対応じない
「私は無実です。遠隔操作ウイルスを作ったり、使ったりしたことはありません。他の4人の誤認逮捕された方たちと同じどころか、ハイジャック防止法違反などという大きな疑いを掛けられて、とても困惑しています。拘束された現在の状態は私も辛いですが、家族はもっと辛いと思います。早く無実だとわかってもらい、自由になりたいです」
遠隔操作ウイルスによる「PCなりすまし事件」で容疑者として逮捕された片山祐輔さん(30歳)は、3月21日に行われた勾留理由開示公判で、やや早口になりながら、しかしはっきりとこう述べた。
片山さんは13時32分、手錠と腰縄を掛けられて、東京地方裁判所818号法廷に入廷。濃紺のボーダーシャツにシワの目立つチノパンをはき、髪はボサボサで、心なしか頬もこけている。この日までで40日間にも及ぶ長期勾留のストレスで痩せたのか、時折、ずり落ちたズボンを引っ張り上げる動作が印象的だった。
弁護側は片山さんの勾留が不当なものであると裁判所に上申した。今回の公判は、それに対して東京地裁が勾留の理由を開示する場だった。片山さんは目をしばたたかせながら、裁判官の顔をじっと見つめていた。裁判所の判断に一縷の望みを掛けるかのように。
警察や検察には可視化さえ了承してくれれば、取り調べに応じるし、黙秘はしないと言い続けてきた。
しかし、何を恐れているのか、警察も検察も決して取り調べの可視化を認めようとしない。
取り調べも行われないまま、ただ徒に自分を勾留し続けることで、彼らは自分が憔悴しきって「自白」することを狙っているのではないか。たとえ、その自白が真実でなくても―。
だが、そうした片山さんの思いは届かず、東京地裁は「被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれがある」などとして勾留の必要性を認めたのだった。
その法廷で、片山さんは13時48分から意見陳述を行い、裁判長に対し、冒頭のように自らが無罪であることを主張した。次ページに掲載したのは、片山さんが公判に臨んで準備した自筆のメモである。片山さんの肉声を続けよう。
「私は以前、(エイベックス社員の殺害予告事件などで)脅迫罪と名誉毀損罪で有罪になりました。そのときは他人の無線LAN回線に『タダ乗り』して、犯行予告を掲示板に書き込んだ。警察の取り調べで、自分のパソコンからそのサイトの閲覧記録と脅迫文書が発見されて、罪を認めました。実刑を受けています。
だからといって、私が社会に対して復讐心を持ったり、警察を恨みに思ったりということはありません。入る前は不安でしたが、刑務所は、結果的に自分自身の人生を変えるきっかけになりました。そこでの生活を通じて、人間関係をうまくやっていけるようになったのです。それまでは友人はいなかったけれど、出所後は会社に入って、多くの友人や知人、遊び友達ができるようになりました」
この日、東京地裁には定員の3倍近い83名が、この裁判の傍聴を希望して詰めかけた。そのほとんどはメディア関係者だった。
■決定的証拠はどこにもない
新聞やテレビは逮捕直後から捜査当局のリークに乗って、あたかも片山さんが真犯人であるかのような報道を続けてきた。
だが、本誌やネットメディアを中心に冤罪の可能性が指摘され始めると一変して沈黙に転じた。今では、記者たちは取材を続けてはいるものの、この事件の報道はめっきり減っていた。
記者たちの間にも、「もしかしたら(片山さんは)5人目の誤認逮捕者なのではないか」という疑念が湧き始めているのは間違いない。
そのマスコミ関係者を前に、片山さんは自分が真犯人ではありえない理由を滔々と述べる。
「私の仕事はシステムの開発で、ウイルスを開発したことはありません。
報道ではFBIからの情報提供で、派遣先のPCでウイルスが作られた痕跡があるとされていますが、私の職場のパソコンは周囲の人なら誰でも見ることができるようになっています。また、職場は『遠隔操作ウイルス』が作られたプログラム言語である『C#』を使用できる環境にありません。『C#』を使うための『Visual Studio 2010』がインストールされていませんから。そのことからも、職場でウイルスを作ったと報じられているのはさっぱりわかりません。
警察は自宅から4台のPCを押収しました。そのうち1台は母親のもの。2台は昔使っていたものです。今使っているのは自作の1台です。それと同時に10個くらいの記録媒体も押収されています。私が使っていたPCや周辺機器については全部すでに捜査対象となっていると思いますが、そこからウイルスを開発した環境などが出ることはありえません」
片山さんが真犯人で、自宅でウイルスを作製したのだとしたら、PCなどから決定的な証拠が出てきてもおかしくない。
可視化を認めないことで取り調べは進まないのだから、捜査当局が物証を出すしかないのは素人にもわかる。それを出さずに逮捕、再逮捕を繰り返したことに何の意味があったのか。
しかも、検察側が強引に行った「取り調べ」のなかで、片山さんに13件の容疑があり、その一つ一つで逮捕することも仄めかしている。
