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2013年04月02日 世相を斬る あいば達也
3月20日付拙コラム「日中韓FTA、RCEP交渉を急げ 貿易協定とは思えぬTPPの異質性に気づくはず」 で指摘したような展開が僅かに雲間から見えてきた。上述コラムで指摘するような按配になってきている。既出コラムで以下のように述べている。
≪…自民党自体が、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の方が日本にとって有利だ、と衆議院選前に野田民主相手に明言したはずだ。この変節が、安倍訪米でなんなく覆ったのだから、オバマの脅しが効いたのだろう。しかし、オバマが、このTPPに関して、全権限を持っているわけではない。むしろ、官僚と議会が具体的協定内容を吟味決定する権利を有している。つまり、オバマが安倍に約束したこと自体が越権と云うか、口先介入である可能性もある。年内の合意を目指しているようだが、まだまだ交渉参加各国との鬩ぎ合いは続いているようで、難産が感じられる。
TPPより先に、中韓FTA協定が先行するかもしれない。それに引き摺られるかたちで、日本も加わり、日中韓FTA協定に発展する事も考えられる。それとRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の協議が再開されれば、TPPがすべてはないことが日本の国民に理解できるだろう。日本の嘘こきマスメディアは、如何にも自由貿易協定がTPP唯一のような報じ方に徹しているが、さにあらずだ。 RCEPは日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア、ニュージーランド、インドの16カ国の正真正銘のアジアの成長を相互に取り込む自由貿易協定の枠組みなのである。≫(拙コラム)
上記のような貿易協定ばかりではなく、日欧EPA交渉なども含めWTOに替わる自由貿易協定は乱立気味であり、その協定間の整合性を調整するだけでも、気が遠くなるような作業が待ち受けている。その上、米国側の交渉窓口である米通商代表部(USTR)は、各国との例外規定問題の調整に苦慮している情勢が明確になりつつある。オバマが全権限を持っているような顔で“安倍の心臓”をぐさりと抉ったのだが、そのオバマが表見代理人のような地位である事が判明しつつあるのだ。
米通商代表部(USTR)は、このまま内容では到底議会の承認は得られないと思ったのか、此処に来て“貿易相手国の市場開放に向け、TPAを巡る作業を始めたい」”と米上院財政委員会で表明している。TPP交渉の中身をある程度議会に提示しない限り、大統領権限を拡大する大統領貿易促進権限(TPA)が易々と議会で認められる可能性は低い。TPA付与には、TPPの場合乗り越えなければ条件が多々あり、見通しは暗いのだ。
■大統領貿易促進権限 Trade Promotion Authority(TPA)とは、従来「ファスト・トラック」権限(追い越し車線の意)と呼ばれていたものであり、期間を限定し、行政府に対し議会への事前通告や交渉内容の限定などの条件を付す一方で、かかる条件を満たす限り、議会側は行政府の結んだ外国政府との通商合意の個々の内容の修正を求めずに、迅速な 審議によって通商合意を一括して承認とするか不承認とするかのみを決することとすることを法律で定めるもの。
その上、オバマは安倍に対し、軍事同盟的色彩もあると云う言い回しで脅したであろうが、他の交渉参加諸国の中には、そんなこと関係ねぇ!と云う認識もあり、NATOのような話になるとは思えない。おそらく、オバマの計算違いは、交渉参加の中小国が一人前に口を利いてくるとは思わなかった節がある。グローバル経済の進展は、発展途上国乃至は後進国が自国の市場価値を認識し始めたわけで、「今は貧乏だが、俺達が成長しなければ、お前たち先進国も市場を失うだろう」と云う立場を充分に理解しているので、アメリカ様が言っているのだと云う脅しは、通用する国が日韓くらいに狭まったと云う現実を表している。所謂「モノ言う小国」の時代が来ているのである。
おそらく、TPPの交渉破綻では、オバマの顔も立たないので、骨抜きな「環太平洋パートナーシップ協定」がいずれ結ばれるのだろうと思う。骨抜きになった事で、聖域なき関税撤廃の難は、各国それぞれ逃れたことになる。しかし、参入障壁への風当たりは強くなるだろう。つまり、年次改革要望書と同じことが繰り返されるのだろうが、この交渉は個別国家間の問題であり、日本政府が参入を認めない限り、参入する他国企業もないわけだから、問題のISDS条項が発動される事もない。
中国や韓国には、言いたいことは山のようにあるが、それでも今世紀最後の成長市場といわれるASEANを含むアジアを見過ごし、アジアにいながら、アメリカ市場と手を結ぶのは、どんな外交防衛的経緯があっても、筋は通らない。最後に毎日新聞のコラム:風知草が良い記事を書いているので紹介しておく。
≪ 風知草:飢えるのは、あなたです=山田孝男
日本の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加と農業保護問題の核心をついた問答がある。
シンポジウムで都会の女性が尋ねた。「日本に農業が存在しなければならない理由は何ですか?」
農民が答えた。「カネで食料を買える間はいいですが、経済破綻すれば飢餓ですよ。私はいいのです、百姓だから。日本農業が滅びようが、どうなろうが、屁(へ)とも思ってない。自分の食うものを自分がつくるだけの話。飢えるのは私ではなく、あなたですよ」
農民は山下惣一(76)である。父から受け継いだ佐賀県唐津市の田畑でコメやミカンを作るかたわら、毒気とユーモアが身上の作家として活躍している。
この問答は、TPPと農業保護をめぐる二つの考え方の本質的な違いを浮き彫りにしている。明日の世界は平和で農産物の輸入も自在と見るか、繁栄の基盤はもろいから食料は自前でと考えるかの違いだ。
TPPは「聖域なき関税撤廃」を目指す。そのまま受け入れれば国内農業が立ち行かない。自民党は「コメ」「麦」「乳製品」「牛肉・豚肉」「砂糖やでんぷんなど甘味資源作物」の5品目を例外と決め、首相が先月15日、記者会見して交渉参加を表明した。
例外扱いが国益か、農業団体のワガママをたしなめるべきか、世論は割れている。東京では「農業よ、甘えるな」「高品質商品を量産して輸出せよ」という論調が主流を占める。
山下はこれが気に入らない。「香港の富裕層に日本の高品質の農産物を送れということは、日本の低所得層は中国の安い農産物を食えということですよ」
「安全で高品質な農産物はTPPに反対している人たちの口には入らんで、TPPを推進している人たちの口に入る。イヤなんだよね、これが(笑い)」
聖域なきTPP参加となれば、次は農協解体、農地法撤廃、企業参入へ進むだろうと山下は見る。企業が農協に取って代わる。構造改革派にとっては痛快だろうが、少なくとも地域農協は、カネがすべての企業支配よりも人間的だ。一握りの企業の特異な成功例を引き、農家をむちゃなカネもうけに走らせ、地域社会を壊してくれるな−−。
憂国の山下節は、先月出た、山形県高畠町でコメとリンゴを作る農民詩人、星寛治(77)との対談集「農は輝ける」(創森社刊)からあふれ出てくる。
山下の一連の著作は、農を軽んじ、農を見下す潮流との闘いの記録だ。休耕田にしめ縄を渡してゴミ投棄を防ぐ小説「減反神社」が81年の直木賞候補。
父の急死と農家の相続を扱った自伝的小説「ひこばえの歌」はNHK「ドラマ人間模様」(82年)になった。これまでに約50回、海外農業事情を視察、取材を踏まえて多くのルポやエッセーも書いている。
TPP交渉参加という決定は、日米安保強化の要請上、やむを得なかったというのが通説だ。首相は「日本の田園風景を守る」と強調しているが、山下は危ういと見ている。
「所得が今の半分だったころはみんな村に住んで活気があったのに、所得が倍になったら誰もいなくなった。なぜですか?」 経済成長を求め、矛盾はカネで埋め合わせるやり方では農業に明日はない。このままでは第二の敗戦になり かねぬ−−。 山下の慨嘆は重い。世界が混乱し、輸入が止まっても国民を飢えさせない基盤があるか。そこまで見据えた TPP参加交渉であってほしい。(敬称略)≫(毎日新聞)
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