3月5日、検察はたんなる手続きにすぎない「弁解録取」を悪用して「違法な取り調べ」を3時間30分にわたって行った。本誌は、「取り調べ」の様子を記録した片山さん本人による自筆メモも入手。それによると、水庫一浩検察官はこう片山さんに迫ったという。
「証拠の評価からすると君は有罪だ。複数の事件があるけれど、起訴できる事件については起訴していくつもりだ。このままあなたが否認や黙秘を続けていても起訴できるよ。
とにかく今のように取り調べを拒否し続けているといつまでも(留置場を)出られない。早く出たいなら、取り調べを受けて、自分が犯人ではないと証明してよ。そうでなければ君に不利になるだけ、このままでは必ず起訴だ。君はどうするのが得か、よく考えてみなさい」
この検事の言葉どおり残る11件の容疑で再逮捕を繰り返せば、東京湾岸警察署に勾留された状態が少なくとも7ヵ月続くことになる。
言うまでもなく、有罪かどうかを判断するのは裁判所の役割である。検察は物証を提示して、犯罪の根拠を示すことがその役目だ。にもかかわらず、容疑者に向かって有罪と断ずるばかりか、無罪の証明までも要求する。片山さんのメモどおりのやり取りが行われたのであれば、これは検察による「脅迫」である。
いつになったら自分は自由の身になれるのか。先の見えない恐怖に普通の人なら押しつぶされてもおかしくはない。仮に犯行に手を染めているのだとしたら、早々に罪を認め、情状酌量を訴える戦略だってある。それでも片山さんがこれまで耐えてこれたのは、足利事件で無罪を勝ち取った佐藤博史弁護士のアドバイスもさることながら、「やっていないことは絶対に認めない」という固い信念があったからではないか。
■何があっても釈放しない
そして片山さんは、今回の法廷で裁判所こそは理性的な判断を下し、勾留を取り消すことを期待していた。片山さんは佐藤弁護士に勾留がこれ以上続くのであれば、「限界だ」とも漏らしているという。
「勾留期限は3月24日までですが、早ければいつ釈放されますか? 勾留理由がないと裁判所が判断すれば、今日すぐに釈放される可能性もありますよね。やっていないのですから、釈放されないなんてことはないですよね。
留置場では睡眠導入剤も処方されるようになり、最近は眠れるようになりました。食べ物に不満もありません。ただ、これ以上、勾留が続けば、本当にもう限界です。よく見ていた(脱獄をテーマにした米ドラマ)『プリズン・ブレイク』のように脱獄でもしてみようかな(笑)。いや、冗談ですが、そんなことを考えないと耐えられないほど苦痛なんです」
だが、先に述べたとおり、東京地裁は勾留の必要性を認め、少なくとも期限いっぱいまでの留置場生活が決定した。
公判直後、片山さんは自分が引き続き拘束される可能性など、微塵も考えていない様子だったという。
「(意見陳述は)本当に疲れました。ただ、言いたいことは自分なりに伝えられたと思います。日曜日(24日)には出られますよね?」
現時点(3月21日現在)では、捜査当局がどのような決断を下すのか、判然としない。検察がハイジャック防止法違反などの容疑での立件を断行するのか、はたまた立件を見送り、警察が別の容疑で再々逮捕に踏み切るのか、それとも不起訴を決断し、片山さんをようやく釈放するのか。
検察は片山さんの勾留期限を迎える3月24日までに起訴する方針を固めたと見られる。
いずれにしても、これまで決定的な証拠を明示しないまま、43日間に及ぶ留置場生活を片山さんに強いた捜査当局に蛮行の謗りは免れ得ない。
すでに片山さんには軽度の「拘禁症状」が現れている。もしこれ以上拘束されれば、心身ともに「壊れる」こともあるだろう。それでも起訴後、「証拠隠滅や逃亡のおそれ」を理由に、引き続き捜査当局が片山さんの身柄拘束を続けることは十分に考えられる。
片山さんは被告として、法廷で捜査当局と争うことになる。その結果、無罪を勝ち取ったとしても、片山さんがその間に失ったものが返ってくるはずもない。
そうして得られた結果は、はたして事件の真実と言えるのだろうか。警察と検察の強引な捜査の結果、むしろ「真実」は覆い隠されてしまうのではないか。
今回の事件は、現在の刑事司法の抱える致命的な欠陥を露呈させた。私たちは改めて「取り調べの可視化」の必要性を考えなければならないのである。
「週刊現代」2013年4月6日号より
◇
2013/03/27 PC遠隔操作事件 佐藤弁護士、片山被告の無実を主張―第52回 日本の司法を正す会
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/70636
今回の司法を正す会では、PC遠隔操作事件の弁護人である佐藤博史弁護士が招かれた。佐藤弁護士は今回の事件の経緯、詳細を説明。プログラミング言語である、C#が使えないこと、またその開発環境が整っていなかったこと等、片山被告が無実であることの根拠を述べた。
■ゲスト 佐藤博史弁護士
■進行 青木理氏
130327_第52回 日本の司法を正す会
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=I9BdN-MNQx4
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